
![]()
オレゴン州ポートランドに、驚異の透視能力者がいる。彼女の名はローリー・マッコーリー。これまでにローラ・ベル行方不明事件、アレクシス・バーク失踪事件など、数々の難事件を解決に導いてきた全米No.1サイキックである。
そんなローリーが、2004年12月、日本のテレビ番組で「小林雅尚君・行方不明事件」の解決に挑むことになった。
番組では、まず犯人の顔や犯行動機を詳細に透視。ローリーによれば、犯人は2人組みの男女で、何週間も前から計画していたという。
動機は、子ども欲しさのためで、女性が子どもに恵まれなかったのが原因だった。男性も同情し、女性の夢を実現させるために協力したという。
犯人の顔は、女性の方は満月のように丸顔で、分厚い唇が特徴。40代だという。男性の方は、目を細めているようで髪型はオールバック。2人の似顔絵も作成した。
次にローリーは、雅尚君の現在の居場所について、いくつかのキーワードを透視した。番組では、そのキーワードを元に全国を捜索。すると福岡県飯塚市や田川市、広島県庄原市などがキーワードに多く当てはまった。
しかし、最終的に最も透視結果に当てはまったのは岡山県玉野市であった。
ローリーによれば、「海岸のある町」、「造船所」、「30という数字」、「曲がりくねって立体的に交差した道」、「2本の木枠に囲まれた鐘」、「長い石垣」、「中国風の庭園」、「中央が高い3つの山」、「積み重なった石」がある町で、玉野市は狭い範囲にこれら全てが存在していた!
さらに雅尚君が現在住んでいる場所として、「V字型の木が近くにある、L字型の平屋」を透視していたが、これに当てはまる場所も見つかった。
そこで番組ではローリーに来日してもらい、より詳しい透視を依頼。彼女は1度も見たことが無いはずの事件現場を詳細に透視してみせると、雅尚君の現在の居場所までの道を遠隔透視した。結果的にたどり着いたのは番組側が既に見つけていた場所と全く同じであった。
番組では、雅尚君の母親と共にローリーもその場所に向かったが、残念ながら雅尚君は見つけることはできなかった。
しかし、これほど見事に透視結果と的中した町は他になく、ローリーも、もう少し時間がかかるが必ず見つかると言っている。
彼女は、これまでに18件もの難事件を解決に導いてきたのだ。番組でも驚異の透視能力を見せたローリー・マッコーリーなら、この難事件を解決してくれる日もそう遠くはないだろう。
まず初めに、18件の事件を解決に導いてきたと言っているが、ローリーがこれまでに関わった事件は300件ある。つまり、300件のうち282件は役に立たなかったのだ。解決率は、わずか6%。このトホホな解決率で全米No.1だというのだから頭が痛い。
とはいえ、ほとんど役立たずながら18件は解決に導いたのではないか? こう思われるかも知れない。
だが番組で例として挙げられていた「ローラ・ベル行方不明事件」や「アレクシス・バーク失踪事件」について、出演していた刑事は「ローリーのおかげで」事件が解決したとは一言も言っていない。いずれも事件解決後に当たったと言っているだけで、解決に直接貢献したわけではないのだ。
例えば「アレクシス・バーク失踪事件」では、『水源の近く』という曖昧なキーワードを言っただけで当たりとされているが、実際に遺体が見つかったのは川の近くだった。
これがもし湖や池、ダムなどの近くで見つかったとしたらどうだろう。当然これも「当たり」とされただろう。さらに、近くでなくとも、川、池、湖、ダムなど「水の中」から見つかったとしても当たりとなったはずだ。
つまり『水源の近く』というキーワードは非常に曖昧で、水に関係していれば後で「当たった」とこじつけることができるのだ。
こういった、どうとでも取れる曖昧な表現は『マルティプル・アウト』と呼ばれ、自称超能力者や霊能者、占い師、予言者などが、透視や予言を行う時に良く使う。ローリー・マッコーリーも、この「マルティプル・アウト」を非常に上手く使っている。
![]()
ここからは、ローリーが実際にテレビで行った透視を見ていくことにしよう。
今回、彼女が透視を行ったのは「小林雅尚君・行方不明事件」である。この事件は2001年10月25日、当時1歳10ヶ月だった小林雅尚君が、岡山県賀陽町の祖父宅の裏庭からいなくなってしまったというもので、近くにいた祖母が目を離した5分ほどの間に起きた出来事だったという。
ローリーは、オレゴン州ポートランドのオフィスから透視を開始。
