Step3(超常現象編)


「Step1」「Step2」では視覚や記憶の錯誤について解説してきた。
この「Step3」では、実際の超常現象の目撃情報などを例に解説していきたい。

 

パイロットの目撃報告

UFOの目撃報告を扱ったテレビや本などでは、「目撃したのは(空を見慣れている)パイロットだから、見間違えや勘違いをするはずがない」というようなセリフがよく聞かれる。 しかし、これは本当だろうか?

UFO研究家のJ・アレン・ハイネック博士は、UFOの誤認率を職業別にまとめた研究結果を発表している。それによると、軍のパイロットが1人でUFOを目撃した場合、UFOの誤認率は88%にも上ることがわかった。複数のパイロットが目撃した場合でも誤認率は76%。これは民間のパイロットでもほとんど変わらない。1人で目撃した場合の誤認率は89%。複数で目撃した場合でも79%という結果だった。

なお目撃証言以上に重視されるものにレーダーの探知もあるが、複数のレーダーがUFOを発見したケースでも、78%が勘違いという結果が出ている。

こういった結果について、『UFO学入門』(楽工社)の中で著者の皆神龍太郎氏は次のように指摘している。

「軍人や科学者がUFOを目撃すると、『目撃者はベテランの軍のパイロットだ。見間違えることなど考えられない』とか、『信頼できる科学者が複数で目撃しているのだ。これほど確かなUFO実在の証拠はない』『UFOはレーダーで捕獲された。これは間違いなくUFOだ』などと言い出す人がよくいる。
 だが、そんな主張にはまったく根拠がないことは、以上の統計から明らかだと思う。どうしてもそうしたことが言いたいならば『目撃者はベテランの軍のパイロットだ。だから9割は見間違えだろう』とでも、言わねばならない。パイロットや科学者からしてこの状態だから、ましてや一般の民間人のUFO目撃の信頼性については推して知るべしだろう」

 

星の見間違い

続いてはアメリカのUFO研究団体「CUFOS」に所属する研究家、アラン・ヘンドリーの調査結果を紹介したい。以下は彼が集めたUFO事例の中で、正体がわかった1024例(全体の88.4%)の内訳である。

恒星・惑星
35.2%
固定された地上光
0.7%
広告用飛行機
22.5%
照明弾
0.6%
飛行機
19.1%
鳥類
0.5%
隕石
11.0%
0.5%
人工衛星
2.3%
0.4%
2.2%
科学実験で出来た雲
0.4%
風船・気球(イタズラ)
1.4%
飛んでいたゴミ
0.2%
サーチライト
1.1%
蜃気楼
0.1%
風船・気球
0.9%
幻月
0.1%
ミサイル発射
0.9%
窓の反射
0.1%


この調査結果を見ると、「恒星・惑星」の見間違いが最も多いことがわかる。
しかし星をUFOに見間違えたりするだろうか、と疑問に思われるかもしれない。

そこで『コンドン・レポート』(※注1)というUFO調査報告書の中に、見間違いに関する興味深い事例があるので紹介する。

【※注1】 アメリカ空軍が1966年10月に、当時コロラド大学学長だったエドワード・U・コンドン博士をリーダーとするコンドン委員会にUFOの研究を依頼。その結果を1969年1月に約1000ページにも上る膨大なレポートとしてまとめたもの。


【ケース15】 この事例では2階建ての建物ぐらいある大きくて青い光体が目撃された。その光体は円形になったり楕円形になったりし、1週間に数回、目撃者の家から約8〜32km西に着陸したという。

目撃者は双眼鏡で観測したところ、下部からジェットを噴射するドーム型の物体で、2列の窓があるのがわかり、その物体が広範囲を照らし出していたと報告。物体はいつも西の地平線を非常にゆっくりと降下していったという。

【ケース37】 1967年10月20日の早朝、ジョージア州のミレッジビルで、パトロール中の2人の警官が「フットボールのような形の明るい物体」を目撃した。警官たちはジョージア州の外、約13kmの地点まで追跡したが結局見失ってしまった。

そこで署へ帰ろうしたところ、再びUFOが出現。今度は逆に警官たちを追跡しはじめた。UFOはパトカーの上空約150メートルまで接近.。そのあまりの明るさに、車内の警官たちは腕時計が読めたという。

彼らは「UFOに追跡されている」と無線連絡を入れ、車を止めたが、
UFOは森の中に隠れてしまった。
そこで2人の警官は一度署に戻り、もう1人の警官を連れて戻ったところ、UFOは木の高さの2倍ほどの位置におり、色を赤からオレンジ、白へと変化させて除々に消えてしまった。

