水脈や鉱脈を探知できる? 「ダウジング」の検証

伝説

ダウジングとは、Y字型やL字型の棒、または振り子などを使い、地下水脈や貴金属などの鉱脈、果ては人間なども見つけられるという手法のことである。

ダウジングの様子

ダウジングの様子

この手法を使えば、80%~90%以上の高い確率でターゲットのありかを発見することができるとされる。

また熟練したダウザー(ダウジングを行う人)になると、地図の上だけでターゲットの目星をつける「マップ・ダウジング」という高等なダウジングも行えるようになるという。(以下、謎解きに続く)

謎解き

ダウジングは、その気になれば木の枝や針金を使って行うことができる手軽さもあってか、イギリスやアメリカの軍、日本の水道局などの公的機関でも使用されたことがあった。テレビなどでも見かけることがあり、比較的ポピュラーな超常現象といえる。

そのため実体験による成功談がひとり歩きしやすく、反面、本格的な検証結果はあまり知られない傾向にある。そこでこのページでは、そういった検証結果にスポットをあて、その実態を探ってみたい。

ロッドは手が動かしている

まずは基本的なところから。ダウジングでは「ロッド」が使われる。これは、ダウザーが手に持っている二又の棒や振り子のことである。一般にこのロッドは、地下にある対象物から出る「波動」のようなものに反応して動いているかのように思われていることが多い。

しかし本当なのだろうか。この疑問を検証したのが、生理学者と心理学者でもあったジャン・メルタ博士である。博士は実験で、ダウザーの手首の筋肉の収縮を記録できる装置と、ロッドの振動を検出できる装置を使って双方の動きを記録した。

すると、ロッドが動く0.5秒前に手首の筋肉が収縮していることがわかった。つまりロッドはダウザー自身が動かしていたことになる。

ただし、この動きは意図的なものではなかった。「不覚筋動」と呼ばれる本人も無自覚な筋肉の動きだった。これは筋肉が緊張状態にあると起こりやすい。

「こっくりさん」などはこの不覚筋動が原因とされ、質問に対する答えの動きは、本人の期待や予想が反映される。ダウジングも基本的に同じだ。相談ごとのような質問の場合、自分が望んでいる答えに合わせた動きを無意識にしてしまっていることが多い。

ダウジング―その検証の歴史

さて、ロッドの動力源がわかったところで、気になるのはその成功率である。ダウザーが答えを知らない探し物の場合、その成功率は当てずっぽうでやった場合と大差ないことが予想される。

実際はどうなのだろうか。しっかりと管理された実験の概要と結果を以下にまとめてみた。各年代ごとの主だった実験を見てみよう。

【1918年~43年】オーストラリア
3000本以上の井戸掘りについて、ダウザーを使った場合と使わなかった場合の成功率の差を比較した実験

この実験は1918年から1943年までの計25年もの期間にわたって得られたデータをもとに、オーストラリアの地質学者、レオナルド・キース・ワードが上記の成功率の差を比較したもの。

〔結果〕

毎時100ガロン以上の実用的な水が得られた井戸の数は、ダウザーを使った場合1284本で、成功率は70.4%。一見すごいように思える。ところがダウジングを使わなかった場合でも、実用的な水が得られた井戸の数は1474本。成功率は83.8%もあった。

つまり対照実験を行ったことにより、その土地はもともと水脈が比較的豊富だったことが明らかになったのである。これはダウジングのみで終わっていたら、わからないことだった。

【1948年】 ニュージーランド
屋外で水源の位置や深さ、水量などを当ててもらう実験

オタゴ大学のP・A・オングレーが実験を行った。この屋外実験には全部で75人のダウザーが参加。水源の位置や深さ、水量を当ててもらったり、地中に埋めた水が満たされたボトルと空のボトルを見分けられるかなどが試された。

〔結果〕

偶然で当たる確率以上の成功者はゼロ。

【1949年】 アメリカ
水源の深さと水量を当ててもらう実験

アメリカ心霊研究協会(ASPR)が主催した。実験では27人のダウザー(そのうち男性が22人、女性は5人)のほかに、対照群として地質学者と水利技術者も参加した。

〔結果〕

専門家は水源の深さをほぼ正確に当てることができたものの、水量に関しては外した。一方、ダウザー側は水源の深さと水量ともに外してしまった。

【1952年】 アメリカ
ダウザーを使った場合と使わなかった場合の成功率の差を比較した実験

ハーバード大学のエヴォン・フォークトらが、アメリカのニューメキシコ州にあるフェンス湖で行った実験。

〔結果〕

ダウザーの言うとおりの場所で井戸を掘った場合、実際に水が出たのは24本で、空井戸(失敗)は5本。この結果だけ見ると成功率は約83%で高く思えるが、ダウジングを使わなかった場合でも実際に水が出たのは25本。空井戸(失敗)は7本。成功率は78%もあった。

