金縛り


伝説 ある夜のこと、ふと眠りから覚めるとノドを絞めつけられているような感覚がする。胸の上にも圧迫感があり視線を移すと、そこには青白い顔をした女性がこちらをジッと見つめ首を絞めようとしている。耳元では誰かがすすり泣く声も聞こえる。

体を動かそうとしてもまったく動かない。助けを求めようとしても声も出ない。
「金縛り」である。

金縛りの原因は、成仏できていない地縛霊などがおこす霊障である。強力なものになると呪いをかけられたり、取り憑かれたりすることもある。こういったことから身を守るためには、霊能力のある者にお祓いをしてもらわなければならない。

 


 

謎解き 「金縛り」とは、医学的には「睡眠マヒ」と呼ばれる状態のことをいう。心霊現象ではない。以下でその仕組みを説明しよう。


金縛りの仕組み

人は眠っている間、「レム睡眠」と呼ばれる浅い眠りと、「ノンレム睡眠」という深い眠りを交互に繰り返しながら眠っている。

レム睡眠の間、脳は比較的活発に働いていて、夢を見るのもこのときだ。しかしもし夢を見ているときに体が自由に動くようになっていると、動き回ってしまって危険である。そのため通常は、レム睡眠時に脳と体は連動しないようにシャットダウンされており、体の筋肉もゆるんでほとんど動かないようになっている。

ところが、このレム睡眠の途中で意識だけが目覚めてしまうことがある。体はまだ眠っているので動かせない。これが俗に「金縛り」と呼ばれる状態だ。医学的には、上でも書いたとおり「睡眠マヒ」と呼ばれている。わかりやすく言えば「脳は起きているのに体は眠っている」状態のことだ。

この状態のときは幻覚や幻聴を起こしやすい。福島大学の福田一彦教授によって行われた実験でも、睡眠マヒの時は幻覚や幻聴が起きることが確認さられている。またレム睡眠時は心拍数や呼吸が乱れるため、胸の圧迫感を感じる人も多い。

ちなみに金縛りのときに見る幻覚は国や文化によって違いがある。18世紀のイギリスでは、睡眠時に身動きできない女性を襲う「インキュバス」と男性を襲う「サッキュバス」という悪魔(夢魔/淫魔)がいると信じられていた。

カナダのニューファンドランド島ではオールド・ハグという魔女が眠っている人の胸に座るとされている。一方アフリカのザンジバルでは、ポポバワという空を飛ぶ一つ目の夢魔の仕業になり、アメリカでは宇宙人によるアブダクション(誘拐)になる。
一口に金縛りといっても国や文化によって様々なタイプがあって興味深い。



金縛りは怖くない

金縛りに恐怖心を抱かないようするには、それが霊障や祟りではなく「睡眠マヒ」と呼ばれる単なる生理現象だという事実を知ることが一番である。

たまたまレム睡眠中に意識だけが覚めるため体が動かないことに気付くが、レム睡眠中は誰でもほとんど体は動かせないのであり、眠っている状態の金縛りは毎日、世界中で、みんなが体験していることなのである。

ただし通常の金縛りの場合、生活環境が変わったり、ストレスや睡眠のリズムがおかしくなることが原因として多い。この場合は規則的で深い眠りを取り戻すようにし、ストレスをできるだけ貯めないようにすることで金縛りを防ぐことができる。

しかしそれでも金縛りになり、よく眠ったのに日中強い眠気もあるという人は「ナルコレプシー」(過眠症)という病気の可能性がある。この場合は精神神経科や神経内科での相談をお勧めする。

(記事公開日:2005年6月24日)