超能力捜査官


伝説 海外には、その驚異の力によって未解決事件を解決へと導く、超能力者たちがいる。彼らは、「Psychic Investigator」―超能力捜査官―と呼ばれている。

日本の閉鎖的な警察とは違い、海外の警察では積極的に彼らに協力を依頼し、難事件を次々に解決している。その解決率は驚異の80パーセント!

超能力への理解が進んでいる欧米では、超能力者を捜査に使うことは、もはや
「常識」なのである。

 


 

謎解き 最近、テレビの特番でもシリーズ化され、話題となっている超能力捜査官。テレビでは「伝説」で書いたようなことが宣伝されており、信じてしまっている人も多い。

しかし彼らの実態は、「伝説」で言われていることとは大きく異なる。
たとえば、アメリカの警察には「超能力捜査官」などという役職はない。「FBI超能力捜査官」という役職もない。こういった肩書きは、日本のテレビ局が勝手に付けているだけなのだ。(※注1)

このほかにも、テレビで宣伝されていることと違うことはたくさんある。
以下では日本のテレビでは決して触れられることのない、超能力捜査の実態をご紹介しよう。

【※注1】 ちなみにFBIに所属する者は法律で国外活動が禁止されている。つまり実在しない「FBI超能力捜査官」などという肩書きをつけてさらに日本のバラエティ番組に出演している時点で嘘が確定しているのである。視聴者は二重に騙されているのだ。


アメリカでのアンケート結果

超能力捜査の実態について、ジェーン・A・スウェットとアラバマ州立アセンズ大学のマーク・W・デュラム教授が行った調査がある。
デュラム教授は、アメリカで人口の多い上位50都市を選び、各都市の警察署に宛てて超能力捜査に関するアンケート調査を実施した。その結果、首都ワシントンとフィラデルフィアを除く48都市から回答を得た。

質問と回答は次のとおりである。


質問1 「貴方の警察署において、今まで犯罪捜査で超能力者を使用したことがあるか、または今現在、使っていますか?」
回答 はい = 17署    いいえ = 31署
質問2 「どんな種類の犯罪捜査に使いましたか?」
回答 殺人事件 = 15署   行方不明 = 10署   
誘拐、強盗、暗殺 = 各1署
質問3 「通常のルートから得られる情報と、超能力者から得られる
情報とを区別していますか?」
回答 はい = 7署   いいえ = 33署    未回答 = 8署
質問4(a) 「もし貴方の警察署が超能力者を使用したなら、寄せられた
情報は、他の情報源よりも事件の解決に役にたちましたか?」
回答 はい = 0署   いいえ = 26署    未回答 = 20署
質問4(b) 「それはどういう情報で、どのように使用されましたか?」
回答 いいえと答えた26署のうち、17署がコメントを寄せた。※ここで全部は紹介できないので、リンク先を参照してほしい。(下のほうにある)
質問5 「超能力者からの情報は、他の通常ルートから寄せられる
情報よりも、有用だと個人的に思いますか?」
回答 はい = 0    いいえ = 39    未回答 = 7
そのほか、「時々」と「超能力者が誰かによる」という答えが
1つずつ。


質問1の回答でわかったのは、大規模都市にある警察で超能力者を使ったことがあるのは、約35パーセントしかないということであった。
またデュラム教授らが、同じ調査を中規模の都市にある警察に行った結果では、超能力者を使ったことがあるのは30パーセント以下。小規模の都市にある警察では、20パーセント以下だった。

このほか質問4(a)と質問5の回答では、Yesと答えたのは0だった。つまり、テレビで宣伝されているのとは大きく異なり、実際には超能力者は事件解決の役に立っていないのである。


続いて紹介するのは、93年に230人の警察官に対して行われた無記名アンケートの結果である。(「Police Use of Psychics Results of a 1993 Questionnaire」 Walstadによる)