この2つの事例はコロラド大学の調査員によって詳しく調査され、その正体も判明している。現場で目撃者と一緒にそのUFOを目撃した調査員たちは、その目撃者がUFOだと指差すものが、同じ日の同じ時刻、同じ方角で輝いているはずの
金星であることを確認した。金星は月と太陽を除けば全天で最も明るい星であり、特に【ケース37】のほうでは事件当時マイナス4.2等という明るさがあった。

目撃談が脚色されているのは、これまでの「Step1」や「Step2」で紹介してきたような錯誤が関係している。たいていの人は遠く離れた物体の大きさを正しく測定することができない。星のようにあまりにも遠くにあると距離感を見誤ることもある。子どもの頃、車に乗って月を見ていたらまるで追いかけられているかのように感じた経験を持っている人もいるはずだ。

また人間は、見ている空間に比較できるものがない場合、止まっている物体を動いていると勘違いしてしまう現象が起きることも知られている。たとえば真っ暗な部屋に豆電球がひとつあるとしよう。その状況で豆電球の光をじっと見つめていると、止まっている豆電球の光が動いているように見えてしまうのだ。

これは実験で何度も確かめられており、心理学で「自動運動」と呼ばれている。
視界では最大で20度から30度も動いているように感じられるのだから驚きだ。ときには光が強くなったり弱くなったりするように見えることもある。

広告用飛行機をUFOに誤認したスケッチさらに、「Step2(記憶編)」でも解説したように人の記憶は勘違いが入り込みやすい。記憶のメカニズムを研究している聖心女子大学の高橋雅延教授が行った実験では、楕円形の物体を描いて被験者50人に30秒間よく見てもらい、3時間後に記憶を頼りに自分が見たイラストを再現してもらっている。

その結果は興味深い。なんと50人中24人もの人たちが、単なる楕円形の物体だったものに窓を描いたり、典型的なUFOの形に描いたりしたのだ。
たった3時間でこの結果である。記憶は誇張されやすいことがよくわかる。

【※注3】右上は、広告用飛行機をUFOだと誤認した目撃者のスケッチ(1979年のアラン・ヘンドリーの調査による)。飛行機とは似ても似つかない形や、実際には存在しないものを目撃者たちは描いていた。

 

暗闇の降神術の会

今度は心霊ショーで起きた勘違いの例。
1850年代から70年代にかけてアメリカやイギリスで活躍した霊媒師たちの中に、アイラ・ダヴェンポートという人気霊媒師がいた。アイラは引退後の晩年に、以前から交流のあったマジシャンのハリー・フーディーニと会う。その際、アイラはフーディーニに一片の新聞の切り抜きを示した。

それは『ロンドン・ポスト』紙のもので、記事のタイトルは「暗闇の降神術の会」
アイラが弟と一緒にロンドンで心霊ショーを行ったときの様子が、出席者の話をもとに次のように報告されていた。

「テーブルの上に、楽器、振鈴などが乗せられた。それから兄弟は、手も足もロープで縛られ、しっかりと椅子にくくりつけられた。次いで室内の明かりが全部消された。
 その途端にいろいろの楽器が、室内を縦横無尽に飛び回っているように思われた。その急速な動きによって引き起こされる風を、すべての出席者が顔に感じた。
 振鈴の鳴る音がひときわ高く響いた。トランペットは床にぶつかって音を立てた。タンバリンは騒々しい音をかき立てながら、室内を走り回っているようであった。スパークが走るのも見えた。楽器が自分にぶつかったと叫んだ人も何人かいた。一人の紳士は、鼻に当たったと見えて、皮膚が破れて少々出血したようでもあった」


これをフーディニが読み終わると、アイラは次のように語ったという。

「暗闇の中では、人々はこんなひどい錯覚に陥るものです。全く不思議な話です。だって楽器は、一度も私の手から離れたことはないのです。それなのに多くの人が、楽器は本当に自分たちの頭の上を飛び回ったと言い張るのですから」

『超能力現象のカラクリ』(東京堂出版)より引用

何もご存知なければ信じがたい話に思えるかもしれない。けれどもここまで視覚編や記憶編、そしてこの超常現象編を読まれた方なら、こういった錯覚が現実に起こるであろうことはご理解いただけるのではないかと思う。

残念ながら、人は現実をありのまま完璧にとらえる視覚を備えてはいない。記憶も私たちが思っているほど正確なものではない。ときに勘違いすることもあれば、脚色もする。しかしだからこそ、そういった仕組みや事例を知り、健全な懐疑精神を持つことは重要だと考える。あなたにとって、「Step1」〜「Step3」にかけての情報が、今後の参考の一助となれば幸いである。

(記事公開日:2005年2月1日)