六星占術と大殺界


伝説 六星占術とは、中国に4000年以上前から伝わる (えき) 学、万象学、算命学をもとに占い師の細木数子氏によって編み出された占いである。

この占いは世間にあるような占いとは違い、科学的、統計的であり、その的中率には恐るべきものがある。なかでも「大殺界」と呼ばれる時期は運気が下降し、不幸に見舞われやすく、この時期に新しく事を始めるのはタブーとされている。

もしこのタブーを破れば、不幸に見舞われる可能性が高いので注意が必要だ。

 


 

謎解き 【伝説】で紹介したことは一般に六星占術についていわれていることである。さすがにこのような話を知ると怖くなるかもしれない。

しかし実際に六星占術を調べてみると、首を傾げたくなるような事が出てくる。
たとえば細木氏は、「この占いは統計学をもとにしています」と主張する。ところが実際に統計学で使われるような肝心の統計データが示されたことは一度もない。
本来の統計学と細木氏の「統計学」は違うもののようだ。

また「科学的」という言葉も、本来の科学とは全然違う細木流の独自解釈で使用されており、これらの話を真に受けて客観的な根拠があると判断してしまうのは早計だと思われる。

占いはときには人の人生を左右するものだ。よって、ここでは、より具体的に六星占術について検証していきたい。

 

中国4000年の歴史?

まずは六星占術のルーツとして書かれている、「中国に4000以上前から伝わる易学、万象学、算命学をもとに編み出された」という話について。

細木氏は、著書によって書いていることがバラバラである。1982年に出した初の占い本『六星占術による運命の読み方』(ごま書房)では、「六星占術とは、中国に4000年以上まえから伝わる万象学、算命学などをもとに、私が編み出したものです」(P.4)と書いている。しかし「易学」をもとにしたとはどこにも書かれていない。

ところが3年後に増補改題版として出された『運命を読む 六星占術入門』(ごま書房)になると、今度は「万象学」「算命学」をもとにしたという話はどこかに消え、同じ箇所で「六星占術とは、中国に4000年以上まえから伝わる易学をもとに、私が編み出したものです」(P.4)と説明が変化している。

なぜルーツが変わっているのだろうか? これには陽明学の大家・安岡正篤氏の存在が関係していると思われる。というのも、安岡氏は『易と人生哲学』や『易学入門』など、易に関する本をいくつか書いており、細木氏は途中からその安岡氏の弟子を自称するようになったからだ。

細木氏にとっては、「六星占術は易学をもとに編み出された」と書いたほうが安岡氏との関係を印象付けることができる。さらに箔付けにもなるので好都合だったのではないだろうか。(実際、著書では安岡氏の名前は何度も出てくる)

しかし途中で参考にした占術が新たに加わり、改良されたというのならまだしも、弟子を自称するようになってから、いきなりルーツそのものが何の説明もなく改変されるとは驚きである。

このようなことが簡単に行われるようでは、4000年の歴史を誇る占術をもとにしているという話も、そのまま信用するのは控えたいところだ。

 

当たりが多い占い

続いては、この占いの仕組みについて。
まず、ご存知ない方のために大まかに説明しておくと、六星占術とは生年月日から人を六つの星人(土星人、水星人、金星人、火星人、木星人、天王星人)に振り分け、各星人別に12の運気(種子、緑生、立花、健弱、達成、乱気、再会、財成、安定、陰影、停止、減退)が1年ごとに巡ってくると主張する占いである。

この12の運気の中でも、「健弱」は小殺界、「乱気」は中殺界、「陰影」「停止」「減退」は大殺界と呼ばれ、良くないことが起こるとされている。これらの時期、とくに大殺界の時期は注意が必要で、もしこの時期に新しいことを始めると不幸を招き、その影響は子孫の代にまで及ぶこともあるという。

六星占術が恐れられるのにはこの殺界の影響が大きく、過去の自分の運勢を見てみたら、不幸が起きたときは「すべて殺界の時期だった」として、この占いはすごいのだと思ってしまっている人も多い。

ところがよく調べてみると、殺界の時期に不幸があることは、それほど驚くことではないことがわかる。

たとえば「大殺界」については、12年のうち3年間という長い期間が当てはまる。さらに六星占術では、年運だけでなく、月運、日運もある。

試しに年と月だけで殺界の割合を計算してみると、大殺界の場合は実に人生の43.75%(各12年のうち5年3ヶ月)が当てはまってしまう。 これに中殺界を加えると55.56%(各12年のうち6年8ヶ月)、小殺界まで加えれば65.97%(各12年のうち7年11ヶ月)が殺界に当てはまってしまうことがわかる。

さらに「日運」や「相性運」まで考慮に入れれば、70パーセントを超えることになる。すると人生の7割以上が凶運期ということになってしまう。

これでは一般的に思われているよりもずっと多く「当たり」が入ったクジを引いているようなものである。「何かついてないな」と思って六星占術で占ってみたら、殺界に当てはまっていたというのも当然ではないだろうか。

 

カウント方法によって当たりは増える

ここでは大殺界について、さらに詳しく見ていきたい。この時期だけでも人生の約44%を占めることはすでに書いた。これは半数に近い確率なのだから、かなりのものである。しかし実はこれ以外にも当たりが水増しされる要素がある。

たとえば細木氏が初めて結婚をしたのは21歳のとき。彼女にとってこの年の運気は「減退」だった。つまり大殺界である。結局わずか3ヶ月で離婚することになったため、当然この離婚は「大殺界に結婚した」という理由で“当たり”としてカウントされる。

ところが調べてみると、結婚した年は「減退」の大殺界である一方で、離婚した年の運気は「種子」なのである。もしこれが逆だったらどうだろう。つまり、結婚した年は 「種子」(殺界以外なら何でもいい)で、離婚した年が大殺界だったら?