質問1 「個人的に警察の捜査に超能力者を使いますか?」
回答 はい = 35.75%    いいえ = 62.75%    もしかしたら = 1.5%
質問2 「現在あなたの組織は捜査で超能力者を使っていますか?」
回答 はい = 5.5%   いいえ = 69.5%   知らない = 25%
質問3 「過去に、あなたの組織は捜査で超能力者を使ったことが
ありますか?」
回答 はい = 23%   いいえ = 40.5%   知らない = 36.5%
質問4 「あなたの組織は何回超能力者を使いましたか? 
(確証がないのなら見積りで)」
回答 1回 = 30人   2回 = 18人   3回 = 8人   4回 = 3人
5回 = 4人
質問5 「超能力者を使った事件のタイプは?」
回答 殺人 = 52%   行方不明 = 40.5%   誘拐 = 2.5%
その他 = 5%
質問6 「超能力者は、どのようにして捜査に関係しましたか?」
回答 警官の依頼 = 41%   家族の依頼 = 20%   自己志願 = 34%
知らない = 5%
質問7 事件を解決することにおいて、有効な情報が超能力者から与えられましたか?
回答 はい = 13.5%   いいえ = 50%   たぶん = 36.5%
質問8 事件は超能力者の助力なしでも解決されたでしょうか?
回答 はい = 51%   いいえ = 0%   わからない = 49%


このアンケートでも、超能力者を使ったことがあるのは、3割程度だった。
この結果を見れば、超能力者を捜査に使うことが「常識」などではないことがよくわかるだろう。

質問7の「有効な情報が与えられたか」という質問に対する回答では、「はい」と答えた警察官は9人(13%)いた。当たったと思える情報の内容には、「遺体が見つかった場所」や、「車のナンバー」などがあった。

普通に考えれば、事件解決のためのスゴイ情報のように思える。
しかし、続く質問8の「超能力者の助力なしでも解決されたか」という質問では、
「いいえ」と答えたのは1人もいなかった。「わからない」という回答は49%あるが、
本当に事件解決の"決定的な証拠"があれば、こんな曖昧な回答はしないだろう。

ではなぜ、重要な証拠に思える「遺体が見つかった場所」や、「車のナンバー」などが、事件解決の決定的証拠にならなかったのか?

実は、自称超能力者の透視内容というのは非常に曖昧なのだ。
たとえば、『ローリー・マッコーリー』を見てほしい。彼女も「遺体が見つかった場所」を言い当てているが、透視内容は「水源の近く」という、とても曖昧なものだった。
「水源の近く」→水に関係したものとしては、海、湖、池、ダム、噴水、貯水タンク、水道局、浄水場など、こじつけられるものはたくさんある。

また車のナンバーにしても、すべての番号を当てた超能力者などいない。
当たっているとされているのは、「数字の5が見えます」というような非常に曖昧な情報なのだ。もちろん「車のナンバー」以外にも、無数のものに後からこじつけることができる。

こういった解釈の余地を広げるために、どのようにも取れる曖昧さを備えた表現上の特徴は「マルティプル・アウト」と呼ばれる。そして、自称超能力者が言うような「曖昧な手がかり」を、後から判明した事実に合わせて「当たっていた」と、こじつけるテクニックは「レトロフィッティング」と呼ばれる。

ドロシー・アリソン(※注2)などは、これらのテクニックを非常に上手く使っていた。

彼女は、アトランタで起きた連続幼児殺人事件の犯人を解決したのは自分だと主張していたが、アトランタ警視庁のガンドラック警部補によれば、アリソンは事件の容疑者の名前として全部で42の異なる名前を挙げていた。そして事件が解決した"後"になって、42の異なる名前(ジョンとかトムとか)の中から、当たりをこじつけたのだ。