【1964年】 アメリカ
10本中どのホースに水が流れているかを当てる賞金を懸けた実験

アメリカン・インターナショナル・カレッジの物理学教授、ジェイムズ・A・コールマンが「ダウジングを10回行って7回成功させた者には賞金を払う」と宣言して主催。

実験では数十センチ間隔で区切られ、麻布で覆われた庭園用ホースを10本用意し、そのうちの1本だけに水を流して行われた。

〔結果〕

挑戦者である3人のダウザーのうち、二人は最初から連続4回外して失敗を認め、残りの一人も最初の2回は成功させたものの、その後に連続4回の外れを出して失格となった。

【1970年】 イギリス
地中に埋められた金属鉱石を、通常のダウジングと地図を使ったマップ・ダウジングで探し当てることができるか試す実験

ダウザーたちが、地下の鉱石を探し当てることで軍に貢献できるかを試すため、イギリス防衛陸軍省管轄の技術検査実験所が実験を行った。

用意された土地は160万平方メートル。実験ではその膨大な土地を400個の正方形に区切り、中に「金属鉱石」、「プラスチック」、「コンクリートブロック」、「木片」、「自然の土」の五つの物体が埋められた。

また隣に埋めた物体からの影響をまったくなくすため、各正方形の中心から隣の中心までは6メートルの距離がとられた。(ダウザーもこれなら影響を受けないと事前に同意)

〔結果〕

実験に参加したダウザーは全部で22人。事前に「当たり」となる見本の鉱石まで見せられたものの、結果は残念なものになった。

まずマップ・ダウジングでは、勘だけを頼りに当てずっぽうで試した人々よりも的中率は下回った。次に通常のダウジングでも結果は同じ。失敗に終わったダウザーの中には、当たりとなる「金属鉱石」が埋まっていると判断した160区画のうち142も外してしまい、別のダウザーは332区画のうち319も外している。

【1975年】 カナダ
小箱の中にある黄金を当てるテスト

超常現象研究家のジョー・ニッケルが主催した実験。4人のダウザー(そのうち3人が鉱脈探しのプロとして活動)が挑戦した。

実験では、 当たりである黄金の他、タバコなどが入れられた小箱(中には空箱もあり)が20個用意され、各自が自分のやりやすいダウジング法を使って中身を当てることになった。

ただし、実験後に「地中の“波動”が邪魔をして箱の中身が読み取れなかった」などと言い訳をされては困るので、事前に各ダウザーにダウジングを行ってもらい、「ここは邪魔な波動をまったく感じない場所だ」とお墨付きを得られた場所が、この実験では選ばれている。

〔結果〕

こうして邪魔が入らないように、言い換えればより当たりが出やすいように工夫された実験だったにもかかわらず、終わってみれば4人のダウザーが「反応あり」とした小箱は重複も含めて全部で24個。そのうち正解したのは3個だけだった。

【1979年】 イタリア
地中に埋めたパイプの水路を当てられるか試す実験

この実験は、元マジシャンのジェイムズ・ランディが賞金1万ドルを懸けて主催した。実験に参加したのは4人のイタリア人ダウザー。彼らは、地中に埋められたパイプ内に流れる水を感知し、水路をたどることが出来れば賞金の1万ドルがもらえることになっていた。

〔結果〕

テストが始まる前の自信度は、それぞれ99%か100%だと答えていた。ところが実際の結果は誰も水路を当てることが出来ずに全滅した。

【1980年】 オーストラリア
5万ドルの賞金を懸け、水脈と金塊のありかを当てる実験

ジェイムズ・ランディが5万ドルの大金(そのうち1万ドルはランディ自身の掛け金で、残りの4万ドルは地元の実業家の掛け金)をかけて主催した。事前のダウザーとの話し合いにより、的中率が80%を超えれば賞金が支払われることになった。

テストは全部で二つ。一つ目は用意された10個の箱の中に一つだけある金塊の入った箱を当てること。もう一つは、10本のパイプのうち、1本だけ水が流れているパイプを当てるというもの。

この日、集まったダウザーは全部で11人。事前の練習が終わったあとのインタビューでは、全員が成功率80%以上だと回答。中には自信満々に、「(今日は)生涯で一番楽な給料日になるだろう」と豪語するダウザーもいた。

〔結果〕

検査役の牧師による結果発表では、金塊探査は全員で35回挑戦して当たったのは4回だけ。的中率は11パーセント。水脈探査の方も22%だった。

【1981年】 アメリカ
4本のホースのうち、どのホースに水が流れているかを当てるテスト

全米ダウザー協会会長自ら、40回挑戦した。

〔結果〕

当てられたのはわずかに9回だけ。

【1992年】 ドイツ
パイプの中を水が流れているか当てる実験

ドイツの懐疑団体「GWUP」が実験を行った。この実験は、ドイツ政府の依頼を受けて、ミュンヘン大学の物理学教授らが行った大規模実験の追試も兼ねて実施されたもの。

実験に参加したダウザーは、ドイツ以外にも、デンマーク、オーストリア、フランスなどからも集まり、全部で30人。彼らは、地表から50センチ下に埋められたパイプの中の水流の有無を当てられるか試された。

