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サイキックの王「ロン・バード」

伝説

アメリカに、ハリウッド俳優や大企業のトップなどを顧客に持つロン・バードというサイキックがいる。彼は世界的に有名な経済誌『フォーブス』で紹介されたことがある唯一のサイキックだ。他とは違い、その信頼は大変厚い。

ロン・バード

ロン・バード
「Best psychics in LA, Ron Bard」(https://about.me/ron.bard)より

バードが自身の才能に目覚めたのは幼少の頃。「サイキックの女王」「ニューヨークのベストサイキック」と呼ばれた母、ヨラーナ・バードから手ほどきを受け、才能を磨いてきた。その実力は、全米で起きた数々の未解決事件を解決に導いたことからも高く評価されている。

また最近では、あの未曾有の大災害となった東日本大震災を予知したことでも大きな注目を集めた。バードは2010年11月に来日した際、スポーツ紙のインタビューに応じ、最初の予言を発表。

続いて震災前日の2011年3月10日にも緊急来日すると『週刊プレイボーイ』誌のインタビュー に応じ、次のように予言したのである。

日本は地震国だが、明日の地震はかなりの大きな災害になるだろう。

その結果は言うまでもない。一説にはバードの予言的中率は90%にもなるという。アメリカではその的中率の高さから「サイキックの王」と呼ばれている。まさにサイキックの頂点に立つ実力者なのである。

そんな彼が2013年7月、新たなビジョンが見えたとして警告を発している。バードが見たビジョンというのは2、3ヵ月後の日本の姿だ。それは「戦争状態よりも酷い光景」で、「阪神大震災や福島以上の大きな災害が大都市で起こる」のだという。

場所は関西だ。もはや躊躇している暇はない。我々は彼の発する警告に耳を傾け、来たるべき時に備えるべきなのである。

謎解き

2013年7月の予言は完全に外れた。今回取り上げるのは、それ以外に主張されている過去の話である。いくつかのエピソードがよく紹介されているが、それらは本当のところ、信用できるのだろうか? さっそく検証してみよう。

『フォーブス誌』の記事を書いたのは誰か

まず、『フォーブス』誌で紹介されたという件。この話はバードを紹介する記事などではほぼ必ず出てくる話で、本人もよく利用している。一般にお堅いイメージの経済誌で唯一紹介されたとなれば箔が付くのかもしれない。

けれども、その『フォーブス』に記事が載ったということはよく知られていても、その記事を書いたのが誰なのかということは意外と知られていない。

実はその記事を書いた人物は、陰謀論者としてお馴染みのベンジャミン・フルフォードなのである。彼は「3.11の地震は海底に仕掛けられた爆弾による人工地震だった」「『新世界秩序』という闇の組織が世界を牛耳ろうとしている」「人類家畜化計画が進んでいる」「第三次世界大戦が勃発する」などの主張や予言を展開しているガチの陰謀論者だ。

記事を書いた2002年当時は『フォーブス』誌のアジア太平洋支局長を務めていた。彼は日本人の顧客も多かったバードに注目し、記事を書いたようである。

世界的に有名な経済誌に掲載された唯一の、と言われれば聞こえはいいかもしれないが、その記事を書いて紹介したのがフルフォードであることを考えると、それほど特別視する必要は感じない。

未解決事件を解決に導いた?

続いては未解決事件を解決に導いてきたという件。この件でバードがよく自身の功績として挙げるのは、ニューヨークのハリソンで2人の少女が殺害されたという事件である。

この事件は1984年3月9日に起きた。身元不明の10代と思しき2人の少女の遺体がビニール袋の中から縛られた状態で発見されたことから始まる。袋の中からは鍵が見つかったたものの、それ以上の手がかりはつかめず捜査は難航。

そんな中、現場に駆けつけたのがロン・バードと母のヨラーナだったという。2人は霊視を行うと被害者の身元を割り出し、遺体発見現場から 30キロ離れた場所へ刑事たちを誘導。その場所には3人の麻薬密売人がおり、彼らが犯人だというのである。

ヨラーナ

ロンの母、ヨラーナ・バード
「Psychic Medium Yolana Bard」(http://www.melodybard.com/yolana-bard/)より

警察は3人を逮捕すると、1人は自白。残りも最終的には有罪を宣告され、事件は見事、解決に導かれたのだという。

しかし、この話は本当なのだろうか? この件はアメリカの超常現象研究家のジョー・ニッケルが詳しく調査を行っている。ここではニッケルの調査結果を紹介しておきたい。

結論から述べれば、ロン・バードとヨラーナは事件解決の役には立たなかったようである。被害者の身元は彼らが霊視で割り出したのではなく、警察が事件から1ヶ月後に、遺体の写真公開に踏み切ったことから判明したものだという。情報を知った被害者両親が、失踪している娘ではないかと名乗り出たのだ。

犯人の逮捕はそれから4ヶ月後のこと。サイキックの出番はなく、ニューヨークのヨンカーズで麻薬捜査が行われた際に、容疑者の3人が逮捕されたのだった。3人は25年の懲役刑で有罪を宣告されている。

ここで登場するのは、当時、事件の捜査を担当していたルイス・ドリオである(後にハリソン警察署長)。彼は次のように振り返る。

私はバード氏と一緒に働いたことは決してありません。彼の母には2、3回会ったことがあります。彼女はぼんやりとしたビジョンや、当時の捜査には役立たないことは何でも提供しました。本当の信奉者は信用するかもしれないことは言っていました。 たとえば彼女は鍵を持って言います。「赤いドアが見えます」と。

警察が捜査によって発見した家のドアは赤かった。これは捜査の役に立ったのだろうか?

