
このページでは「コールド・リーディング」というテクニックを紹介したい。このテクニックは相手に無意識のうちに自分を語らせ、情報を引き出すというもの。よく使うのは霊能者、超能力者、占い師などだ。(意図的ではなく無意識な場合も多い)
上手く使えば、超常的な力によって情報を得たかのように思わせることができる。
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まずコールド・リーディングを行う際の基本から紹介しよう。
・相手の悩みを探る
最初に行うのは、相手がどんな悩みを持っているのか探ることである。大半の人間の悩みは、次の五つのどれかに属している。
(1)仕事の悩み (2)恋愛の悩み (3)金銭の悩み
(4)人間関係の悩み (5)健康の悩み
この中からさらに、相手の性別、話し方、服装、身につけている装飾品、表情、見かけの年齢、癖などをもとに絞り込んでいく。これができたら反応を見ながら話し出し、情報が得られるのを待つ。(慣れていれば電話でも、話し方や「間」などで絞り込むことが可能)
たとえば相手の年齢が40歳以上に見えた場合、「あなたは最近、視力の低下で困っていますね」などと言えば、相手からそのことに関する具体的な話や「そういえば最近、膝(ひざ)の調子も悪くなっちゃって。トシですかね」なんて話まで引き出すことが出来るかもしれない。
もしそうなれば、この相談者から「ひざが悪い」という情報を入手できたことになる。後は相手が忘れた頃に、超常的な力でそのことを知ったかのように装えば、上手く騙すことができる。
また、ほとんど誰にでも当てはまることを言う場合もある。
例えば、「あなたは子どもの頃に高熱を出す病気にかかったことがありますね」とか、「子どものころに生きものを飼ったことがありますね」とか、「あなたのお父さんは死んでいませんね」などである。
この中でも最後のものは、「死んではいない(生きている)」とも、「死んでしまって(この世に)いない」ともとれるので、絶対に外れることがない。
・曖昧な問いかけ
相手の悩みを言い当てて情報を引き出す他に、曖昧なことを言って相手から情報を得ることもある。
たとえば、「あなたは最近何か失ったものがありますね」と言ったとしよう。この場合、疑問文のように文末を上げる感じで言うと、相手は引っかかりやすい。
「ええ、妻が最近亡くなりまして」とか「親友とケンカ別れしちゃったんです」、または何か物を失くしたことを話し出すかも知れない。いずれにしろ曖昧なことを言っておけば、客は自分に当てはまる出来事を勝手に探し出してくれるのだ。(※注1)
【※注1】 場合によっては相手の反応が薄い場合もある。そういう時は表情や微妙な動き(首を少しだけ縦に振るなど)をよく読む。電話などの場合であっても、反応までの時間などで正しい方向に進んでいるかどうかがわかる。
・否定的な反応だったときの対処法
しかし、もし反応が否定的だった場合はどうすればいいのか?
ここでは、実際に霊能者が行った対処の仕方を『超常現象の心理学―人はなぜオカルトにひかれるのか』 (平凡社)から紹介しよう。
以下は、著者の菊池聡氏が大阪の某番組に出演した際に行われた、霊能力者のK氏と、服飾研究家の市田ひろみ氏とのやり取りである。
| 霊能者 | 「あなたは左側の眼底に悪いところが見られる。それに気管支、のど、腰の右側が悪い。膝や足に悪い影響が出ているようです」 |
| 市田氏 | 「ええ、気管支は悪いんですよ。当たってます。 けど腰の右側は悪くないですね」 |
| 霊能者 | 「はい、自覚症状は出てないようですが、悪くなっています」 |
さすが霊能者というべきか。このように反証不能なことを言えば、外れを突っ込まれる心配がない。「自覚症状はない」というような主張は、その場で間違っていることを証明できないのだ。
こういった反証不能な主張は何でも説明できてしまう。
たとえば、「明日の天気は、晴れか、曇りか、雨か、雪か、雹のどれかである」と誰かが予言したしよう。この予言は必ず当たる。しかし反証不能である。間違っていることをどうやっても証明できないのだ。こういった反証不能な主張は何でも説明できてしまうかわりに情報価値は無く、無意味な主張であることを知っておくといい。
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ここでは実際のコールド・リーディングを最初から紹介して、イカサマ師がどうやって客を騙すのかを見ていこう。