当然、この場合も“当たり”としてカウントされるはずである。

しかもこれは離婚以外にも当てはまる。例えば、誰かが事故を起こしたとしよう。
当然、その年が大殺界であれば“当たり”としてカウントされるが、もしその年が大殺界でなかったとしても、免許を取った年(月)や車を買った年(月)が大殺界であれば、“当たり”としてカウントすることが可能である。

このほかにも、就職、引越し、出産、ケガなど、「始めた時期」「不幸があった時期」のそれぞれを当たりとしてカウントできるものはたくさんある。

さらに「不幸」という言葉自体が非常に曖昧だ。小さなことから大きなことまで、考え方次第で不幸だと思えてしまうことなど、たくさんある。特に、ついていないときや落ち込んでいるときなどは、後から振り返ってみれば大したことがないと思えることでも、そのときは深刻に悩んでしまったりするものだ。

 

本人は実行しているのか

続いては大殺界の過ごし方や、著書、テレビなどで細木氏が語っていることを本人はしっかり実行しているのかについて。

まずは結婚。細木氏は『六星占術 心の常識』(主婦と生活社)という本の中で、「女性が結婚してからも仕事を続けるというのは、よほど特殊な事情でもないかぎり、陰陽の原理、天地自然の法則に反した行い」(P.95)だと書いている。

さらに、その後には自分が書いていることはさも守れているかのように、「事実、私自身、いまもこうして仕事にはげんでおりますが、私は結婚をしておりません」(P.95)と続けている。

ところが実際に結婚していた時期はどうだったのかというと、最初の結婚では、結婚後に「バンビーノ」という子ども洋服店をわざわざ開業して仕事を続け、2度目の結婚でも占い師を廃業したりなどしなかったのである。つまり自著で上記のようなことを語っておきながら、自分は実行などしていなかったということだ。

次に転職。細木氏は、「大殺界に人生を左右するような新しいことは始めるな」と言っている。このタブーを破ると不幸が訪れ、その影響は子孫の代まで及ぶこともあるという。

当然、主張している本人なのだからこのタブーは守っていると思うだろう。ところが実際には、ここでも言っていることを実行していないことがわかる。

そもそも土星人(+)の彼女にとって、初の占い本『六星占術による運命の読み方』を出版した1982年が大殺界だった。この本では堂々と「大殺界では転職はタブー」だと書いているが、実業家から占い師に転職した自分は例外なのだろうか?

 

考える力

さて、ここまで調べてきた結果を書いてみたものの、変わらず信じ続ける人はたくさんいるかもしれない。そういう方々に対してあれこれ言うつもりはない。しかし、わずかでも疑問を持っている人や、悩んでいる人などは少し考えてみてほしい。

『予言の心理学』(KKベストセラーズ)という本の中で、著者の心理学者・菊池聡氏は次のように書いている。

「知ることこそ第一歩であり、考えるための最大の力になる」

「予言について懐疑的に考え、情報を集め、自分で判断してほしい。(中略)盲信して思考を停止させることこそ、私たちがよりよく生きる道をふさぐ行為となる」

健全な懐疑精神を持つことは、占いを盲信しないための予防薬となる。
困ったときや悩んだとき、占いによって未来を示されれば参考にしてみたくなる気持ちはよくわかる。けれども、その示された未来は本当に正しいのだろうか、少し問いかけて吟味してみるのも悪くないのではないかと思う。

あなたがこの占いについて冷静に考え、自分で判断していただけるようになれば幸いである。

(記事公開日:2005年6月12日)
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【参考資料】

  • 『六星占術による運命の読み方』 細木数子 (ごま書房)
  • 『運命を読む 六星占術入門』 細木数子 (ごま書房)
  • 『六星占術 宿命大殺界』 細木数子 (日本文芸社)
  • 『女の履歴書』 細木数子 (廣済堂)
  • 『平成16年度版 六星占術による土星人の運命』 細木数子 (KKベストセラーズ)
  • 『平成16年度版 六星占術開運暦』 細木数子 (KKベストセラーズ)
  • 『六星占術の極意』 細木数子 (主婦と生活社)
  • 『新・六星占術の極意』 細木数子 (主婦と生活社)
  • 『六星占術 心の常識』 細木数子 (主婦と生活社)
  • 『大予言の嘘―占いからノストラダムスまで その手口と内幕』 志水一夫 (データハウス)
  • 『天中殺算命占術』 高尾義政 (青春出版社)
  • 『グラフ占星術』 御射山宇彦 (オリオン出版社)
  • 『易経 上・下』 高田 眞治 / 後藤 基巳 【訳】 (岩波書店)
  • 『予言の心理学』 菊池聡 (KKベストセラーズ)