まず初めは犯人の顔や犯行動機を透視するのだが、これがやたらに詳しい。しかしどんなに詳しく語ろうが、現時点では検証不能である。
次にローリーは、雅尚君の居場所について透視を行う。
- 何を意味するかわからないが3つの山を感じる。
- そう遠くないところに鉄道がある。赤い電車が走っている。
- とても特徴的な石垣を感じる。
- 小さな公園がある。そこには中国風の建物があり、橋が架かっている。
- 雅尚君がいる家は、平屋でL字型をしている。家の敷地内には二股に分かれた木(V字型)がある。
- T字型の街灯
- タンク
- 鉄塔
- 三日月形のシンボル
- 造船所
- ローリーが行った透視をイメージ化すると、町の西側に山があり、その山の近くに折れ曲がって交差した道がある。その道を北に向かうと石垣がある。その先にL字型の家があり、現在はそこに住んでいる。
以上が、番組内で最初に放送された内容である。あとでわかるように、実際にはもっとたくさんの透視を行っているのだが、番組の演出上、残りのものは小出しにするのだ。
日本での捜索は、「3つの山」と「赤い電車」を手がかりに進められた。専門家などに聞いた結果、福岡県飯塚市や田川市などが候補として浮かび上がり、早速捜索を開始。
その際、「電力に関係のある鉄塔」と「柵に囲まれた貯水タンク」という、どこの町にもあるようなキーワードが追加される。しかし、いくつかのキーワードと一致するものの、肝心のL字型の平屋が発見できず、次のターゲットへ移る。
ここで、再びローリーが行った、「とても目立ち、みんなが見上げるほど高いところにある木枠に囲まれた鐘」と「Sという文字が見える。SHOという音が入っているか、SHO(ショウ)から始まる」という透視が追加される。
ターゲットとして浮かび上がったのは広島県庄原市。ここでは「中国風の建物がある公園」、「タンク」、「鉄塔」、「三日月形のシンボル」を発見。さらに「馬が1、2頭」、「屋根と4つの柱があり、壁のない家畜の餌を与えるような建物」という透視も加えられ、2つとも探し出す。しかし「石垣」と「3つの山」が見つからず、あえなく断念。
最後に向かったのは、岡山県玉野市。ここで、「海岸のある町。(事件のあった町から)そんなに遠くない」と、地図を指差すローリーの映像が流れる。
おそらく、このシーンを見た多くの人が思ったことだろう。場所がハッキリわかってたんなら、最初から行けよと。
しかし、視聴者の疑問もお構いなく番組は進行する。
玉野市では、それまで発見できなかなったものが次々見つかったとして、「木枠に囲まれた鐘」が紹介された。しかし上にも書いたとおり、ローリーが透視したのは「とても目立ち、みんなが見上げるほど高いところにある」木枠に囲まれた鐘である。
しかし実際に見つけたのは、寺の隅っこにある鐘で、全然目立たない。しかも木枠には囲まれているものの、2mほどの高さにあって「みんなが見上げるほど高い」というわけでもない。
おそらくローリーは、教会にあるような鐘を狙ったのだろう。それなら、通常4つの木枠(柱)に囲まれているし、彼女が言った「とても目立ち」「みんなが見上げるほど高いところにある」場合が多い。だが運悪く玉野市では見つけられなかった。
ちなみに、鐘の形がローリーの透視した絵の形とそっくりだと言っていたが、鐘は通常みんなあの形をしているのだ。別に珍しいわけではない。
捜索はその後も続き、結果として、玉野市では以下のものが見つかった。
- 造船所
- 鐘
- 数字の30、もしくは3、0に関係あるもの
- 曲がりくねって立体的に交差した道
- 石が積み重なったもの
- 公園の中にある建物と橋
- 3つの山
- 石垣
- L字型の平屋とV字型の木
これを見てもらえばわかるように、最初に専門家にまで聞いて全国を探した、
赤い電車は、いつのまにか無かったことになっている。
さらに公園の中にある建物は「中国風」だと言っていたのに、実際に見つけたのは、どこにでもあるような普通の休憩所だった。
おまけに、捜索の途中、リポーターの坂上忍の持っていた紙が3秒ほど映ったのだが、ビデオを停止して見ると以下のものが確認できた。
- ・・・スス・・・
- 珍しくて高級・・・
- 祭り(真夏に行わ・・・
- 引っ張ると伸びるアメ・・・
- 野菜、コーン、キノコ、ぶどう
- S.H.O.というイニシャル
- O.C.H.I.というアルファベット
- 2.8.0.という番号(今の家の近く・・・
- 280という数字(高速道路の番号か通り・・・
- 30 もしくは、3.0.
