宇宙からのメッセージ? 「ミステリーサークル」

伝説

ミステリーサークルとは作物を円形状に倒した不思議な図形のことをいい、イギリスを始め世界各国でその現象が報告されている。

ミステリーサークル

ミステリーサークル

その原因については、UFO着陸跡説、プラズマ説、気象説など様々。しかし現在「定説」として流布されているのは、イタズラ説である。

これは1991年、イギリスの『トゥデイ』紙に、ダグ・バウワーデイブ・チョーリーという2人組みの老人が「サークルは自分たちが作った」と告白した話がもとになっている。

多くの場合、このイタズラ説で全てが説明できると考えられている。しかし、これは誤りだ。実際には、このイタズラ説ではとうてい説明できないことがたくさん明らかになっている。

他の例

円が連なったミステリーサークルの例
(出典:「Weird Wiltshire Day Trip」)

たとえば、サークルはイギリスだけでなく、イタリア、ブラジル、フランス、カナダ、アメリカ、ハンガリー、日本などでも報告されている。たった2人だけで、世界中で見つかったこれだけのサークルを全部作ったとでもいうのだろうか?

また2人がイギリスで作ったサークルの数は、多い時で30個程度だと言われている。ところがイギリスで見つかっているサークルの数だけでも年に数百個。これではまったく数が合わない。

この他、専門家が「本物」と認めるサークルには、作物が折れずに曲がっている、サークル周辺に人が侵入した形跡が無い、作物が三つ編み状に織り込まれているなど、様々な現象が報告されている。

これらはすべて、イタズラ説では説明できない現象だ。しかし未知なる知性(エイリアン)がつくっていたとしたら、うまく説明することができる。おそらく彼らは、我々に何らかのメッセージを伝えるためにミステリーサークルをつくっているのではないだろうか。(以下、謎解きに続く)

謎解き

「ミステリーサークルは、イギリスの2人組みの老人によるイタズラだった」という話は一度は聞いたことがあるかもしれない。そして、この話と同じくらいよく聞くものに、【伝説】の後半で紹介した話がある。

けれども、こういった話はすでに解決済みのものが多い。具体的にはどういうことか。以下で見てみよう。

ダグとデイブが作ったサークルの数よりも、イギリスで見つかっているサークルの数は数倍も多い

2人がサークルを作り始めたのは1978年である。それから1986年までは他にサークルを作っている者はいなかった。

しかし87年以降になると、「ウィルトシャー・Aチーム」、「ビリー・ベイリー・チーム」、「UBI(連合調査局)チーム」、「ケンブリッジ・チーム」など、他のサークルを作成するサークルメーカーも活動を開始。報告数が急増する。(現在までに20以上のグループがあったことが判明している)。

以下は最初のサークルが作成された1978年以降に見つかったサークルの数である。

1978 1
1979 0
1980 3
1981 3
1982 5
1983 7
1984 4
1985 6
1986 9
1987 26
1988 506
1989 30
1990 232
1991 181
1992 197

これを見れば86年まで2人だけでサークルを作ったということが、決して不可能なことではないと分かるはずだ。また87年以降は複数のグループ(海外含む)が活動をはじめたことがわかっているのだから、数が増えるのは当然だった。

ダグとデイブがサークルを作り始めたという1978年よりも前からサークルの目撃例は世界中にある

1978よりも前の記録としては、単に草が円形に倒れただけの「ソーサーネスト」(円盤の巣)と呼ばれるものなら約80例ほど報告がある。(原因はイタズラを含めいくつか考えられているが、はっきりしていない)

けれども、現在のような複雑な形をしたサークルは1つも見つかっていない。

草刈りデビル

草刈りデビルが描かれたパンフレット

一方で1678年の古文書に登場する、「草刈りデビル」という悪魔の挿絵がミステリーサークルとそっくりだと言われることもある。

ところが実際に見れば、これは草を刈っている絵であり、今日のような草を押し倒して出来るサークルとは明らかに違う。

サークル周辺には人の足跡がない

トラクターなどの通り道(トラムライン)を使ったり、円と円を結ぶ細い線を作って足跡を倒した草で隠したり、足跡が見つからないようにする方法はいろいろある。ダグとデイブは、細長い棒を棒高跳びするようにして使い、足跡を残さないようにしていた。

夜間、人に見つからないように明かりをつけないで作ることは不可能

月明かりがあれば十分に制作可能。監視下で、実際にダグとデイブは月明かりだけでサークルを作ってみせた。

また、1991年7月に見つかり「ミスター・カーリーマン」と呼ばれたサークル(本物と鑑定された)について、ダグとデイブは次のように証言している。

このサークルを作った夜はほとんど満月だった。そのため、近くの道路から目撃されるかもしれないので何か遮蔽物になるものを探した。結果、2人は木立の影を見つけ、その影に隠れてサークルを作ったという。

