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魔の三角海域「バミューダ・トライアングル」

伝説

大西洋の西に位置する、バミューダ諸島、フロリダのマイアミ、プエルトリコを結ぶ三角形の海域は、船や航空機が忽然と姿を消すことで世界的に知られている。世に言う「バミューダ・トライアングル」 である。

バミューダ・トライアングル

バミューダ・トライアングル

この海域では奇妙な事件がいくつも起きている。たとえば1978年2月22日、空母ジョン・F・ケネディに物資を運ぶため飛行していた海軍中佐ポール・スマイスとリチャード・レオナルド中尉は、バミューダ海域を飛行中、乗っていた飛行機もろとも消失した。当時、天気は快晴で、消失の原因はわかっていない。

1980年1月10日には、ルイジアナ州立大学のフットボールコーチ、ボー・リーンが乗る飛行機が、同州の州都バトンリュージュを目指して飛行していた。すると突然、バミューダ海域へ向かって飛び出し、5時間後に姿を消してしまった。事件についての手がかりはまったくつかめておらず、なぜこのような事件が起きたのか謎である。

また古くは1872年にメアリー・セレスト号事件が起きている。この事件はとても奇妙だった。船がバミューダ海域で発見された当時、船内のテーブルの上には、まだ温かさが残るコーヒーやパン、ベーコン、ゆで卵などが、今にも食べようとしていたかのように盛られていた。

ところがそれらを食べるはずだった乗員たちは忽然と姿を消していたのである。彼らは一体どこへ消えてしまったのだろうか?

さらに1881年にも奇妙な事件は起きている。イギリスのスクーナー船 、エレン・オースティン号が、同海域を航行中、遺棄された一隻の船に遭遇。乗り移ってみると何も異常なところはなく、ただ船員だけが忽然と姿を消していた。

スクーナー船

スクーナー船。これは2本以上の帆柱を立て、その帆柱の片側に帆を張っている船のこと。

エレン・オースティン号の船長は、この船を天からの授かり物と考え、船員を乗り込ませて一緒に目的地まで向かうことにした。しかし、その途中、突然のスコールに見舞われる。両船は離ればなれになってしまったが、2日後になんとか再会。ところが様子がおかしい。再び乗り込んでみると、なんと前に乗り込んでいた船員たちは全員姿を消していた!

この異常事態を受け、当然、船員たちは再び遺棄船に乗り込むことに尻込みしたものの、船長が説得し、もう一度、新たに船員を乗り込ませて目的地まで向かうことになった。

ところがその直後、またしても両船をスコールが襲い、離ればなれになってしまう。結局、遺棄船はそのまま二度と現れることはなく、船員もろとも完全に姿を消してしまったのである。

このようにバミューダ海域では、常識では理解しがたい奇妙な事件がいくつも起きている。我々には同海域で起こる消失現象に対抗する術はない。一度飲み込まれたが最後、二度と出てくることができない魔の海域なのである。

謎解き

上記のような【伝説】が語られるようになったのは、今から半世紀以上前の1950年代頃。人々の間に広く知られるようになったのは、作家のチャールズ・バーリッツが、著書『The Bermuda Triangle』(邦訳:『謎のバミューダ海域』)を1974年に出版したのがそのきっかけ。

この本は世界20カ国語に翻訳され、総発行部数は500万部を超える世界的な大ベストセラーとなった。雑誌やテレビでも特集が組まれ、映画にもなったので、この話をどこかで聞いたことがある、という方はけっこう多いかもしれない。

ところが、こういった【伝説】は広く知られていても、その真相はほとんど知られていない。実は「バミューダ海域の謎」は、その多くが解かれていた。この謎解きに挑んだのは、元アリゾナ州立大学の司書で飛行教官のライセンスを持つローレンス・D・クシュと、アメリカ陸軍の元大尉マイケル・デネットである。

バーリッツとクシュの本

バーリッツの本(左)とクシュの本(右)

彼らは事件当時の一次資料を丹念に調べ、膨大な事故記録を徹底的に調査した結果、この「バミューダ海域の謎」には、多くの嘘、意図的な歪曲、事実誤認、誇張などがあることを突き止めている。

消失事件の真相

クシュらの先行研究によれば、バミューダ・トライアングルで起きているとされる事件の多くは、悪天候や機械トラブル、人為的なミスなどが原因として起きており、中には作家たちによる創作や誇張などによって、謎の事件としてデッチ上げられていた場合もあったという。

