空飛ぶ円盤について記された「FBIのUFO文書」

伝説

「3機の空飛ぶ円盤がアメリカのニューメキシコ州で回収された」。この衝撃的な内容を記したFBIの機密文書が新たに発見され、大きな注目を集めている。

問題の文書は、1950年3月22日付けでFBI捜査官のガイ・ホッテルという人物が記したものである。

ガイ・ホッテル

ガイ・ホッテル

彼はニューメキシコ州に墜落した空飛ぶ円盤についての情報を詳しくまとめている。そこには人間型の宇宙人3体についての情報も記されており、かなり衝撃的だ。

文書は当時のFBI長官だったエドガー・フーバーへ送られている。内容は翻訳すると次のようになる。

以下の情報がSA■■■■■に提供された。

空軍の調査官によれば、3機のいわゆる空飛ぶ円盤がニューメキシコ州で回収された。それらは中央が盛り上がった円盤型で、直径はおよそ50フィート(15 メートル)だった。それぞれに人間型で身長が3フィート(90センチ)の遺体が3体あった。遺体はきめ細かいメタリックな服を着ていた。それぞれの遺体 は、高速で飛行するパイロットのブラックアウトスーツと同じように、包帯が巻かれていた。

情報提供者Mr.■■■■■によると、円盤がニューメキシコ州で見つかったのは、この地域に政府によって強力なレーダーが設置されており、レーダーが円盤のコントロール機器に影響を与えたためだと考えられているとのことである。

上記に関して、SA■■■■■によるさらなる評価は行われなかった。

この文書はFBIによって正式に公開されたことが確認されており、ニセ文書である可能性は低い。空飛ぶ円盤実在の決定的証拠といえるのではないだろうか。(以下、謎解きに続く)

謎解き

通称「ホッテル・メモ(文書)」は、確かに本物。ただし機密文書ではなかった。さらにいえば近年新たに発見された文書でもない。もともとは1977年にアメリカのUFO研究家ブルース・マカビーが、情報公開制度(FOIA)を利用して得た約1600通の文書の中に含まれていた文書だった。

FBI捜査官ガイ・ホッテルによる実際の報告書

FBI捜査官ガイ・ホッテルによる実際の報告書

1980年代から90年代にかけては、UFOを扱った本や研究誌にたびたび登場しており、新情報どころかむしろ古いネタに属す。

そんな古いネタが、なぜ近年注目されるようになったのか。それはFBIの情報公開サイトが2011年にリニューアルされたことにより、それまで埋もれていたファイルが個別のファイルとしてアクセスしやすくなったことが原因だった。

つまり、もともと存在していたものの、それまでと違い目立つところに出てきたため、存在を知らなかった人たちが新たな機密文書が発見されたと勘違いしてしまったということ。さらにニュースでも取り上げられ、勘違いに拍車がかかってしまった。

2013年にもFBIがホッテル文書について、ロズウェル事件とは関係ないという注釈を新たに加えたことにより再びニュースになっている。

ロズウェル事件とは、1947年にアメリカのニューメキシコ州で起きたとされる空飛ぶ円盤の墜落回収事件。UFO事件の中では最も有名なもの。

アズテック事件の別バージョンか

先にも述べたように、ホッテル文書は機密文書ではない。もともとこの文書に記されている内容についてFBIが調査したことはなく、ただ単に空軍の調査官から聞いたという話をメモした2次情報だった。

では、空軍の調査官の話は本当なのだろうか。ここで重要になってくるのは、記されている事件の情報源。空軍側のレポートを追っていくと、調査官の話の情報源として有力視されるのは、アメリカの石油業者サイラス・ニュートンとその仲間たち。

彼らは一時期、円盤墜落事件として有名になったアズテック事件を企てるなど、何件もの詐欺事件を起こした詐欺師でもあった。

アズテック事件とは、ニューメキシコ州のアズテックに4機のUFOが墜落し、機体と乗っていた宇宙人が政府や軍によって回収されたとする事件。目撃者は過去にUFOのデッチ上げ記事を書いた者しかおらず、物的証拠もなく、内容もころころ変遷、詐欺師も深く関わっていることから信憑性はきわめて低いとされる。

アズテック事件は、ホッテル文書に記されている日付けの2週間前に出てきた話で、内容も類似点がある。また、もともとアズテック事件自体が、その内容をころころ変える伝言ゲームのようなものだった。

そのためホッテル文書に記されている内容も、当時流布されていたアズテック事件の別バージョンのひとつだとする見方がUFO研究家たちの間では有力視されている。

ホッテル文書を世に出すきっかけをつくった前出のブルース・マカビーも、この文書が本物のFBI文書であることを認める一方で、報告されている中身については「デタラメ」だと斬り捨てている。

昔から人気の高いUFO話

確かに、中身は空軍やFBIが調査して認めたものではなく、情報提供者からの話を聞いただけのもので、肝心の情報源も怪しい。とはいえ当時、アメリカで流布されていた円盤墜落話の様子は垣間見ることができる。

アズテック事件の他にも、当時は「2機の空飛ぶ円盤が墜落。宇宙船には90センチほどの宇宙人が何人か乗っていて、奇妙な服装をしていた」という話がよく噂されていた。

UFOの話は人気だったのである。これは現在でも変わらないかもしれない。現在までのところ、FBIが公開している約6700通の文書のうち、どの事件の文書よりもアクセス数が多いのが今回のホッテル文書のファイルだそうだ。

これまでに100万人が閲覧しているという。今も昔も、UFO事件に興味を持つ人は多いようである。

【参考資料】

  • CNN「空飛ぶ円盤の存在記したFBI資料に注目、ロズウェルとの関係は?」(http://www.cnn.co.jp/fringe/35030171.html)
  • FBI「Guy Hottel」(http://vault.fbi.gov/hottel_guy)
  • FBI「UFOs and the Guy Hottel Memo」(http://www.fbi.gov/news/stories/2013/march/ufos-and-the-guy-hottel-memo/ufos-and-the-guy-hottel-memo)
  • Lee Speigel「FBI’s UFO Doc From ‘The Vault’ Most Likely a Hoax」(http://www.aolnews.com/2011/04/13/fbis-vault-website-ufo-doc-most-likely-a-hoax/)
  • ASIOS『謎解き超常現象Ⅲ』(彩図社、2012年)
  • Bruce Maccabee『Ufo FBI Connection: The Secret History of the Government’s Cover-Up』(Llewellyn Pubns, 2000)
  • Donald Keyhoe『Flying saucers are real』(CreateSpace, 2011)
  • William S. Steinman, Wendelle C. Stevens『UFO CRASH AT AZTEC』(UFO Photo Archives, 1987)
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