この実験では弁を切り替えることにより、パイプの中の水の流れを制御することができた。そのため埋まっているパイプの位置をダウジングで当てるのではなく、パイプの中を水が流れているかどうか(つまり水脈)を当てることになった。(地下に埋まっているパイプの位置は地表からもわかるように印が付けられていた)

〔結果〕

偶然で当たる確率をこえることができなかった。

【2001年】 カナダ
地中に埋められたパイプのありかを当てるテスト

ジェイムズ・ランディ教育財団からの要請により、カナダの懐疑団体「スケプティクス・カナダ」がテストしたもの。

このテストは、100万ドルの賞金を懸けた「100万ドル超常チャレンジ」の一環として行われたものであり、テストに挑戦したダウザーは、過去40年間に100%の確率で成功してきたと豪語していた。

こうして自信満々で挑んだダウザーは、テスト会場に選ばれた3つの場所のうち、第一の場所では9つの地点で反応、第二の場所(ここは何も埋まってない)では7つ、そして第三の場所では8つの地点で反応があったと回答。

〔結果〕

合計で24の反応があったという地点のうち、実際にパイプが埋まっていたのは、わずかに2つの地点だけだった。

【2005年】 イギリス
ダウジングが犯罪捜査に役立つか試す実験

ホープ大学のキアラン・オキーフ博士が実験した。この実験では、実際に起きた事件のデータをもとに、地理分析官、ダウザー、学生のそれぞれ3グループが、どの程度、犯人の潜伏場所を当てられるかを試した。

地理分析官とは、人間の行動パターンをもとに、実際に事件が起きた現場の地図を分析し、犯人がどこに逃げたのかを推理する専門家のこと。
〔結果〕

地理分析官のグループは実際の潜伏場所に近い場所を推測することができたものの、ダウザーと学生は偶然レベルの的中率しか示せなかった。オキーフ博士は、実験後に次のように述べている。

ダウジングが犯罪捜査に役立つという研究はこれまで特にありません。興味があるので実験してみましたが、やはりダメですね。

見過ごされがちなポイント

さて、このようにダウジングの実験結果は残念なものが多い。しかし、すべてを完全に外すということはあまりない。まぐれや偶然レベルで当たることはあるようだ。大事なことは、見過ごされがちな対照実験の結果や外れの数である。

たとえば1964年に行われた実験では、ダウザーが最初に2回連続で当たりを出している。もしこれが実験ではなく通常のダウジングであれば、当たりが出た時点で終わりとなっていただろう。その後に当たりよりも多くの失敗があったことには気づかなかったはずだ。

またオーストラリアやアメリカでの実験では、ダウザーが70%以上の高い的中率を示した。これなども通常ならダウジングの成功を物語る話となっていただろう。

ところが実験では対照群も用意していた。そのため、ダウジングを使わずに勘だけを頼りに井戸を掘っても、ダウジングとほとんど同じか、それ以上の的中率を示せることがわかってしまった。

つまり当たった逸話だけを見ていても真相は見えてこない。ダウジングでの当たりがまぐれではないことを示すには、偶然以上の的中率を示す必要がある。さらには追試の実験もクリアし、その的中率を複数回示すことが望ましい。


【参考資料】

  • ゲオルク・アグリコラ 『デ・レ・メタリカ ― 近世技術の集大成』 (岩崎学術出版社)
  • Christopher Bird『The Divining Hand』 (Whitford Press)
  • Evon Z. Vogt / Ray Hyman『Water Witching』 (University of Chicago Press)
  • James Randi『FLIM FLAM!』 (Prometheus Books)
  • 「An Encyclopedia of Claims, Frauds, and Hoaxes of the Occult and Supernatural」
    (http://www.randi.org/encyclopedia/)
  • 「Dowsing for fun and profit : A test of a $1-million claimant」
    (http://www.scienceandreason.ca/pseudoscience/dowsing-for-fun-and-profit-a-test-of-a-1-million-claimant/)
  • 『Skeptical Inquirer』 (January 1999)
  • アーサー・C・クラーク『超常現象の謎を解く』 (リム出版)
  • ジョー・ニッケル『オカルト探偵ニッケル氏の不思議事件簿』 (東京書籍)
  • マーティン・ガードナー『奇妙な論理Ⅱ』 (早川書房)
  • 山本弘、皆神龍太郎、志水一夫『トンデモ超常現象99の真相』 (宝島社)
  • 「都市伝説~超常現象を解明せよ!~サイキック捜査」 (ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル)
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