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世界が驚愕した「宇宙人解剖フィルム」

伝説

1995年8月28日、「宇宙人解剖フィルム」と呼ばれる衝撃の映像が世界同時公開された。

解剖フィルムのワンシーン

解剖フィルムのワンシーン。「The ‘Alien Autopsy’ Film (Socorro, NM 1947 UFO Crash)」
(http://www.ufoevidence.org/cases/case809.htm)より

このフィルムはイギリスの音楽プロデューサーのレイ・サンティリが、1994年11月にアメリカの従軍カメラマンから10万ドルで買い取ったものである。

カメラマンの証言によれば、内容は1947年にニューメキシコ州ロズウェル近郊に墜落したUFOに関わるものだという。宇宙船内から発見されたエイリアンを解剖し、そのシーンを16ミリフィルムに収めたものだというのだ。

この宇宙人解剖フィルムは、すでにアメリカのコダック社によって鑑定が行われており、その結果1947年のフィルムで間違いないと断定されている。つまり、このフィルムこそ、宇宙人実在の決定的証拠だったのである。

謎解き

「宇宙人解剖フィルム」は1996年に日本のテレビ番組でも初めて紹介され、大きな話題を呼んだ。20年以上経った現在の日本でも、その映像の一部が紹介され続けているほど、非常に有名なものである。

2015年8月11日に放送された「マツコの知らない世界」(TBS)では、UFOビジネスと題し、宇宙人解剖フィルムを放映すると、1秒で30万円かかると紹介されていた。しかし、別の局で実際に解剖フィルムの値段交渉をした知り合いのプロデューサー氏から私が伺った話では、10万円だったという。しかもこちらが高いからいいと断ろうとすると、値切り交渉に応じる姿勢も見せたという。実際は数万円程度でも売っているようである。

現在、宇宙人解剖フィルムを本物だと思っているUFO研究者はほとんどいない。それはこのフィルムや関係者の証言に、大きな矛盾や誤りが存在するからである。詳しくは以下で説明しよう。

カメラマンの捜索

まずはフィルムを撮影したカメラマンはそもそも実在するのか? という点について。これには間接的な資料として、「カメラマンズ・ストーリー」という覚え書きがある。

宇宙人解剖フィルムがカメラに収められた過程を、カメラマンから聞きとって文章化したものだと称する覚え書き。

この覚え書きには、カメラマンは従軍カメラマンだったこと、解剖フィルムを撮影する前に、ニューメキシコ州ホワイトサンズで進められていたマンハッタン計画の撮影を行っていたこと、さらにその後は新型ジェットエンジン「リトル・ヘンリー」を撮影するためにミズーリ州セントルイスへ行っていたことなどが述べられている。

ところがマンハッタン計画について調査したロス・アラモス国立図書館の司書ロジャー・ミードによると、この計画に参加していたカメラマンは全員民間人で、従軍カメラマンは一人も参加していなかったという。

またリトル・ヘンリーについては、フランスの「テレビジョン・フランス・ワン」のニコラス・マイラードが調べている。ニコライによれば、リトル・ヘンリーの撮影には、マクドネル社お抱えの二人のカメラマンしか参加していなかったという。名前はチェスター・タークとビル・シュミット。2人とも民間人だった。

つまり、間接的な証拠とされた覚え書きの内容はデタラメだったのである。

浮かび上がる矛盾点

やはりカメラマンは実在しないのだろうか? この点についてUFO研究団体「ロズウェル・イニシアチブ」を主宰するケント・ジェフリーがさらに詳しい検証を行っている。

検証は、ジョー・ロンゴ、ビル・ギブソン、ダニエル・マクガヴァンという3人の従軍カメラマンの協力を得て行われた。3人とも従軍カメラマンの代表と言っていいほどの経歴の持ち主であり、中でもギブソンとマクガヴァンは空軍が行っていたUFO調査プロジェクトにも参加していた経験を持っている。

以下は、彼らの検証によって浮かび上がった矛盾点である。

所属のカメラマンが出動しない

解剖フィルムを買い取ったレイ・サンティリによれば、フィルムを撮影したカメラマンはワシントンD.C.に配置されており、1947年6月には命令を受けて、ニューメキシコ州ロズウェルへ向かったことになっていた。

ところが実際はアメリカ中の基地には必ず従軍カメラマンが配置されているため、わざわざワシントンからカメラマンを呼ぶ必要などまったくなかった。

フィルムが回収されない

問題のカメラマンは解剖フィルムを自分で現像したという。さらに所持していた残りのフィルムは、何度連絡してもワシントンの軍関係者が回収しに来なかったため手元に残ったという。

ところが実際の軍の極秘プロジェクトでは、どんな状況下でもカメラマンは決して自分自身で現像することはなかった。さらに現像している、いないにかかわらず、リールはもちろん、撮影されたフィルムは最後の1フレームまで必ず回収された。

また厳密を期すために、「フレームカウンター」と呼ばれる機械でフレーム数がカウントされ、「99フィートと10フレーム」といった形でフィルムの長さまで管理されていた。

カラーフィルムが使われていない

宇宙人解剖フィルムで使用されているのは16ミリの白黒フィルム。一方、1947年の時点で実際に米軍で記録用に使われていたフィルムは、16ミリと35ミリのカラー、それに16ミリの白黒の3種類だった。

一見矛盾はないように思われるが、当時米軍では医学的に特殊なシーンを撮る場合、必ず16ミリのカラーフィルムが使われることになっていた。

カメラが固定されていない

1947年当時、米軍では医学的に重要な記録を撮影する際には2台の固定カメラが使われていた。1台目のカメラは高い三脚に固定し、手術台や解剖台の横方向の高い位置から撮影。2台目のカメラは頭上に置かれ、天井からの撮影が行われた。