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ドリス・ストークス氏の実演
まずはイギリスの人気霊媒師のドリス・ストークス氏が、BBCテレビで行った霊視を紹介する。
ストークス氏は数百人いる聴衆に向かって、「小さなダニエルちゃん」のことを知っている人がいないか聞いた。すると一人の若い女性が壇上にのぼって、「私にはダニエルがいます」と語った。以下は、『ハインズ博士「超科学」をきる』(化学同人)からの引用である。
| ストークス氏 | 「小さなダニエルちゃんのこと?」 |
| 女性 | 「とっても小さいの」 |
| ストークス氏 | 「すると赤ちゃんのダニエルのこと? その子は病院に戻らなければならなかったのね?」 |
| 女性 | 「ええ、病院に戻らなければなりませんでした」 |
| ストークス氏 | 「でも、今は幸せなのね」 |
| 女性 | 「いいえ・・ええ、あなたのもとであの子は幸せなのかもしれません。でも私たちはあの子を失ってしまった」 |
| ストークス氏 | 「ええ、そうですよ。霊たちがいっています。あの子は幸せだって。それに『私たちは小さなダニエルを連れもどして、家に帰ってきたのに、また病院にもどらなければならなかった』といっています。それでダニエルは2度と家に帰らなかったのね。でも『今では幸せです』といってるのよ。そうすると、ダニエルは今でも3歳くらいなのね?」 |
| 女性 | 「ええ、なったばかりでした」 |
| ストークス氏 | 「彼が見えるわ。褐色の髪をしているのね」 |
| 女性 | 「ええ、そうです!」 |
| ストークス氏 | 「そうよ、ここにいるの、花を見ている―『ええ、ダニエルできるわよ』―『お母さんに花をあげることができるか』っていってる(聴衆ため息)。ならね、今晩帰った時に、いいわね、花をもって行くわね?」 |
| 女性 | 「でも、ダニエルは私の赤ちゃんじゃなかったんです」 |
| ストークス氏 | 「ええ、そうね。でもあなたはお母さんを知っている」 |
| 女性 | 「はい」 |
| ストークス氏 | 「彼は、『僕、お母さんのところに持って行っていいかな。だって僕がここにいるってお母さんは信じてくれないんだもん』と言ったの。かわいいでしょ彼、・・・ちょっと待って、ダニエル・・・心臓を患っていたのね(女性うなずく)。お医者さんも治そうと頑張ったけれど、よくならなかった。でも彼は成長して、もうすぐ3歳になるっていっている、それにこうもいっている・・・」 |
いかがだろう。このやりとりを読んだ人の中には、ストークス氏はなぜ当てることができたのか不思議に思った人もいるかも知れない。しかし彼女が行ったのは霊視などではなく、コールド・リーディングである。以下で、その解説をしよう。
まず、女性が「私にはダニエルがいます」と語ったことから、(1)ダニエルは生きていて (2)ダニエルはこの女性の子ども であることが推定できる。次に女性は、ストークスの「小さなダニエルちゃんのこと?」という問いに対して「『とっても』小さいの」と情報を提供している。これもストークス氏にとっては貴重な情報である。
次は、「病院に戻らなければならなかったのね?」という問いかけ。これに対し女性はYesと答えているが、実際の話、ここでNoという答えが返ってくることはまずありえない。なぜなら大抵の子どもは病院で産まれるのだし、幼いうちは病気にもかかりやすい。つまり、ダニエルが病院で産まれ、その後に一度でも病院で医者に診てもらったことがあれば、「病院にもどった」と言うことができるのだ。
さて、ここまで順調だったストークス氏。ところが次で思わぬミスをする。「今は幸せなのね」という発言である。この発言自体はポイントを稼ぎにいったもので、最初の女性の発言から「ダニエルは生きている」ということを推定しているし、前のやりとりから、「病院に行ったが今は治った」と当たり前の推測をしたのだから、確実に稼げそうなポイントだった。
しかし実際は違った。病気が治って幸せかどうか以前に、ダニエルはすでに亡くなっていたのである。
本来ならかなり痛いミス。ところが幸いにも女性は「あなたのもとであの子は幸せなのかもしれません」と勝手にフォローしてくれている。このように客が相手を信じている場合、ミスをしても勝手にフォローしてしまうことがある。霊能者や占い師にとっては非常にありがたいことだろう。
次は、ストークス氏がダニエルの年齢と髪の色を当てたことについて。これは一見すごいことのように思えるが、実は大したことはない。