たとえば1978年2月22日のケースでは、実際の天気は快晴などではなく嵐だった。その日の朝にはアメリカ東部で雪が降り、風速は11~15メートル、最大瞬間風速は20メートル、波の高さは3メートルという状況だった。

またポール・スマイス中佐とリチャード・レオナルド中尉が乗っていた飛行機は、離陸後すぐに問題が起きたと無線連絡している。高度も失い、その後は連絡も取れなくなっていた。

捜索はすぐに行われたものの、海に墜落した衝撃で大破していたと考えられたため、悪天候の海では残骸は見つからなかった。事故後の調査では、墜落機は過去にも故障トラブルを起こしていたことが判明している。

1980年1月10日に起きたケースは、機体のトラブルによる低酸素状態が引き起こした事故だと考えられている。連邦航空局の調査によれば、事故機は二つ前のフライトで、勝手に高度が上がったり下がったりするコントロールの問題を起こしたため、しばらくは地上で飛行できずにいたという。

また事故当日は途中で悪天候に遭遇したことから、それを避けるために飛行経路を変更するという無線連絡も入っていた。そうした中、事故機は異常な上昇と機体トラブルによる低酸素状態を引き起こし、乗員たちは意識を喪失。しばらくは自動操縦装置の管理下で飛行を続けたものの、その後、墜落したと考えられている。

メアリー・セレスト号事件の真相

次に1872年のメアリー・セレスト号事件。この事件はバミューダ海域で起きたとされるが、実際の船の航路はニューヨークからイタリアのジェノヴァへ向かうもので、バミューダ海域などカスりもしない。

同船が発見されたのは北緯38度20分、西経17度15分の位置にある大西洋上であり、バミューダ海域からは3000キロ以上も離れている。

では、有名な次の話はどうだろうか。

まだ温かさが残る飲みかけのコーヒーやパン、バター、皿の上にはベーコンとゆで卵が今にも食べようとしていたかのように盛られていた。

これは事件を謎めいたものにする重要な要素だ。ところがこの話も事実とは違った。実際にはこのような描写は記録になかった

つまりこの有名なシーンは、作家たちによる作り話だったのだこの事件で本当と言えるのは、発見時に乗員の姿がなかった、という点のみ。

ただし乗員だけでなく、救命ボートも一緒に消えていたため、船は遺棄されたということになる。遺棄された理由については、嵐に遭遇説、船員の暴動説、海賊襲撃説のほか、積み荷のアルコールが気化して爆発するかもしれないという騒ぎがあり、乗員がパニックになって遺棄したという説など、さまざまである。

いずれにせよ、乗員は救命ボードに乗ったものの、その後、遭難して海中に沈んでしまったと考えられている。

エレン・オースティン号の真相

1881年のエレン・オースティン号の事件は、クシュが『ニューヨーク・タイムズ』紙や『ロンドン・タイムズ』紙、および海難史事典、さらにはロイド船級協会の記録やニューファウンドランドの公立図書館に保存されている資料、同地の『イヴニング・テレグラム』や『ニューファウンドランダー』誌などを徹底的に調べてみたものの、この事件に関する記録は何一つ見つけられなかったという。

おそらく事件そのものが作家たちによる創作だと考えられる。そもそもこの事件を最初に紹介した作家のルパート・グールドは出典を何もあげていない。しかし、彼がこの事件について書いたときは全文で86語という短いものだった。乗り移った乗員の消失は1回だけである。

ところが、これが他の作家たちに引用、孫引きされていくと、話にどんどん尾ヒレがついていく。たとえば作家のヴィンセント・ガディスがこの話をグールドの本から引用した際には、全文で188語に増え、元の本には書かれていない小話が創作されている。

その後、ガディスの本を超常現象研究家のアイヴァン・サンダーソンが引用したときには、全文で417語に増え、船員が短い航海日誌をつけていたという話や2回目の消失事件が新たに創作された。

こうした創作は他のケースでも見られる。1866年のロッタ号事件、1868年のヴィエゴ号事件、1884年のミラモン号事件、1969年のビル・ヴェリティ事件、1979年のチェロキー・アロー号事件などがそうだ。

なかでも1969年の事件では、ヨットに乗って消失したとされていたビル・ヴェリティ本人と、この事件を調査していたクシュが電話で直接会話までしている。彼は消えていなかったのだ。

バミューダ海域で海難事故は多発しているのか?

