超常的な力を演出するテクニック「コールド・リーディング」

この記事では「コールド・リーディング」というテクニックを紹介したい。これは相手に無意識のうちに自分を語らせ、情報を引き出すというもので、上手く使えば、超常的な力によって情報を当てたかのように思わせることができる。

コールド・リーディングの「コールド」には、「冷たい」という意味の他に、「事前準備なしに」という意味がある。つまりコールド・リーディングとは、事前準備なしに相手の情報を読むこと。事前に調べて準備しておく場合は「ホット・リーディング」という。

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基本は「釣り」

コールド・リーディングの基本は「釣り」である。エサとなるのは「キーワード」で、このキーワードの反応を見ながら、当たりが釣れるのを待つ。

たとえば、「あなたは最近、失ったものがありますね」と言ったとしよう。この場合、疑問文のように文末を上げる感じで言うと、相手は引っかかりやすい。

「ええ、妻が最近亡くなりまして」とか、「親友とケンカ別れしちゃったんです」、または何か物を失くしたことを話し出すかもしれない。いずれにしろキーワードを含めて問いかければ、“困りごとがあって相談にやってきた客”は自分に当てはまる出来事を勝手に探し出してくれるのだ。

場合によっては相手の反応が薄い場合もある。そういう時は表情や微妙な動き(首を少しだけ縦に振るなど)をよく読む。電話などの場合であっても、反応までの時間などで正しい方向に進んでいるかどうかがわかる。

ジョー・パワーの実演

ここでは実際のコールド・リーディングがどのように行われるのか、実例を紹介してみたい。

イギリスのリバプールに、ジョー・パワーという人気の霊能力者がいる。彼は霊界とコンタクトして、相談者と関係がある故人から情報を得られるのだという。以下は、彼の交霊会イベントに集まった観客たちとのやり取りの一部である。

ジョー「亡くなったご主人が心配していますよ。腰が痛むんじゃないですか? ヒザも痛むでしょう」

女性A「はい」

ジョー「親戚にジーン……、いやデビーという名前の方はいますか?」

女性B「はい、おばがデビーです」

ジョー「ポールという知人がいますか? ポール……お友達とか」

女性C「はい、ポーリンという知人がいます」

ジョー「5という数字が見えます。家族、兄弟でしょうか」

女性A「はい、女の子が5人に男の子が1人います」

これを見ると、全部、言い当てているように見える。ところが、この交霊会に参加したマジシャンのダレン・ブラウンと心理学者のリチャード・ワイズマンによると、これらは全部、コールド・リーディングの可能性が高いという。

どういうことか。まず、女性Aはかなり年配の女性だった。そこから、ご主人が亡くなっているであろうこと、さらには高齢者にはよくある腰痛やヒザの痛みを持っているであろうことは容易に想像がつけられた。

次に女性B。実はこのとき、最初に「ジーン」と言ったときは無反応だった。そこで次に別の名前を出して当たったのである。もしまた無反応であれば、他のありそうな名前をあげていけばよい。ちなみに「デビー」という名前の人物が「おば」であることは、女性自身が数多くの親戚の中から自分で探して言い出したことである。

続いて女性C。このときは、「ポール」という名前に該当する人物がいなかった。しかし女性はそれを外れだとは考えない。該当する人物がいないのであれば、似たような名前を自分で探し見つけるのである。

最後に再び女性A。ここでは「5」という曖昧なひとつの数字に対し、「女の子が5人」だと答えている。しかし通常であれば、ここは男の子も含めて「6人姉弟」、もしくは「子どもが6人いる」と答えるところだった。けれども「6」では数字が合わないため、数字が該当する分け方を自分で探して、当てはめたのである。

5という数字は他にも、女性Aの兄弟、姉妹、夫の家族、生年月日など、いろいろなものが考えられる。

このように、一見、当たったように見えることでも、ワイズマンらによれば、実は外見などから予想がつくものだったり、エサとなるキーワードに釣られて自分から言い出したことだったりする場合も多いという。留意しておきたい。

バーナム効果

続いては、前出のダレン・ブラウンが行った興味深い実験の紹介。以下の動画は、イギリスのチャンネル4で放送されていた人気番組「Trick of the Mind」(心のトリック)の一部である。(日本語字幕を付けておいた)