後の調査では、当夜の天気、月と木、そしてサークルの位置関係など、すべて正しいことが判明している。

本物のサークル内で見つかる作物は折れずに曲がっている。しかし人が踏み倒して作ったサークルでは作物は途中で折れている。

本物とされたサークルでも、実際には茎がちぎれていたり、折れていたりしているものもある。そもそも人が作る場合、作物を押し倒すために踏み板を使用するため圧力が分散し、茎が折れないことも多い。

踏み板を使っている様子

踏み板を使っている様子(『ミステリーサークル黙示録』かもがわ出版より)

また、ダグとデイブが監視下で作ったサークルでも折れていない茎は見つかっている。

本物のサークルでは放射線が検出されている

サークルメーカーが作ったサークルでも放射線が検出されたことはある(自然にある放射線レベルも場所によってバラつきがあるため)。一方で本物とされたサークルでは放射線が検出されなかったこともある。

作物の細胞レベルでの変化も実験で確認されている

この話でよく出されるのは、W. C.レブングッドによる実験である。しかしこの実験は、本来やるべき二重盲検法(実験に関わる人の思い込みなどを排除し、防ぐ実験方法)が用いられていなかったり、相関関係と因果関係をごっちゃにしていたりと初歩的な間違いが多く、大きな疑問がもたれている。

人が作ったサークルでは作物は単に踏み倒されているだけだが、本物では三つ編み状に作物が織り込まれている

ダグとデイブが作ったサークルでも、2人が板を踏むだけで自然に作物が絡み合い、三つ編み状に織り込まれていくことが確認されている。踏みながら板を回転させることがポイントだという。

ミステリーサークルの現場では、謎の白い飛行物体がたびたび目撃され、なかにはビデオに撮られたものもある

こうした白い飛行物体は、英語で「光の玉」(Ball of light)を略して、通称「BOL」と呼ばれている。ビデオに撮られたものはいくつかあるものの、それらは画質が悪く、何らかの白っぽい物体が浮遊していることがわかる程度。

正体については、鳥、ビニール袋、綿毛などの浮遊物が指摘されており、それらを実際に飛ばして再現した際には、よく似た映像が撮影されている。またこの他にも、車のヘッドライトレンズの上を這い回る虫が見間違われたこともあった。

ちなみにBOLの中で最も話題になった映像としては、1996年に撮影されたオリバー・キャッスル・ビデオがある。このビデオには、白い光点が浮遊しながら、その下でミステリーサークルがつくられていく様子が撮影されている。

Oliver's Castle Crop Circle The Original Footage

本当であれば、意志を持った何らかの知性体の可能性が考えられた。ところがこの映像は、後にCGを使った合成であることが判明している。

制作者も後に名乗り出た。ジョン・ウェイレイという偽名を使っていたビデオの撮影者で、イギリスの映像制作会社「ファースト・カット」で働く彼は、会社のCGクリエイターに頼んで数時間で合成映像をつくってもらったのだという。

ウェイレイは、たまたまオリバー・キャッスルで新しいミステリーサークルを見つけ、それを撮影していた際に思いついたことだと語る。

ふと、こう思ったんです。この映像を加工してサークルファンに見せたら、どう反応するかと。

反応はすごかった。サークルファンが経営する地元の店にビデオを持ち込むと、あっという間に映像は広まってしまったという。

目の前で謎の球体がサークルを作ったという目撃報告や、わずか数秒でサークルが作られたという目撃報告などがある

「数秒で作られた」という話は以前からあるものの、実際に確かな証拠が提出されたことはこれまでにない。

参考までに、ミステリーサークルに関する証言にはどんなものがあるのか以下に紹介する。 (イギリスBBCで、ミステリーサークルに関する番組を放送した後にかかってきた電話。『ミステリーサークル黙示録』より引用)

パット・デルガド(自称専門家)「はい……はい……ええ! 信じられない。落ち着いて下さい。何が起こっても、落ち着いて下さい。パニックは起こさないで!」

目撃者の男性「台所の窓を通して畑のほうを見ているんですが、話している間も作物がどんどん倒れていくんです。信じられない。こんなことは今まで見たことがありません」

「大きな光る球が、作物を大きな円形に倒しているんです。家内がビデオカメラを持って庭に出たところです……。撮影を始めました。ローラ、あんまり近づかないで。庭から出ちゃダメだ」

