イギリスNo.1サイキック「ジョー・パワー」

伝説

「死者の声を聞く男」と呼ばれる超能力者がいる。イギリスNo.1サイキックの呼び声が高い、ジョー・パワーである。

ジョー・パワー

ジョー・パワー

ジョーは超能力捜査のエキスパートだ。これまで数々の難事件を解決へと導いてきたが、なかでも輝かしいのは、1998年のリンゼイ・クワイ失踪事件と、2008年のシャノン・マシューズ誘拐事件を解決に導いたことである。

リンゼイ・クワイ失踪事件

リンゼイ・クワイ事件は、1998年12月、イギリスのサウスポートで起きた。この町に住む当時21歳のリンゼイは、クリスマスの日に夫と子どもたちを残して失踪。

夫のミッチェルの証言によれば、リンゼイはこの日の早朝、酒に酔って帰宅後、荷物をまとめて出て行ってしまったという。99年1月には、別の男と車に乗っているところを夫が目撃。警察はこれらの情報をもとに、失踪事件として扱うことになった。

リンゼイ・クワイ

リンゼイ・クワイ

ところがその当時、ジョー・パワーのもとへ一人の女性の霊が訪れる。リンゼイである。彼女はジョーに「私は殺されたの」と訴えた。そして「観覧車」「線路」「“マクドウェル”という看板」「トラクター」の映像を見せ、警察にこれらの情報を知らせるように頼んだ。

しかし警察に犯人扱いされることを恐れたジョーは、警察支援団体に勤める友人のフリーダ・ヴァレンタインに相談。彼女から警察へ行くべきだと勧められたジョーは意を決して警察へ出向き、事の次第を伝えた。

ところが、リンゼイは家出だと考えている警察はまったく耳を貸さない。そこでジョーは、自らこの事件を捜査するべきだと考え、現地のサウスポートへ向かう。すると現地では、「観覧車」「線路」「“マクドウェル”という看板」「トラクター」といったキーワードに合致する場所が次々と見つかる。それらはリンゼイの自宅から1.5キロ以内に存在し、彼女がそのどこかにいることは確かだった。

けれどもジョー一人ですべてを捜索することは難しい。そうこうするうちに事態は急変する。2000年6月、警察が夫のミッチェルを殺人容疑で逮捕したのだ。取り調べの結果、ミッチェルは妻の殺害を自供。生活費の使い込みをリンゼイに責められたため激怒し、首を絞めて殺害に至ったという。

遺体は自宅の風呂場で切断され、胴体は観覧車の近く、脚は線路の近くに埋められていたことがわかった。驚くべきことにジョーが見たビジョンと見事に一致している。これらは遺体の場所を示していたのだ。

その後、リンゼイの霊は、ジョーの夢に現れると、「ありがとう」と告げて去っていったという。彼女は安らかな眠りについたに違いない。

シャノン・マシューズ誘拐事件

もうひとつの事件は、シャノン・マシューズ誘拐事件である。これは2008年2月19日にイギリスのデューズバリーという町で起きた。当時9歳のシャノンは、学校から自宅へ帰る途中、突如行方がわからなくなった。

通報を受けた警察は、すぐに行方不明事件として捜査を始動。総勢300人もの捜査員を動員し、シャノンの行方を追った。しかし残念なことに彼女の手がかりはまったくつかめなかった。後にはイギリス中の警察犬の3分の2が投入されたものの、それでも手がかりはつかめない。

絶望的である。しかし、そんな状況の中、登場したのがジョー・パワーだった。彼は事件を追っていた『サンデー・ピープル』紙の記者サイモン・レノンの依頼を受け、シャノンの自宅を訪問。

出迎えた母カレンに導かれ、ジョーはさっそく透視を開始。すると、2分もしないうちに、「シャノンは生きている」「“マイケル”、“ポール“、”バトレイ”というキーワードが見える」、さらには「犯人は母親とボーイフレンドの知り合いで、シャノンが葬式で犯人のヒザの上に乗っている姿が見える」と告げた。

これらは一体、何を意味するのか。この透視から6日後の2008年3月14日、ジョーの透視を手がかりに、警察はバトレイという場所にある一人の人物の家を捜索した。その人物とはマイケル・ドノバン。彼は母カレンのボーイフレンドの叔父で、友人たちにはポールというニックネームで呼ばれていた。

マイケルの自宅に踏み込んだ警察は、自宅内を一斉捜索。するとソファベッドの中から、ついにシャノンを無事発見した。彼女は生きていたのである。

驚くべきことに、ジョーの透視は、そのすべてが的中していた。この一連の様子は、『サンデー・ピープル』紙で報道され、事実であることが確認されている。

イギリスNo.1サイキックのジョー・パワー。彼はその呼び声どおり、紛れもなく本物の実力を持つ超能力者だったのである。


Photo By “Psychic Night Special with celebrity medium Joe Power”
via http://www.waterfront.co.uk/news/newsdetails.aspx?id=1609