- 250という数字(祖父母の家から高速・・・
- A.G.という字
- 三日月形のシンボル
- ・・・クフィギュア・・・
- ・・・太陽の・・・
番組で紹介されなかったキーワードがたくさんあるではないか。
この中で、玉野市の時に当たったとされたのは「30 もしくは3.0」だけ。後は途中で小出しにされた一部のものを除いて、番組では一度も触れられることがなかった。
しかも画面に映らなかった部分にもキーワードは書いてあるし、紙は、他にもう1枚あるのだ。(もしかしたら、下にもう1枚あったかもしれない)
これだけたくさん曖昧なキーワードを言えば、そりゃ中には当たるのもあるだろう。しかも、ただでさえ曖昧なキーワードを好き勝手に削り、当たりをこじつけ、さらに
ハズレは無視していいのなら、だれでもローリーと同じ「驚異の透視能力」を真似することができるだろう。
【追記】 この事件に関しては、アメリカの自称超能力者ジョー・マクモニーグルと、エド・デームズ&アーロン・ダナフュー、そしてロシアの自称超能力者ルイック・ライサも、雅尚ちゃんの居場所を透視しているので紹介しておこう。
まずジョー・マクモニーグルは、2004年1月17日放送の『FBI超能力捜査官5』(日本テレビ)にて、雅尚ちゃんは岡山県倉敷市にいると透視。
次に、2003年4月14日放送の『TVのチカラ』では、まずルイック・ライサが自宅から北西に200キロ離れた場所として島根県松江市&穴道町付近にいると透視。
そして最後にエド・デームズとアーロン・ダナフューの自称リモートビューアー(遠隔透視能力者)コンビは、自宅(岡山県旧賀陽町)からそれほど遠くない場所にいると透視。
これらの透視結果にローリーの岡山県玉野市という透視結果を加えて見比べてみると、みんなバラバラなのが興味深い。ちなみに言うまでもないだろうが、これら4名の自称超能力者の透視場所を探しても、手がかりになるものは全く何も見つからなかった。
このあとの展開は、事件現場の様子や車のナビゲーションなど事前に調べればわかることはやたら詳しく、肝心な(事前調査が通用しない)ところになると役立たずになるという、お約束のパターンが繰り返されただけであった。(事件の解決はおろか、進展するようなことも一切なし)
おそらくスタッフは、最初から解決するなどとは思ってなかったのだろう。とはいえ、玉野市へのロケだけでは時間が持たないし、解決しないのではローリーの自称超能力のインパクトも薄くなる(というか無能だというのがバレてしまう)。そこで、前座として3市でロケを行い、ローリーの透視能力を演出したのだろう。
結局、ローリー・マッコーリーの「驚異の透視能力」の正体とは、曖昧なことをたくさん言い、後で当たりをこじつける「レトロフィッティング」というテクニックなのだ。
番組に出演していたアメリカの警官は、このテクニックに騙されていたようだが、みんながこの刑事のようにトホホなわけではない。アメリカにもちゃんと見抜いている刑事はいる。
このページの最後は、そんな刑事の1人、コロンバス警察のカーティス・マックラング署長が、ドロシー・アリソンという自称超能力者について語った言葉を紹介して終わりとしよう。ローリー・マッコーリーにもそっくり当てはまる話である。
「彼女はありとあらゆる意見、断片的な情報やまちまちの描写を語ってくれたんだ。とにかくたくさんしゃべってくれたよ。あれだけたくさん話せば、どれか1つくらい当たろうというものだ」
『ハインズ博士「超科学」をきる』より