字幕が表示されない場合は、再生後に画面下のメニュー欄にある字幕ボタン(歯車の左)をクリック。スマホの場合は画面右下の字幕ボタンをクリック→「英語」(動画で表示されるのは日本語)をチェック。

この番組でダレンはまず、イギリス、アメリカ、スペインで若いボランティアの男女を集める。そして彼らに誕生日を書いた紙や手型、個人的な持ち物を用意してもらい、それぞれ自由に選んでもらった封筒に入れてもらう。ダレンによると、封筒の中身をもとにその人の性格や過去が透視できるという。

封筒が集まると、ボランティアの男女にはしばらく休憩してもらい、その間にダレンは透視の結果を書いた紙を用意して再びみんなの前に現れる。そして、最初は他の誰にも見られないように封筒の中身を読むように指示。

すると、透視の結果を読んだみんなはよく当たっていると驚く。どれくらい当たっていると思うか質問されると、その多くは75%~90%ほどの的中率だという。

しかし番組はここで終わらなかった。続きがあった。ダレンはすっかり信じてしまったみんなに対し、今度は透視が書かれた紙を他の人と交換するように指示した。

すると……「自分だけの性格や過去」が書かれていると思っていた透視の内容が、実は他のみんなと完全に同じだったことに気づくのである。驚きの真相に唖然となる一同。

ダレンはそんなみんなに、これはコールド・リーディングのテクニックを使ったものだと説明する。より具体的には「バーナム効果」である。

バーナム効果とは、誰にでも当てはまるような一般的な人物描写を、自分だけに当てはまると思い込んでしまう現象のこと。これを有効にするためには、人物描写を知らせる際に、「これは“あなたの”性格を表したものだ」と特定することが重要になる。それができれば相手の強い思い込みを誘うことができる。

人の性格や経験というものは、意外と多様性を持っている。「優柔不断になってしまうことがある」と言われればそういう時もあるだろうし(どんな時でも即断即決できる人は少ない)、「人見知りな面がある」「心の内をなかなか明かさない」と言われれば、思い当たる人も多いだろう。

しかし一方で、「(優柔不断になりながらも)人を大切にする優しさを持っている」「うち解けた雰囲気では自分を表現することができる」などと言われれば、そういう面があると考えてしまう人もいるのではないだろうか。

これこそがバーナム効果。コールド・リーディングにはこういった心理効果もあるのだということは知っておきたい。

否定的な反応だったときの対処法

さて最後は、コールド・リーディングの応用編として、否定的な反応が返ってきたときの対処法があるので紹介する。

以下は、『超常現象の心理学』(平凡社)において、著者の菊池聡氏が紹介しているエピソードである。大阪の某番組に出演した際に、同席していた霊能力者のK氏と、服飾研究家の市田ひろみ氏とのやり取りだ。

霊能力者「あなたは左側の眼底に悪いところが見られる。それに気管支、のど、腰の右側が悪い。膝や足に悪い影響が出ているようです」

市田氏「ええ、気管支は悪いんですよ。当たってます。 けど腰の右側は悪くないですね」

霊能力者「はい、自覚症状は出てないようですが、悪くなっています」

ここでの 「自覚症状は出ていないが悪くなっている」という主張は、否定的な反応が返ってきたときの無敵の切り返し方だ。「あなたは気づいていないが私にはわかっている」というわけである。もともと相手は特別な力を持っているという前提なのだから、こう言われれば納得するしかない。

また、他にも以下のように言い張ることもできる。(これは実際にイギリスの霊媒ドリス・ストークスが、ある男性の死因を透視した際に使った方法)

(家族に、死因は心臓発作ではなく、ガンだったと言われて……)
「最終的には心臓発作に襲われたんだって、彼は私に言ってるわ」

ハズしたときは霊が助けてくれるのである。

【参考資料】

  • 志水一夫『大予言の嘘』(データハウス)
  • 「世界まる見え!テレビ特捜部」(日本テレビ)
  • Trick of the Mind」(Channel 4)
  • 菊池聡『超常現象の心理学』(平凡社)
  • Terence Hines『Pseudoscience and the Paranormal』(Prometheus Books, 2003)
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