まず年齢に関しては、上でも書いたようにダニエルは「とっても小さい」という情報をすでに入手している。この情報から、せいぜい3歳くらいまでの年齢だということがわかる。そこで「3歳『くらい』なのね?」というように、幅を持たせて疑問形にしておけば当たる確率は高くなる。
では、髪の色についてはどうだろう? これは「褐色」という描写が、ブロンドと黒髪以外大抵の髪に当てはまるという事実を知っていれば別に驚くことではない。また親の髪色からも推測可能である。
・2度目の失敗
最初のミスのあと、年齢と髪の色を当て、ポイントを稼いだストークス氏。
しかし女性の最初の発言から推定していた2番目の情報、「ダニエルはこの女性の子ども」が、なんと間違っていたのだ。
女性の「ダニエルは私の子どもじゃなかったんです」という発言を私が初めて読んだ時はその展開に驚いたものだが、それよりも驚いたのはストークス氏本人だったろう。花をあげていいかなどと、泣かせる小芝居をしてる場合ではないのだ。
しかし女性のこの予想外の発言に対して、ストークス氏は「ええ、そうね」と、いかにも最初からわかっていたかのような受け答えをしている。さすがは経験を積んだ霊媒師。たとえミスしても、常に自信のある態度を崩さない。
最後は、ストークス氏が小芝居をしている最中に出した「ダニエル・・・心臓を患っていたのね」という発言について。これは、心臓病が幼児期の死にいたる疾患の中では、おなじみものだということを知っていれば驚くことはない。
また、もし外れてしまった場合でも以下のように言い張ればいい。(これは実際にストークス氏が同じ番組内の前半部分で、別の霊視を行っていた際に使った方法)
(家族に、死因は心臓発作じゃなかったと言われて・・・)
「最終的には心臓発作に襲われたんだって、彼は私に言ってるわ」
・・・ハズしたときは霊が助けてくれるのである。
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最後に、まったくの偶然によっても盲信的な信者を獲得することがあるのだということを示しておきたい。
M・ラマー・キーンというアメリカの元人気霊媒師は、自らが行ってきたイカサマを暴露した『サイキック・マフィア』
(太田出版)という著書にて、ある女性とのやりとりを紹介している。
その女性は、キーンのいる霊媒施設(キャンプ・チャスターフィールド)に初めて訪れたため、その女性に関するデータファイルは全く無かった。そこでキーンは即興でリーディングを行うことにした。
リーディングは途中までは順調。しかし女性が言った「私が失くしてしまったある重要な法律文書を見つけるのに手を貸してくれますか?」という質問によって、彼は窮地に立たされる。 本人の知らない情報は釣ることができないからだ。
困り果てたキーンは、トランス状態から脱して急に目覚めたフリをし、何かが霊との交信をさまたげたという言い訳を考えたが、あまりにもタイミングが良すぎる。
そこで、次のような大嘘を言った。
「あなたは家に金属製のファイルキャビネットを持っています。それは持ち運びのできるもので、天板が二重構造になっています。二重天板の鍵は、底のほうに紙切れの下敷きになっています。書類はこの二重天板の中にあります」
キーンからすれば、「どうせこの女はチェスターフィールドに戻ってきそうもない」と判断しての大嘘だった。ところが驚くべきことに、このもっともらしい大嘘は当たってしまったのだ! まったく偶然に。
「絶対にわかるはずがない」と思われることを霊媒師は当てられたのだから、その後この女性が熱烈な信者になってしまったことは言うまでもない。しかしイカサマ師にとってはまったくの偶然であり、カモは他にもいると判断して言ったデタラメであったことを忘れてはならない。
アメリカの天才興行師フィニアス・テイラー・バーナムの至言を借りれば、「カモは毎分生まれてくる」のである。コールド・リーディングで失敗することがあっても、新しく生まれたカモを次のターゲットにすればいい。
もしあなたが、コールド・リーディングを理解したうえで、それでも信じられないようなことを占い師や霊能者に当てられたなら、上記のエピソードとバーナムの至言をぜひ思い出してほしい。きっとそのまま盲信することなく、立ち止まって懐疑的に考える余裕ができるだろう。
(記事公開日:2005年2月1日)
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