江原啓之氏が認めた霊能者「ネラ・ジョーンズ」

伝説

霊的な力を使って未解決事件を解決に導く、ネラ・ジョーンズという霊能者がイギリスにいた。彼女は、日本を代表するスピリチュアル・カウンセラーとして名高い、あの江原啓之氏が本物と認めた霊能者でもある。

ネラ・ジョーンズ

ヒーリング中のネラ・ジョーンズ
(出典:Nella Jones with Shirley Davenport『Ghost of a Chance』)

江原氏によれば、ネラは50件以上の難事件を解決に導いてきた非常に優秀な霊能者だという。

彼女が手がけた事件はいろいろあるが、中でもその名声を不動のものにしたのは、イギリス中を震撼させた「ヨークシャーの切り裂き魔事件」である。これは1975年から1980年にかけて、13人の女性が犠牲となったイギリスの犯罪史上に残る凶悪事件だ。

この事件では長年に渡り、多数の被害者を出しながらも警察の捜査は難航。一時は迷宮入りもささやかれた。しかし、そんな難事件を解決に導いたのがネラだったのである。彼女は警察に協力を申し出ると、自らの霊能力を駆使して霊視を開始。

犯人はトラックの運転手よ。Cで始まる名前の会社に勤めている。犯人の名前はピーター。ブラッドフォードに住んでいて、女装の趣味を持つ男性。

ネラはこの他に犯人が住む家の番地までも霊視。警察はこれらの情報を手がかりに捜査を行った結果、5年もの間、野放しになっていた切り裂き魔事件の犯人、ピーター・サトクリフをついに逮捕することができた。

その後の調べによって、ネラの霊視はほぼ全て的中していたことが判明している。やはり江原啓之氏が認めた霊能者。その実力は本物だったのである。(以下、謎解きに続く)

謎解き

ヨークシャーの切り裂き魔事件は、イギリスの犯罪史に残る凶悪かつ難航した事件であるため、その事件を解決に導いたとなれば確かにすごい。

ところが詳しく調べてみると、どうも真相は違うようである。そもそもこの事件は1981年1月2日に、2人の警官が夜の街をパトロール中に急展開を見せている。犯人のピーター・サトクリフを別件で偶然、事情聴取したことから解決の糸口をつかんだのだ。

普通に考えれば、そこにネラの出る幕はないように思える。本当に彼女は事件解決の役に立ったのだろうか。以下で検証していきたい。

検証開始

順を追って個別に検証する。確実な証拠がない場合などでも、霊的な力を仮定せずに同様の霊視結果を得ることは可能だったか検討を行う。

犯人はトラックの運転手

確かにピーター・サトクリフの職業はトラック運転手だった。しかしこの情報について警察は初期の段階から、最初に殺害されたウィルマ・マッキャン事件の犯人の職業として、トラック運転手の可能性があることを発表していた。

Cで始まる名前の会社に勤めている

これが“当たり”として紹介されるときは「Clark Transport」という社名が出される。ところが、これも発表済みの情報だった。犯人のサトクリフは1977年に6件目の事件を起こした際、殺害現場に重要な手がかりとなる新券の5ポンド紙幣を残していた。

このお金は事件の2日前に会社の給料として受け取っていたものである。紙幣には「AW51 121565」という番号が記されていたため、警察はそこからミッドランド銀行のシップリー支店とビングリー支店に送られた現金であることを突き止めた。

さらに、その現金を給料として支給した可能性のある会社を、わずか3社にまで絞り込んでいた。そこには「Clark Transport」社も含まれていた。 つまり、もともと当たる確率は3分の1だったというわけである。

犯人の名前は「ピーター」

イギリスでは「ピーター」という名前は珍しくない。一方の比較的珍しい名前である「サトクリフ」の方ではなく、「ピーター」というよくある名前の方を当てたということは、単純にまぐれだった可能性も考えられる。

犯人が住んでいるのはブラッドフォード

先述のとおり警察は「5ポンド紙幣」という重要な手がかりを入手していた。紙幣の送金先の支店があるシップリーとビングリーは共にウェスト・ヨークシャー州にあり、同州の都市ブラッドフォードに隣接する町である。

そこで警察は、この3つの町とその周辺地域を重点的に捜査し、最終的に犯人の居住エリアとして最も可能性が高いのは、ブラッドフォードか、その隣の都市であるリーズのどちらかだと絞り込んでいた。そして、こういった情報は発表されていた。