Photo By “Dad Peter Wilson talks about beautiful daughter Lynsey Quy”
via http://www.southportvisiter.co.uk/news/southport-news/dad-peter-wilson-talks-beautiful-6624099

謎解き

【伝説】に登場する2つの事件は、ジョー・パワーが紹介される際には、ほぼ必ずどちらかが紹介されるほど毎回おなじみの事件となっている。

これは裏を返すと、他に関わった事件は大した結果を残していないということを意味しているのではないだろうか。

けれども、この2つの事件も実は詳しく追っていくと、【伝説】で語られるストーリーがかなり誇張されたものであることがわかってくる。以下で詳しく見てみよう。

リンゼイ・クワイ失踪事件の真相

まずはリンゼイの事件。この事件とジョーの関わりで重要なのは、彼が話すストーリーは事実だと客観的に示す証拠がない、という点にある。

ジョーの話を聞いたというフリーダはもともと彼の友人で、彼女の話は事件が解決してから数年後に出てきたものである。客観的な証拠とは言いがたい。

警察に透視内容を伝えたというジョー本人の話も、本人がそう言っているだけで証拠はない。後に手紙を送った際の受領証は残されているものの、これは単にジョーが警察に手紙を書いた、ということを示しているに過ぎない。

肝心なのはその中身である。事件解決前の透視内容が確認できなければ意味がないのだ。

こうした状況にもかかわらず、事件は自分のおかげで解決したかのようにほのめかすジョーに対し、警察の反応は冷ややかだ。捜査を担当したロンドン警視庁のジェフ・スローン警視は、「ジョー・パワーが捜査の手助けになった事実はない」ときっぱり述べている。

そもそもリンゼイ事件は、失踪したと思われていたリンゼイの銀行口座にまったく動きがなかったことや、生活保護などの申請もなかったことから、その生存が疑われた。殺人事件として捜査が始まったのは、こうした状況による。

容疑者の第一候補は夫のミッチェルだった。リンゼイの最後の目撃情報は彼のものしかなく、リンゼイに対する暴力が原因で、一時は離婚寸前に陥っていたこも判明したからである。

そこで2000年6月、捜査を指揮していたスローン警視はミッチェルの逮捕に踏み切った。当初、ミッチェルは取り調べで否認を続けたが、共犯者の逮捕を知らされると、ついにリンゼイの殺害を認めるに至った。

共犯は遺体の切断を手伝った弟のエリオットと父親。ミッチェルの電話の通話記録から、当時、頻繁に彼らに電話していたことが判明し、共犯が疑われていた。

切断された遺体の胴体はミッチェルの勤務先だったゴーカート場で発見され、脚はサウスポートの町の中央を走る線路近くに埋められていた。しかし頭部と手はこれまで発見されていない。

ということは最も重要な頭部の行方を告げず、遺体が全部揃ったわけでもないのに、「ありがとう」と告げて去ってしまった被害者の霊がいたということだろうか。奇妙な話だ。

シャノン・マシューズ誘拐事件の真相

続いてはシャノンの事件。この事件の透視で、事前の内容が確認できるのは2008年3月9日付けの『サンデー・ピープル』紙の記事。この9日号は、前日に行われたジョーの透視を報じたもので、事件解決前の記事である。

当然、そこには【伝説】にあった透視内容が報じられているはずだ。ところが、この記事を実際に確認してみると、その内容は【伝説】で語られるストーリーとだいぶ違うことがわかる。

まず重要なキーワードとされた「マイケル」「ポール」「バトレイ」のうち、前の二つはまったく出てこない。この二つの名前を透視していたという話は、翌週の3月16日号の記事で初めて出てくる。

しかし、犯人が逮捕されたのは3月14日のことである。逮捕後に「実は透視していた」と主張されても説得力はない。

次に「バトレイ」という地名も、実際の印象は違ったものになる。9日の記事では、頭に浮かんだ地名として「オセット」と「バトレイ」という二つの地名を挙げていた。この二つは誰も予想できないような意外な地名などではなく、事件が起きたデューズバリーの隣町である。

関係者にとってはお馴染みの地名で、当然、警察の捜査対象地域にも入っていた。これらの地名が単に出たところで、捜査に進展が見られるとは考えにくい。

警察がバトレイで犯人の自宅を捜索することになったのは、近隣住民の通報による。犯人は独身にもかかわらず、不在時に自宅から誰かがいる足音が聞こえるというのだ。この情報をもとに警察は犯人宅の捜索に踏み切ったわけである。ジョーの情報はまったく関係がなかった。

ちなみに9日号の記事では他にも、次のような透視も紹介されている。

「シャノンを乗せた車の後部座席にベビーシートと茶色のクッションがある」、「バックミラーには宗教的なカードがぶら下がっている」、「車はシャノンが知っている教会の近くで止まった」、「運転手はガソリンスタンドを利用した」

これらはいずれも的中したことが確認されていない。そのため、現在では、これらの透視はなかったことにされている。また「オセット」の地名も同様で、こちらも翌週の16日号で消されてしまった。