このようにバミューダ海域で起きたとされる事件は、創作や悪天候、機械トラブルなどが原因のものが多い。もちろん中には少数ながら原因がよくわかっていない事件はある。

けれども、これはバミューダ海域に限ったことではなく、他の海域の遭難事故でも普通に起きることだ。天候が悪い場合など、手がかりを残さずに海に沈んでしまうということも起こりえる。

そもそもバミューダ海域では海難事故はあっても、それが多発している事実はないという指摘もある。1992年にイギリス・チャンネル4の番組に出演したアメリカ地質調査所(USGS)のビル・ディロンによれば、同番組のプロデューサー、ジョン・シモンズがイギリスの大手保険マーケット、ロイズに取材したところ、バミューダ海域で多くの船が沈められている事実はないとの回答を得たという。

アメリカ沿岸警備隊の報告でも、ロイズでは同海域を通過する船に対し、高い保険料を設定していないことが指摘されている。

「バミューダ・トライアングル」についてのまとめ

バミューダ・トライアングルについては、クシュが次のようにまとめている。

多くの事件は、発生した時点では少しも不思議とは思われておらず、何年も何十年も後に、バミューダ海域の材料を集めていた研究家が、それに言及してはじめて怪事件となっている。
流布している「伝説」とは裏腹に、事件発生時の天気は大抵の場合悪かった。かなりの事件では、よく知られているハリケーンが犯人である。
多くの事件が、夕方あるいは夜間に起こっていて、翌朝までは捜索隊が目で確かめることを困難にしている。その間に海は、あったかもしれない残骸その他を、散逸させてしまうことが十分にできた。
この事件について書いている作家の多くは、以前の作家たちが書いたものを自己流に踏襲しているため、間違いはそのまま温存され、大げさな尾ひれがついてくる。
相当数の事件で、作家たちは消失を解明するはずの明白なデータを故意に隠している。

バミューダ・トライアングルの謎は、悪天候や機械トラブル、人為的なミスなどの原因に、作家の創作や隠蔽が加わり、大きく成長していったと言えるかもしれない。

ただし、ここで注意しておかなければならないのは、バミューダ・トライアングルで起きたすべての事故が、何かひとつの原因で説明できるわけではないということだ。

とくに昨今もてはやされている「メタンハイドレート説」などには、そうした注意が必要である。大事なのは科学的に見えるようなもので全てを説明することではなく、そもそも主張されているような事件や事故が本当に起きているのか、というところから確認することだ。

最後はそうした万能説に頼りがちな我々に、クシュが残した言葉があるので紹介しておきたい。バミューダ・トライアングルのミステリーに限らない至言である。

このミステリーを解く仮説は存在しない。三角海域におけるあらゆる消失事件の共通の答えを見出そうとするのは、まるで、アリゾナ州で起こったあらゆる自動車事故の原因を追究しようとするようなものである。いたずらに万能薬的な仮説を求めるのをやめ、 個々の事件を独自に調査すれば、謎は自ずから解けはじめるのである。

『魔の三角海域―その伝説の謎を解く―』より

【参考資料】

  • Charles Berlitz『The Bermuda Triangle』(Grafton; New Edition, 1977)
  • チャールズ・バーリッツ『謎のバミューダ海域 完全版』(徳間書店、1997年)
  • ローレンス・D・クシュ『魔の三角海域―その伝説の謎を解く―』(角川書店、1975年)
  • Michael R. Dennett「Bermuda Triangle, 1981 Model」『Skeptical Inquirer』(Vol.4 No.1 Fall 1981)
  • マーチン・エボン 編『バミューダ海域はブラック・ホールか』(二見書房、1975年)
  • Terence Hines『Pseudoscience and the Paranormal』(Prometheus Books, 2003)
  • Rupert T. Gould『The Stargazer Talks』(Geoffrey Bles, 1943)
  • Vincent Gaddis『Invisible Horizons』(Chilton, 1965)
  • Ivan T. Sanderson『Invisible Residents』(The World Publishing, 1970)
  • David Group『The Evidence for The Bermuda Triangle』(The Aquarian Press, 1984)
  • 「新都市伝説~超常現象を解明せよ!~ バミューダ・トライアングル」(ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル)
  • USGS「Gas Hydrate at the USGS, Bermuda Triangle」(http://woodshole.er.usgs.gov/project-pages/hydrates/bermuda.html)
  • Naval History and Heritage Command「The Bermuda Triangle」(http://www.history.navy.mil/faqs/faq8-1.htm)
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