こういったテクニックについて、超常現象調査の専門家であるジョー・ニッケルは、次のように言っている。

「例えるなら、矢が射られたあとに、矢の周りに標的の中心円を描いているようなものだ」

汚いやり方だが、自称超能力者たちが使っているテクニックとは、こういうものなのである。

【※注2】 ドロシー・アリソンは、全米で最も有名な超能力探偵。1999年12月1日に74歳で亡くなった。もし存命であれば、日本のテレビで「全米No.1」として間違いなく紹介されたであろう人物。
5000件の事件を解決したと豪語していたが、その実態は「マルティプル・アウト」に「レトロフィッティング」、「ショットガンニング」、そして「ホット・リーディング」を駆使したイカサマだった。


イギリスでの実態と警察のコメント

超能力捜査が最も盛んだというアメリカでの実態については上で書いたとおりだが他の国ではどうだろうか。

続いて紹介するのは、イギリスでの超能力捜査の実態だ。

ロンドン警視庁のエドワード・エリドンによれば、ロンドン警視庁は超能力者を一切使っておらず、他の警察署でも超能力者に協力を求めることは一切ないという。
また、イギリスにも超能力捜査官などという役職はなく、これまでに超能力者の協力によって事件が解決したこともなければ、有力な証拠を提供したこともないという。

どうやらイギリスの警察は、自称超能力者たちの無能ぶりをしっかり見抜いているようだ。

とはいえ、アメリカの警察も「レトロフィッティング」に気付かないトホホな警察ばかりではない。たとえばロサンゼルス警察のダン・クックは、超能力捜査に関して次のようにコメントしている。

「ロサンゼルス警察では超能力者は使用しませんが、もし彼らが電話で無料の情報を提供するなら、礼儀正しく聞くつもりです。しかし、私たちは提供された情報を真剣に受け止めません。(真に受けるだけ)時間の無駄だからです」

シカゴ警察では、役に立たない自称超能力者をなぜ使うのか? というもっともな疑問に対して、次のようにコメントしている。

「(超能力者を)「使う」という表現は正しくない。行方不明者の家族などから依頼を受けたという超能力者が我々に接触してきた場合に、我々は、その意見を「拝聴する」に過ぎない。通常の捜査が行き詰った際には、我々はいかなる可能性についてもオープンに接し、丁重に扱う。だが、(超能力者の)意見に従って捜査をしても、その成功率はゼロということなのだ」


ジョー・ニッケルによれば、自称超能力者たちは役立たずなだけでなく、捜査に関わることは警察にとって障害になると述べている。
ニッケルは、超能力捜査の実態について書いた『How Psychic Sleuths Waste Police Resources』(超能力探偵はいかに警察資源を浪費したか)において、20の事例を挙げたうえで次のように書いている。

「これらの例が示すように、超能力者は警察の手助けと言うよりは、むしろ障害である。事実、『National Center for Missing and Exploited Children(法務省の下部組織)』は、超能力を使って行方不明の子どもが見つかったケースは、ただの一例もないと述べている。同じことが犯罪捜査についても事実なのである」


ジョー・マクモニーグルが大阪で行方不明になった吉川友梨ちゃんの透視を行ったことがあったが、結局見つけたのはゴミで、それを警察に提出したことがあった。
これなどは、ニッケルが指摘した「警察の手助けと言うより、むしろ障害」の実例と言えるだろう。(結局このゴミが何の手がかりにもならなかったのは言うまでもない)

あと日本に出稼ぎに来ている自称超能力者の中には、行方不明者の透視を成功させる者もいるが、それらは全て「生き別れ」「家出」など事件性のないものだ。
こういった人探しは、すでに日テレのバラ珍で何年も前から行われていた。もちろん超能力など使わずに。

超能力者の「ドリームチーム」だというなら、超能力など必要ないケースばかり成功させるのではなく、超能力が無くては解決が難しそうな、未解決事件を解決してほしいものだ。

ただし、ここでいう"解決"とは以下のようなものは除いての話である。

  • 自称超能力者が事件の最初の透視を行うが、お約束どおり解決しない。
    しかし放送時に、ちゃっかり募集している"視聴者の情報によって"事件が解決した場合。
  • 「ナンシー・マイヤー」のケースのように、自称超能力者の透視よりも実は警察の犯人特定のほうが早かった場合。
  • 「マルティプル・アウト」、「レトロフィッティング」、「ホット・リーディング」などのイカサマ・テクニックを使っていた場合。

