
1968年、アポロ8号は人類史上初めて月の裏側を周回した。乗組員は、フランク・ボーマン船長、ジム・ラベル飛行士、ウィリアム・サンダース飛行士の計3名である。
月は常に同じ面を地球に向けているため、それまで裏側を見た者は誰もいない。彼らは大きな期待の中、未知の世界を初めて見ることになった。しかし、月の裏側では通信が途絶えてしまう。
アポロ8号は初めて月の裏側を見た後、ヒューストンへの通信の中で衝撃的な発言をする。
「みんなに伝えてくれ。サンタクロースに会ったぜ」
NASAの用語には「サンタクロース」という単語はない。UFO研究家の間では、この単語は「UFO」を示す暗号だと推測されている。そして1987年、日本のテレビ番組に出演した元NASAの宇宙飛行士ジム・アーウィンは、「サンタクロース」はUFOを指す暗号だとハッキリ肯定した。
アメリカでは決して言えないことだが、他国の番組だということで極秘情報を漏らしたのである。
問題のサンタクロース発言が行われたのは1968年12月25日。つまりクリスマスの日である。そして、これは初めて月の裏側から出てきたときに発言されたものではなく、すでに9回も月を周回した後に言われたものだった。
アポロ8号は月を9周した後、地球に帰還するために月の裏側でエンジン噴射を行った。もしこの噴射が失敗すれば、地球には二度と帰ってこれない。
月の裏側では電波が遮られてしまうので、地球との交信は中断する。噴射が成功したかどうかは通信が復活するまで分からない。緊張の時間だ。
予定の時間になるとヒューストンはアポロ8号に呼びかける。
(以下は実際の通信記録)
ヒューストン |
「アポロ8号、こちらヒューストン」 |
ヒューストン (Houston) |
「アポロ8号、こちらヒューストン」 (Apollo 8, Houston) |
ヒューストン (Houston) |
「アポロ8号、こちらヒューストン」 (Apollo 8, Houston) |
ヒューストン (Houston) |
「アポロ8号、こちらヒューストン」 (Apollo 8, Houston) |
応答はない。さらに100秒近く沈黙が続く。
しかしその後、突然ジム・ラベルの威勢のよい声が飛び込んできた。
ラベル |
「ヒューストン、こちらアポロ8号」 (Houston, Apollo 8) |
声のトーンからだけでも、エンジン噴射が成功したことが分かる。
ヒューストン (Houston) |
「アポロ8号、よく聞こえる」 (Apollo 8. Loud and clear.) |
ラベル (Lovell) |
「了解。みんなに伝えてくれ。月にはサンタクロースがいる」 (Roger. Please be informed there is a Santa Claus.) |
ヒューストン (Houston) |
「それはそうだ。君たちがそれを一番よく知っているからね」 |
いかがだろう。
実際の発言を見てみて、これがUFOを表した暗号だと思うだろうか?
ジョークのわかる人間なら、この発言は地球への帰還を決めたエンジン噴射の成功を表現した気の利いたジョークだということに気付くだろう。アポロ8号の宇宙飛行士にとって、この成功は最高のクリスマスプレゼントだったに違いない。喜びの気持ちがよく伝わってくる。ヒューストンの返答も気が利いている。
しかし、UFO陰謀論者はどうだろう。このジョークの意味もわからず、「サンタクロースはUFOの暗号に違いない!」などと言っているのだ。せっかくの気の利いたジョークも台無しである。
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続いては、NASAの元宇宙飛行士であるジム・アーウィンが「サンタクロースはUFOの暗号」だと認めたという話について。
この話は、1989年11月20日にテレビ朝日の水曜スペシャル「宇宙と満月の謎」という番組で、アーウィン本人が、インタビューで暗号の存在を認めたというものだ。
事情を知らない人なら、何かスゴイことを認めたと思ってしまうだろう。
しかし、このテの話に興味がある人なら、ジム・アーウィンは昔からUFOを肯定する発言を繰り返してきたことを知っている。
同じNASAの宇宙飛行士としては、アポロ14号で月に行ったエドガー・ミッチェルと並ぶ信奉者として有名なのだ。アーウィンは月への宇宙飛行から帰ってくるとNASAを辞め、コロラド州のスプリングスに「ハイライト財団」という新興宗教を設立。その後は教団の会長として世界中を駆け巡っていた。
「ジェネシス・ロック」(月面で見つかった46億年前の岩)を見つけたのは神様のおかげだと言ってきたアーウィンは、ユリ・ゲラーは本物の超能力者だと太鼓判を押していたエドガー・ミッチェルともども、昔からオカルト業界にいろいろとネタを提供してくれる人物なのだ。
「NASAの元宇宙飛行士」と言えば聞こえはいいが、肝心のネタ元が何でも信じてしまうジム・アーウィンでは信用度はガタ落ちである。
そして何より、最も重要な実際の通信記録を見れば、問題の「サンタクロース発言」が気の利いたジョークだということはハッキリしていることだろう。