なお、もし犯人の自宅が「オセット」だった場合は、「バトレイ」の方がなかったことにされていたであろうことは想像に難くない。もちろん両方外れた場合は二つとも消されたはずである。

このようにジョーの透視は、事件解決前の実際のものと、後で語られるものとで、大きな違いがあることがわかる。解決前は、犯人逮捕につながるような重要な情報を提供できない。

その最たる例が、シャノン事件の真犯人は母親のカレンだったということである。信じがたいことに、実はこの誘拐事件は、金に困った母親が主に企てた懸賞金目当ての狂言だったのだ。

ジョーと母カレン

3月9日号の記事で一緒に写る母カレンとジョー

母カレンは2008年4月に、誘拐初日からシャノンの監禁場所を知っていたことが報じられ、その後、狂言誘拐を企てた罪で逮捕。2008年12月、すでに逮捕されていたマイケル・ドノバンと共に懲役8年を宣告された。

重要なのは、この真犯人が母親であるということを、ジョーはまったく透視できていなかったということである。本人と直接、対面までしていたにもかかわらず。

この致命的な失敗に対し、ジョーは次のように述べている。

母親が犯人だということはすぐにわかった。しかし本人に告げれば逃げられるおそれがあったので、あえて言わなかったのだ。

私には恒例の、あと出しじゃんけんに思えてならない。

Photo By Simon Lennon「Mum told of psychic car claim」『Sunday People』 9 March 2008 via http://www.mirror.co.uk/news/world-news/mum-told-of-psychic-car-claim-1650869

なかったことにされている日本での担当事件

さて最後は、2009年にTBSの「キミハ・ブレイク」という番組での要請に応え、来日した際に担当した事件について少し触れて終わりとしたい。

ジョーが担当したのは、2004年2月、佐賀県鳥栖市飯田町で起きた殺人事件である。この事件では会社員の入口和俊さんが何者かに殺害された。

ジョーはこの事件を解決するべく透視を行い、様々なキーワードを出していったものの、事件の解決に結びつくような手がかりは何一つ出せずに終わってしまった。事件はその発生から10年以上が経過した現在も、未解決のままである。

残念なことに、現在この事件はジョーが宣伝する中でも、日本のテレビ番組で扱われる中でも無かったことにされている。今ではこの事件の担当がジョーだったことを知る人はほどんどいない。

【参考資料】

  • 「トリハダ[秘]スクープ映像100科ジテン」(テレビ朝日、2014年4月21日放送)
  • 「Crime Scene Psychics」(ディスカバリー・チャンネル、2007年6月13日放送)
  • 「キミハ・ブレイク」(TBS、2009年6月9日放送)
  • 「A missing young mother and the caring husband who denies killing her」『The Independent』 3 July 1999(http://www.independent.co.uk/news/a-missing-young-mother-and-the- caring-husband-who-denies-killing-her-1103944.html)
  • BBC News「Life sentence for wife killer」16 January, 2001
    (http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/1120057.stm)
  • Angelique Chrisafis「Casino worker cut up wife then claimed she left him」『The Guardian』17 January 2001(http://www.theguardian.com/uk/2001/jan/17/angeliquechrisafis)
  • 「Murdered wife’s brother found hanged」『The Telegraph』 25 Apr 2001
    (http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/1317168/Murdered-wifes-brother-found-hanged.html)
  • BBC News「Hundreds join missing girl search」 21 February 2008
    (http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/bradford/7257891.stm)
  • BBC News「Mother fears daughter was ‘taken’」 12 March 2008
    (http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/west_yorkshire/7291268.stm)
  • BBC News「Missing girl Shannon found alive」 14 March 2008
    (http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/west_yorkshire/7296756.stm)
  • BBC News「Timeline: Missing Shannon Matthews」 15 March 2008
    (http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/7296905.stm)
  • BBC News「What next for Shannon investigation?」 15 March 2008
    (http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/west_yorkshire/7297926.stm)
  • BBC News「Neighbours await Shannon answers」 15 March 2008
    (http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/7298478.stm)
  • BBC News「Mother guilty over Shannon kidnap」 4 December 2008
    (http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/west_yorkshire/7763260.stm)
  • Simon Lennon「Mum told of psychic car claim」『Sunday People』 9 March 2008
    (http://www.mirror.co.uk/news/world-news/mum-told-of-psychic-car-claim-1650869)
  • Simon Lennon「’I asked if they knew a man named Michael..’」『Sunday People』 16 March 2008 (http://www.mirror.co.uk/news/world-news/i-asked-if-they-knew-a-man-named-1651163)
  • AFPBB News「懸賞金目的で実の娘を誘拐、母親と共犯者に有罪判決 英国」 (http://www.afpbb.com/articles/-/2546061?pid=3585230)
  • Phaedra「Joe Power & the Lynsey Quy case: Police refute psychic’s claims of assistance」『SkepticReport』 1 Jan 2007 (http://www.skepticreport.com/sr/?p=390)
  • Jon Donnis「Psychic Joe Power」『BadPsychics』 25 June 2009
    (http://badpsychics.blogspot.jp/2009/06/psychic-joe-power.html)
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