この情報は捜査には役立ちません。なぜなら捜査エリアには数千もの赤いドアがあるのですから。これはほんの一例です。

こうした「赤いドアが見える」の他にも、たとえば「数字の5が見えます」「水が関係しているようです」といった曖昧な情報をいくつも提示しておき、後から判明した事実に合わせて当たりをこじつけるテクニックを「レトロフィッティング」という。

サイキックが未解決事件に関わる際には必ず使われる定番テクニックだ。ドリオは次のように結論している。

私はバード氏が事件を解決したという主張や、彼とのどんな関わりも強く否定します。

バードが挙げたベストな事件ですら、この有様であることを考えると、他の解決に導いたと主張される事件の真相も推して知るべしである。

東日本大震災を予言した?

最後は東日本大震災を予言したという件について。この予言は2つある。『東京スポーツ』と『週刊プレイボーイ』に掲載されたというものだ。

『東京スポーツ』の方はバードがTwitterで投稿したところ、信用できないメディアだとして一部のユーザーから批判を受けた。それに対し彼は次のように反論している。

多くの人は、『東京スポーツ新聞』について批判的なコメントをしていましたが、『311が起こることを2010年に予言した事実の証拠』として認識しているのでしょうか? 私は『東京スポーツ新聞』が私の予言を信じて、記事にして下さったことに感謝しています。(本人Twitterより)

確かに東スポであっても、予言が2010年の時点で掲載されているならば問題はない。証拠として十分である。

そこで私は、東スポに掲載されたという2010年の記事を探した。その結果、バードが登場した記事として見つかったのは2010年11月21日の記事である。ところが、その記事には東日本大震災に関する予言は一切なかった。

そもそも記事の見出しからして「全米No.1超能力者が緊迫する外交問題を予言」である。北朝鮮や中国との問題について語るだけで、「地震」という単語すら一切出てこない。

東京スポーツ新聞社にも問い合わせて他の記事がないか調べてもらったが、該当する記事はなかった。つまりバードが主張する、「東スポに3.11の予言が載っている事実の証拠」などは存在しないのである。

では、もう一方の『週刊プレイボーイ』に載った予言はどうだろうか。この予言は次のもので、本当ならすごいことだ。

日本は地震国だが、明日の地震はかなりの大きな災害になるだろう。

ところが、こちらも事実は違った。バードのインタビューが掲載されたのは2011年4月4日号の『週刊プレイボーイ』で、インタビューは震災前日でも出たのは震災後である。そして肝心なことに、上記の発言は一切出てこない。

記事では沢尻エリカの離婚問題や政治について2ページ近く語ったあとに、漠然と「日本は大きな転換期にきている」「非常に大きな障害が起こると感じる」と述べている。しかし、その次にはネットの中に逃げ込んでいるという若者についても述べている。

東京都知事選についても予言しているが、東国原氏が当選すると予言し、結局外している。

バードが言う「障害」とは何だろうか。この漠然とした曖昧な言葉には、政治、経済、事件、事故、災害など、数多くの出来事が当てはまってしまう。

実際、震災前にこの取材を担当した近兼拓史氏は次のように書いている。

取材時には、この言葉は単に低迷する日本経済と無気力な草食系男子に対するエールだと思われた。

要するに曖昧であるため、何にでも当てはめることが可能だということだ。

思い出してほしい。これが「レトロフィッティング」である。曖昧なキーワードを並べ、後から判明した事実に合わせて予言は当たりだったと主張する。さらには忘れた頃に、言ってもいない具体的な予言が事前になされていたとも主張し始める。

数年前のスポーツ紙や週刊誌の記事など、今となっては国立国会図書館にでも行って調べなければまず確認できない。サイキック本人は嘘をついている自覚はなく、勘違いや思い込みのつもりなのかもしれないが、事実に対する誠実さは忘れないようにしたいものである。

ロン・バードは2016年1月23日に亡くなられた。故人には哀悼の意を捧げる。

【参考資料】

  • 「『9月に日本に大震災がやってくる』を信じますか」『週刊現代』(講談社、2013年8月10日号)
  • 矢追純一、ロン・バード『ロン・バード VS. 矢追純一『今、いちばん大切な本です』2012年以後・・・』(ナチュラルスピリット、2012年)
  • 「Ronbard.com Offical」(http://www.ronbard.com/)
  • 「ronald bard Twitter」(https://twitter.com/ronniebard)
  • Benjamin Fulford「Simply divined」『Forbes』(4/01/2002)(http://www.forbes.com/global/2002/0401/030.html)
  • 『本当にヤバイ陰謀論』(コアマガジン、2012年)
  • Joe Nickell『Real-Life X-Files: Investigating the Paranormal』(Univ Pr of Kentucky、2001)
  • 「全米No.1超能力者が緊迫する外交問題を予言」『東京スポーツ』(2010年11月21日付け、第26面、東京スポーツ新聞社)
  • 「ロン・バードの大予言『都知事選の結果?言っていいのか?』」『Weeklyプレイボーイ』(2011年4月4日号、集英社)
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