これらのケースを全て除外した上で、“超能力者がいなかったら解決しなかった”と思えるほど、「決定的な証拠」を出して事件を解決したケースは、今のところ一件しか知られていない。(※注3)

【※注3】 イギリスの超常現象研究家であるコリン・ウィルソンの著書
『サイキック』(三笠書房)によれば、カルカッタ大学の博士でもあったマクシミリアン・ランズネルという超能力者が、未解決事件を解決したことが過去に一度だけ(1928年に)あったという。
ウィルソン曰く、「ランズネルによるブーハ事件の解決を唯一の例外として、透視者が殺人事件―もしくは重要な犯罪事件―を解決した例は実際にはひとつも存在していない」とのこと。(ただし、このブーハ事件でランズネルが当てた犯人というのは、「事件の第一発見者&被害者の息子」で、同じくランズネルが当てた凶器(ライフル銃)の場所も「自宅裏の藪の中」だった。また、懐疑論者による検証も行われてない様子)


やはり無能だった

最後に、ロサンゼルス警察の行動科学課が、超能力でどの程度犯罪内容を見抜くことができるかを調べるために、コントロール実験を行ったことがあるので紹介しておこう。

実験は、実際に犯罪に関係している髪の毛やキーホルダーなどの遺留品を超能力者へ渡し、その遺留品から犯罪の内容を読みとってもらう、という方法で行われた。

実験に参加したのはプロの超能力探偵8人とアマチュアの超能力者4人の計12人。
4件の犯罪事件(そのうち2件は解決済みで2件は未解決)の遺留品を超能力者に見せ、そこから事件に関係した21の項目について当ててもらう、という実験だった。

4つの事件とも、最もよく当たったのは被害者や加害者の性別だった。だが、性別が当たる確率は二分の一である。
それでも、性別が当てられたのは最高でも9人どまりで、中には1人しか当てられなかったトホホなケースもあった。(ちなみに9人が性別を当てたケースでは、被害者の持ち物として見せられたのは、女性の赤い財布だった)

結局、性別以外では誰も大した成績をあげられず、偶然の一致以上の成績を
あげた者は1人もいなかった。

この実験は追試も行われた。追試実験では、11人の大学生と12人の捜査員を対照群として、超能力者(12人)がこの対照群を越えられるかどうかが試された。
今回の実験でも、4件の犯罪事件(そのうち2件は解決済みで2件は未解決)が選ばれ、それぞれのグループから得られた情報を、全部で20のカテゴリーに分けて統計処理された。

超能力者のグループと他のグループの違いで目立ったのは、超能力者のグループが遺留品について語る分量が、他の2グループに比べて非常に多いということだった。文章量にすると10倍も違い、語る話の内容もドラマチックに脚色されていた。

しかし、情報量が10倍もある分だけよく当たったかというと、そんなことはなかった。
被害者に関する情報で一番よく当てたのは、大学生のグループだった。4つの事件を合わせて、全部で27項目が的中。超能力者のグループは26項目、捜査官のグループは18項目だった。

容疑者に関する情報について一番よく当たっていたのは、今回も大学生だった。
全部で12項目が的中。捜査官のグループは9項目。超能力者のグループは8項目で、3グループ中最低の成績だった。

結果的に容疑者や被害者の氏名や住所など、犯罪捜査にとって重要な情報を当てられた者は誰もおらず、どの的中率も偶然による期待値を超えるものはなかった。


自称超能力者の透視能力を検証する気など全くないテレビの中では、「伝説」が事実であるかのように宣伝されている。
しかし現実の世界では、自称超能力者たちが犯罪捜査に関して無能で役立たずだということは、とっくの昔に判明していたことなのである。


【参考資料】