デルガド「今どうなっているか正確に教えてください」

目撃者「非常にゆっくりです。でもとても明るい……。ちょっと待ってください。玄関に誰か来たみたいですから……」

デルガド「信じられない……。この男性は、実際にサークルができるのを目撃していると言っている」

目撃者「今ちょうど、警官のビル・ジョーンズさんが署から来てくれました。一緒に窓から見ています。彼にも聞いてみて下さい。私の話を確認してくれると思います」

ジョーンズ「そうですねえ、私も何と言ったらいいのか。明るい物体が大きく円形に倒れた麦畑の真ん中にあるんです……。信じられない! 物体は動いています。こちらのほうに向かって動いています。奥さん庭から出て。走って走って!」

デルガド「冷静になって下さい。まだビデオは撮ってるんですか?」

目撃者「これは、信じてもらえないと思いますよ。有刺鉄線のフェンスを越えようとしています。フェ……フェンスが溶けています。こちらのほうに向かっています……。私も逃げないと!」

普通は話だけで終わってしまうことが多い中、この件に関しては名前と住所が分かっていたため現場を割り出し現地に向かうことが出来た。ところが実際に現場へ行ってみると、教えられた住所に家などなく、農場も村も存在しなかった。

さらにジョーンズ警官が所属していると思われる警察署に電話をすると、そんな名前の警官も、農場も聞いたことがないと言われたという。ようするに、イタズラだったのである。

世界をダマした老人コンビ

続いては、世界をダマした稀代の老人コンビを紹介したい。彼らの名はダグ・バウワーデイブ・チョーリー。ダグはイギリスで画材を売る店の経営者で、デイブは画家だった。

ダグとデイブ

制作用の道具と一緒に写るダグ(左)とデイブ(右)。(『ミステリーサークル黙示録』かもがわ出版より)

2人は、もともとデイブがダグの店に通っていたことから知り合い、お互いに意気投合。デイブの絵が売れないことで彼が落ち込んでいたときも、ダグはよく金曜日の夜に飲みに誘ってくれて、はげましてくれていたという。

そんなある金曜の夜のこと。2人は、いきつけのパブ「パーシー・ホッブス」で黒ビールを飲んでいると、当時話題になっていた映画「未知との遭遇」の話で盛り上がる。

するとダグが、UFOの着陸痕のようなものをイギリスの畑で作って、みんなの反応を見てみようと言い出した。ダグからすればちょっとしたイタズラでもあり、落ち込みがちなデイブをはげますつもりもあったようである。

2人はダグの店の裏口に防犯用としてかけてあった鉄の棒を使い、最初のサークルをイギリスのサザンプトンに作った。とはいえ、すぐに気づかれることはない。最初から数年は誰からも注目されなかった。

ところが1980年。この年の8月にようやく彼らの作ったミステリーサークルが新聞に取り上げられることになる。(1980年8月15日付け『ウィルトシャー・タイムス』)

世界で初めて報道されたミステリーサークルの記事

当時報道されたミステリーサークルの記事。(「奇跡体験!アンビリバボー」2008年2月28日放送より)

ダグとデイブは、この新聞を見て大喜びしたという。そして、より意欲的になっていったともいう。やがて彼らは厚板とロープ、それに針金を使うようになり、サークルもより高度なものを作るようになっていった。

下の写真は、ダグの帽子に取り付けられている針金でつくった道具。遠くにある建物や木などを目印にし、この穴からのぞきながら、穴から外れないように歩くと直線が引けるという。

ダグお手製の道具

ダグお手製の道具。
(Simon Hoggart, Mike Hutchinson『Bizarre Beliefs』より)

円はコンパスの要領で中心に人を立たせ、そこからロープを引っ張って外側を人が歩くと曲線が引けるともいう。この直線と曲線を引く方法を応用すれば、基本的にどんな複雑な図形も描けるようになるそうだ。

ちなみに、ある地元の気象学者が、穀物がすべて時計回りになぎ倒されていることから原因は竜巻の一種だろうと言ったときには、外側にもう1周、反時計回りになぎ倒されたサークルを作ってみせた。

ダグは次のように語っている。

単なる自然現象だという学者が現れてがっかりしたんだ。ミステリーサークルは、やっぱり未知の超常現象でなければならないからね。

また他にもサークルを作るグループが現れ始めると、彼らに呼びかけるメッセージを麦畑に刻んだ。「我々は孤独ではない」と。これさえも、一部のUFO研究家の間では「本物」の宇宙人からのメッセージだとみなされた。