ところが宇宙人解剖フィルムの撮影には1台のカメラしか使われておらず、しかも手持ちで頻繁に動きながら撮影されていた。

この他にも、動画を撮るカメラマンだけで、静止画を撮影するカメラマンがいなかったり、内臓や脳など重要箇所のアップになると、急に(タイミング良く?)ピントがボケるなどの不審点が指摘されている。

ちなみに、この分析に協力したマクガヴァンは、問題のカメラマンの完全な名前と軍の認識番号をサンティリ側に要求している。

レイ・サンティリ

レイ・サンティリ(http://fanpix.famousfix.com/gallery/ray-santilli/p13379054)より

この要求に応じれば、セントルイスにある空軍記録センターに問い合わせるという。そしてフィルムを撮影したカメラマンが軍に所属していたことを証明してみせよう、というのだ。

ところが、この願ってもない申し出に対し、サンティリ側からの返答はまったくなかったという。せっかくの機会をつぶしてしまうとはもったいない話だ。

このように従軍カメラマンをめぐる主張は検証され、その矛盾点やおかしな点が明らかとなっている。

もはや、その実在を示す証拠は皆無と言っていい。問題の従軍カメラマンは実在しないと考えるのが妥当である。

コダック社の鑑定

さてカメラマンの次は、最後の命綱ともいうべきコダック社の鑑定結果について。

実は、コダック社が行った鑑定では、「“鑑定したフィルムは”1927年か、47年か、67年のコダックのフィルムと同じもの」ということしかわからなかった。これだけでは3つの年のうちのどれであるかははっきりしない。

ところがここでボブ・シェルという写真雑誌編集者が、宇宙人解剖フィルムは、シネ・コダック・スーパーXXというフィルムを使って撮影されている」と主張したことで、問題のフィルムが47年のものである可能性が出てきた。というのも、そのフィルムは1927年と67年には製造されていなかったからだ。

しかし、上でわざわざ“鑑定したフィルムは”と強調していることに注目してほしい。
実はサンティリがコダック社に鑑定用として送ったフィルム(以下参照)には、肝心の宇宙人解剖シーンが映っていないのだ。

autopsy2

「Film “Verification”」(http://www.trudang.com/autopsy/autofilm.html)より

これが問題なのは解剖シーンが映ってないことはもちろん、この鑑定用に出された意味不明なシーンの後には、数コマにわたって真っ黒いカットが入り、本編と分離されているということである。これではまったく意味がない。

ゴム野郎と呼ばれてしまった宇宙人

続いては、フィルムに映っていた中身の検証について。検証を行ったのは、「The Truly Dangerous Company」というサイトを運営しているトレイ・ストークスとマイヤ・ビートンという特殊メイクの専門家。

彼らは「宇宙人解剖フィルム」を本物だと思うか、それとも特撮だと思うかという質問を、アカデミー賞受賞者を含む特殊メイクの専門家に送って聞いてみた。

するとその結果はアンケートに答えた18人全員が「特撮だと思う」と回答。アンケートに答えた専門家の中には解剖フィルムに登場する宇宙人のことを「ゴム野郎」と呼ぶ者もいたという。専門家からすれば特撮だと丸わかりらしい。

なお、この他にも検証によって、「俳優のように振舞う医師」、「2面しか映らないテレビセットのような壁」、「ハサミの持ち方が本職と違う」、「目玉カバーが半分しかない」などの矛盾点が指摘されている。

制作者の告白

2006年4月、この「宇宙人解剖フィルム」について、トドメを刺す進展があった。イギリスの彫刻家で、テレビや映画にて特殊美術を担当していたジョン・ハンフリーという人物が、宇宙人解剖フィルムに出てくる宇宙人を作ったのは自分だと告白したのだ。

ジョン・ハンフリー

ジョン・ハンフリー(BBC「I made the Roswell alien」)より

ハンフリーによれば、イギリスで公開される「Alien Autopsy」という宇宙人解剖フィルムをモチーフにしたパロディ映画にて、同じタイプの宇宙人の制作を担当した事をきっかけに今回の告白に至ったという。

彼は「宇宙人解剖フィルム」で、完全防備のハズの防護服に空気を送るチューブが接続されていない(つまり本当なら呼吸できない)というおかしな服を着ていた外科医の役も、実は自分が演じていたと告白している。

普通なら、もうこれで終わる話だ。けれどもサンティリはしぶとかった。彼は今なおオリジナルは別にある、という主張を展開している。

しかしその主張を支える証拠は相変わらず皆無であるため、もはや彼の話を信じる者はほとんどいないようである。

【参考資料】

  • 皆神龍太郎『UFO学入門 伝説と真相』(楽工社)
  • Joe Nichell「“Alien Autopsy” Hoax」『Skeptical Inquirer』(Vol.9, No.6, November/December 1995)
  • Joseph A. Bauer「A Surgeon’s View: Alien Autopsy’s Overwhelming Lack of Credibility」『Skeptical Inquirer』(Vol.20, No.1, January/February 1996)
  • 「Alien Autopsy: Table of Contents」(http://www.trudang.com/autopsy/autocont.html)
  • Manchester Evening News「Salford man admits alien autopsy fake」17 Jan 2013 (http://www.manchestereveningnews.co.uk/news/showbiz-news/salford-man-admits-alien-autopsy-1026455)
  • BBC「I made the Roswell alien」27 Jun 2006 (http://www.bbc.co.uk/manchester/content/articles/2006/04/07/070406_alien_interview_feature.shtml)
  • 「Alien Autopsy 宇宙人の解剖 特別版」(ワーナー・ホーム・ビデオ、2006年)
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