そのため、たとえば作家のデヴィッド・ヤロップのように、犯人の自宅と職場はブラッドフォードにあると推論して当てた者もいる。つまりブラッドフォードというのは、事前に予想がつく地名だったのである。

犯人が住んでいる自宅の番地を当てた

ネラが当てた番地というのは、たとえば「4-27-11」といった詳しいものではない。
ただの「6」という数字のみである。こうした数字を1つ挙げておくのは、「水が見えます」というキーワードを挙げるのと同じくらい汎用性が高いことが知られている。

つまり数字の場合、番地以外にも、電話番号、生年月日、車のナンバーなど、いろいろなものに当てはめることができるからだ。

ちなみにネラは、住所については「チャペル・ストリート」だと霊視していたものの、実際の住所は「ガーデン・レーン」であったため、霊視を外している。

犯人は女装の趣味を持つ

サトクリフに女装の趣味はなかった。

犯人の似顔絵とプロフィール

ネラは犯人像としてヒゲのない男性像を描いた。しかし実際のサトクリフは、非常に特徴的な濃いヒゲを生やしていた。これほどわかりやすい特徴があったにもかかわらず、彼女はそれを捉えることができなかった。

ピーター・サトクリフ

ピーター・サトクリフ

また他にも、「犯人は未婚。母親は10歳か11歳の頃に亡くなっている。父親は身体に障害を持っている」とも霊視していた。

このうち当たっていたのは、母親が亡くなっているという点だけである。しかし亡くなったのは少年時代ではなく、サトクリフが32歳のときだ。また父親は障害を持っておらず、サトクリフは既婚者だった。


Photo by 『週間 マーダー・ケースブック No.7』 (省心書房)

次の被害者は15歳か16歳の少年

著書の中でネラは、「1979年7月に次の被害者は15歳か16歳の少年だと霊視した」と書いている。

ところがその79年7月には事件は起きず、実際に11件目となる事件が起きたのは79年の9月で、その被害者となったのは、バーバラ・リーチという20歳の女性だった。

ネラ・ジョーンズの実験結果

さて以上のように、彼女が霊視で当てたというものは、すでに警察が発表している情報だったり、曖昧だったり、さらには事実誤認であることが明らかなものだったりと、特別な霊能力を考えなくてもよさそうなものばかりだった。

しかし、他の場ではどうだったのか。それがわかるテストがイギリスの番組で行われたことがあるので、最後はそれを紹介しておきたい。

番組のタイトルは1991年に放送された「James Randi: Psychic Investigator」。超常現象を調査しているジェイムズ・ランディがホストを務める検証番組である。

ネラは、この番組の「サイコメトリー&超能力捜査」を検証する回にゲストとして出演した。番組で検証のために用意されたのは、実際の殺人事件で使われた凶器を含む6つの道具類。この中からサイコメトリーを使って殺人事件の凶器を当てよう、というのだ。

番組でネラは3つの道具を選ぶものの、そのうち実際に凶器だったのは1つだけ。残り2つは新品で購入した無関係の道具だった。

しかも選んだ1つの凶器についても、サイコメトリーの際には事件と全く無関係のことを話していた。(さらに残り3つの道具の中にも凶器はあったにもかかわらず、それらを選ぶこともできなかった)

この様子は以下の動画で確認できる。英語がわからない方でも視聴できるように日本語字幕をつけておいた。日本ではなかなかお目にかかれない実験の様子をご覧いただきたい。

字幕が表示されない場合は、再生後に画面下のメニュー欄にある字幕ボタン(歯車の左)をクリック。スマホの場合は画面右下の字幕ボタンをクリック→「日本語」をチェック。
超常現象の検証:ネラ・ジョーンズ編

【参考資料】

  • Nella Jones with Shirley Davenport 『Ghost of a Chance』 (Macmillan)
  • Melvin Harris 『Sorry, You’ve been duped!』 (Weidenfeld & Nicolson)
  • 「江原啓之&嵐 現代人の悩みを救え!緊急生放送スペシャル!!~明日への扉~」(フジテレビ、2007年3月31日放送)
  • DeAGOSTINI 『週間 マーダー・ケースブック No.7』 (省心書房)
  • Noel O’Gara 「The Real Yorkshire Ripper」(http://www.yorkshireripper.co.uk/)
  • Michael Nicholson 『The Yorkshire Ripper』(Star)
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