ところが1991年、世界中をダマし続けてきた2人の秘密が世間に公表されることになった。きっかけはミステリーサークルの話題が国会で取り上げられ、その調査に税金が使われそうになったことだという。さすがに税金が使われるのは申し訳ないと思ったそうだ。

公表するためのメディアとして選ばれたのは、イギリスの『トゥデイ』紙。同紙では編集長のアイデアによって、2人が作ったサークルを「専門家」に鑑定させて引っかける、という企画が立てられた。

トゥデイ紙

1991年9月9日付けの『トゥデイ』紙

実際に鑑定をしたのは、『Circular Evidence』(邦訳:『ミステリーサークルの謎』 二見書房)という本も出版している、自称専門家のパット・デルガド。彼はダグとデイブが作ったサークルを本物と鑑定すると、次のように言った。

サークルは良好だと思う。これは私の人生で最も素晴らしい瞬間だ。

これは世界中でサークルに関する本を出版し、自ら多くの実物を鑑定してきた自称専門家が、イカサマと(専門家の言う)本物の区別がまったくつかないことを示した瞬間だった。

しかし多くの人々はダグとデイブに疑いを持った。「これほど多くの知性ある人々が、これほど長い間、60数歳の年取ったふざけた野郎たちにダマされ続けるなどということがあり得るのか?」というわけだ。

この記事を作成するにあたり大変参考にさせていただいた、『ミステリーサークル黙示録』の著者ジョン・マックニッシュも、そんな疑いをもった1人だった。

彼はダグとデイブに直接会って取材をする機会を得ると、いくつもの疑問をぶつけてみたという。

なぜサークルは金曜日に現れることが多いのか?

答えは、ダグの都合のいい日が金曜しかなかったから。当初はダグの妻イレーネには秘密にしていたものの、いつも金曜日に出かけていたことから怪しまれることになる。さらに車の年間走行距離が4万キロを越えてしまったことから浮気疑惑までかけられる。

そこでイレーネにはサークルづくりの秘密を全部ぶっちゃけたところ、彼女は面白がって喜んだという。それからは金曜の夜以外にもサークルを作ることができるようになった。

他にも質問は続く。

サークルが菜種畑にできるときは、なぜ6月初旬よりも前なのか?

菜種は6月初旬には茎がかなり密集し、もつれ合ってしまうため、120センチの棒で押し付けるのは難しくなってしまうから、という答え。

すらすらと出てくる回答にマックニッシュの気持ちは揺らぐ。そこで彼は、さらに真相を確かめるため、ミステリーサークルを独自に調査していたイギリスの懐疑論者ケン・ブラウンと共に、ある計画を立てた。

それはダグとデイブを監視し、2人がサークルを作るところを写真に撮って観察するというもの。マックニッシュはダグを自宅に招くと、この計画について話した。

あなた方が本当のことを話していると、確信がもてないんです。でもあなた方の証言を証明するチャンスをあげることはできますよ。あなた方の言っていることは、私が考えていることとは矛盾するんです。

もし、あなた方が私に対して正直になってくれるなら、私も、あなた方に完全に正直になるつもりです。ダグ、こう思って頂いて間違いないと思う。もし以前に証言したことをあなた方2人が実行できないなら、私はそのことを公表するつもりです。その代わり、もし、サークルは超自然現象だと公言しているサークル専門家のほうが間違っているなら、そのことも公表するつもりです。

『ミステリーサークル黙示録』より

マックニッシュはこのとき、いい返事は期待していなかった。しかしダグは、包み隠さず単刀直入に話したことに好感をもったようだった。彼は、サークルを作ることには自信があるんだと言わんばかりの不敵な笑みを浮かべていたという。

サークルメーカーの“本家”として意地と、自信の表れだったのかもしれない。この計画は彼らだけの秘密とすることになった。世間には、ダグとデイブは1991年で引退したと宣言した。

「稀代のジョーカー」「サークルの専門家」どちらの主張が正しいのか勝負が始まったのである。

勝負の行方

1992年になると、マックニッシュのもとに一通の無地の茶封筒が届くようになった。中には、水彩絵の具でサークルのデザインを描いた一枚の文書が入っており、いつどこに、このデザインのサークルが現れるかが詳しく書いてあった。

この文書には、半分に切られたアルミニウムの板も貼り付けられていた。残りの半分は実際に作られたミステリーサークルの現場近くに埋められており、2つを合わせることで元のアルミ板が復元できるようになっていた。これにより、2人が作ったサークルであることが確実に証明できるというわけだ。なおアルミ板には「ミステリーサークルメーカー、万歳」というメッセージが書かれていた。

ダグとデイブは監視のもとでも次々とサークルを作っていく彼らはすでに引退したと思っている自称専門家の多くは、2人が作ったサークルを「本物」と鑑定した。

数ヶ月も経つと、ダグとデイブを直に監視し、また他の多くのサークル作成グループとも接触を重ねたマックニッシュは、「ミステリーサークルは人間が作ったというのが唯一の論理的な解答である」という考えに急速に傾いていった。

そして1992年7月。ダグとデイブによってイギリスのイースト・メオンで作られたミステリーサークルがとどめを刺す。それまで自称専門家たちによって「本物」の現象の最も強力な証拠と言われていた美しい渦巻き模様や、あたかも中心で爆発があったような麦の倒れ方、見事なピクトグラム(絵文字、図表)などをダグとデイブはあっさり再現してみせたのだ。

水彩画と実物

デイブの水彩画(左)と、そのデザインを元に作られたイースト・メオンのサークル(右)。
『ミステリーサークル黙示録』(かもがわ出版)より

2人は不可能だと思われていたサークルの作成を見事にやってのけた。それでも彼らはいつもと変わらない様子だった。月明かりのもとで折りたたみの安楽椅子に座りながら、一杯のコーヒーと一包みのチーズロールを食べている。

彼らがこのささやかな趣味を楽しんでいたのは疑いがない。このときマックニッシュは、2人がすべて真実を話していることを確信したという。

ダグどデイブは数多くのサークルを作ったが、正体を明かしたあとも農場所有者から訴えられたことは一度もない。茎が倒されても収穫には影響がない場合が多いことや、ジョークへの理解、そして所有者の中にはサークルを見に来る人から入場料を取って大儲けした者もおり、2人の行為は黙認されている。

イースト・メオンのサークルは大きな反響を呼んだ。サークル鑑定の専門家ピーター・バリーはダウジングを使い、このサークルには「本物」特有の強い地球エネルギーがあると鑑定した。

CCCSという有名なサークルの研究グループは「良好」と鑑定した。ジョージ・ウイングフィールドというサークル研究家にいたっては、イーストメオン・サークルが本物だと鑑定したうえで、「このサークルはダグとデイブの証言に疑問を投げかけるものである」とコメントし、自らの限界をさらした。

このほかにも数多くの主だった自称専門家たちが「本物」と鑑定。しかし中でも、リチャード・アンドリューズという有名なサークル専門家のコメントがすべてを表している。彼はダウジングによってイーストメオンのサークルを「本物」と鑑定した上で、次のように言った。

「このサークルを誰かが作ることができるなら、私は、すべてのサークルは人間によって作ることができると思う」

「もしこれがインチキだったら、みんなインチキだろう」

稀代のジョーカー VS サークル専門家。勝負は、ダグとデイブの圧勝だった。

彼らのその後

最後はその後の2人について。デイブ・チョーリーは、後にガンで入院した。その際ダグは、入院中のデイブと、「ミステリーサークルを作ったのは自分たちであり、そのことを世界中に納得させてみせる」と約束したという。1996年に逝去。

デイブは、「いつか世界中をあっと言わせる絵を描いてみたい」と語っていたが、彼がデザインしたミステリーサークルは、まさに世界中をあっと言わせるものになった。

ダグ・バウワーの方は、91歳となった2015年時点で健在である。さすがに高齢のため、サークル制作の現場からは退いたものの、彼を慕い、直々に技術を伝授された弟子たちが、今も世界中でミステリーサークルを作り続けている。

締めはダグの言葉で終わろう。

深夜の畑の中でデイブはいつも笑っていた。私も笑いが止まらなかった。ミステリーサークルは20世紀最大のミステリーではなく、2人の友情から生まれた20世紀最大のジョークなんだ。

【参考資料】

  • パット・デルガード、コーリン・アンドルーズ『ミステリー・サークルの謎』(二見書房)
  • ラルフ・ノイズ編『ミステリーサークルの真実』(集英社)
  • ジョン・マックニッシュ『ミステリーサークル黙示録』(かもがわ出版)
  • 「奇跡体験!アンビリバボー」(フジテレビ、2008年2月28日放送)
  • 「都市伝説~超常現象を解明せよ!~ミステリー・サークル」(ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル)
  • 「アーサー・C・クラーク 未知の世界へ」(AXNミステリー)
  • 「解析!超自然現象2」(ナショナルジオグラフィックチャンネル)
  • 皆神龍太郎『UFO学入門』(楽工社)
  • CICAP「SPECIALE CROP CIRCLES」(http://www.cicap.org/crops/002.htm)
  • 「circlemakers」(http://www.circlemakers.org/index.html)
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