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証拠文書が物語る「ジュセリーノの予言」

伝説

現代のブラジルには恐るべき的中率を誇る予言者がいる。彼の名はジュセリーノ・ノーブレガ・ダ・ルースこれまで数々の大事件や大災害を夢の中で予知し、各国に警告の手紙を送り続けている予言者である。

ジュセリーノ

ジュセリーノ

彼の予言の特徴は、何といってもその正確さと証拠能力の高さにある。日付や場所はもちろん、人物名や被害の規模まで、きわめて正確に特定できるのだ。

彼は予知した内容を記した文書が事件前に書かれたものであることを証明するため、原本とそのコピーを公証役場へ持ち込んで文書がその日に存在した証拠を残している。

さらに念の入ったことに、原本は登記所で登記し、コピーのほうは郵便局で警告したい相手に送る。ここまですれば完璧である。予知の内容を記した文書が事前に存在することが公的に証明されるのだ。

これだけのことをしながら、ジュセリーノの予言的中率は90%を超えるという。まさに恐るべき予言者である。


Photo by 「Vidente que previu morte de Eduardo Campos alertou Cristiano Araújo sobre acidente」(http://www.aratuonline.com.br/noticias/vidente-que-previu-morte-de-eduardo-campos-advertiu-cristiano-araujo-sobre-acidente/)

謎解き

ジュセリーノといえば、数年前に日本で紹介されて以来、テレビや本、雑誌などで、たびたびその予言の正確さや証拠能力の高さが取り上げられた予言者である。

ところが実際に詳しく検証してみると、肝心の予言の的中率や証拠能力には大きな疑問符がつくことがわかる。

確定日付は証拠にならない

ジュセリーノによれば、事件前に予知文書が書かれたことは公証役場によって証明されているという。彼は予知夢で見た内容をタイプライターで原本とコピーの2枚に清書し、それを公証役場に持ち込んでいる。

文書

ジュセリーノが証拠として出す文書。(「モクスペ」日本テレビ、2007年12月20日放送より)

その際、役場ではその持ち込まれた文書にシリアルナンバー、日付印、割印などが押され、「文書がその日付に存在したことが証明される」という。これは「確定日付」と呼ばれるものだ。普通なら確かな証拠になると思うだろう。

ところがこれは証拠にはならない。確定日付によって証明される「文書」とは、より正確でわかりやすい表現を用いれば「紙」のことである。役場の方でコピーは取らないため、その紙に記されている内容については一切保証されないのだ。

ただ持ち込まれた紙がその日に存在したことを保証するだけなのである。内容が保証されないのであれば、事前に予言されたものであるという証拠にはなり得ない。

また事前に内容が確認されていない以上、事件などが起きた後に詳細を書き加える可能性も出てくる。

やり方の一例をあげるとこうだ。まず事件の日付や被害規模など、詳細については後で加筆できるようにスペースを空けた文書を作成。それを公証役場に持ち込んで確定日付をしてもらう。

すると(未来から見て)過去の日付が役場によって刻印された紙を手に入れることができる。あとは何か重大な事件が起きてから詳細を書き加えればいい。

実際、ジュセリーノが使っているタイプライターはオリベッティ社の「リネア98」というモデルで、その日本での販売元であるNOAX社へ私が問い合わせたところ、同機は途中に空白を入れて文書を作成し、あとでその空白部分に文字を書き加えることが可能であるという。

登記された文書は証拠になるのか?

続いては登記所の文書について。先に述べた確定日付とは違い、登記所では持ち込んだ原本を直接保管するため簡単には偽造できないようになっている。

このことはジュセリーノが出演した日本テレビの「モクスペ」(2007年12月20日放送)でもわかっていたようだ。彼がよく予言文書を持ち込むというサンパウロの第二登記所に行き、本当に予言文書の原本が保管されているのか確かめようとしていたからである。

番組で確認のターゲットとして選ばれたのは、2007年4月17日に起きた長崎市長銃撃事件の予言文書。ジュセリーノによれば、この事件は1997年の時点ですでに予言していたという。番組では取材班が実際に登記所へ向かい、次のナレーションが流れた。

もしここに97年の日付で予言が保管されていれば動かぬ証拠となる。

交渉の結果、特別に保管されている文書の閲覧を許可され、ついにマイクロフィルムに収められた原本を発見。そこにあったのは「97年7月31日」という日付が記された文書だった。こうしてめでたく事件の前に警告文書が存在していたことは証明されたという。

だが本当にそうだろうか? 問題の原本が画面に映し出されるシーンをよく確認してみると、ひとつおかしなことに気がつく。下に示した画像をご覧いただきたい。この登記申請書の文書には、「下記にサインした者が文書の登記を申請する」旨が記されている。

マイクロフィルム

「モクスペ」(日本テレビ、2007年12月20日放送)より

そして画面中央の四角い枠の中には、「13/07/2007」つまり「2007年7月13日」という日付が記されているのだ。その下にはジュセリーノ本人のサインがある。

これはつまり、長崎市長銃撃事件が起きた2007年4月の3ヵ月後にあたる2007年7月に「97年の日付と事件の詳細」を記した文書を作成し、それを登記所に持ち込んだことを示している。これでは公証役場の確定日付と同じく証拠にはなり得ない。

予言の的中率は90%?

最後はジュセリーノによる「事前に公表していたことが確認できる予言」を、この記事を最初に書いた2008年に絞って検証してみた。一体、どのくらい的中しているのか見てみよう。

予言の冒頭にて的中は○、一部当たっているものや真偽不明で微妙なものは△、ハズレは×、備考は文末に※で示した。

※スマホなどで閲覧の場合、以下の表は画面を横にすると、あまりはみ出さず読みやすい。

1月
× 1月15日にインドネシアでM7.5の地震。バリ島では死者5000人以上。
× 1月下旬に東京で大雪が降る。交通機関にかなりの混乱が起きる。
猛吹雪によって日本の空港では業務に支障が出る。(※北海道の新千歳空港が一時閉鎖された)
× 新年早々にリオデジャネイロで暴動。
2月
× 2月15日~28日の期間にM6.3の地震が神奈川県川崎市で発生。甚大な被害をもたらす。
3月
× 6日にメキシコでM6.7の地震。
× 7日にイランでM7.3の地震
× 8日に台湾のプーリー市でM6.8の地震。被災者は3000人以上。
× 8日にコロンビアではM6.8の地震。
× 25日に太陽の表面で爆発現象が活発になる。
4月
× 3日にギリシャでM6.6の地震。
× ロシアのモスクワから100kmの地帯でM6.8の地震。
× 4月か5月14日に千葉でM6.7の地震。
5月
× 7日にインドネシアでM6.5の地震。
× 9日にロシアのユジノサハリンスクでM6.8の地震。死者は数千人。
× 15日にペルーでM6.6の地震。
× 24日にトルコでM6.3の地震。死者は300人以上、負傷者は数千人。
× 25日にエルサルバドルでM6.3の地震。
× 千葉でM7.2の地震。
× ノロ・ウィルス対策が日本政府の最重要課題になる。
× ブラジルで警察センターや警察署に対する暴力が引き起こされる。
× 強風がサンタ・カタリーナ州のツバロンとブラジルの南部地区に吹き荒れ、大きな問題を引き起こす。
× ブラジルのアクレ州で豪雨と猛暑による洪水、それによって派生する多くの問題で苦しむ。
× ブラジルのマトグロッソ州とマトグロッソ・スール州で口蹄疫が発生。
× ブラジルで航空機がサンタ・カタリーナ州のフロリアノポリスへと向かう途中で墜落し、多くの犠牲者をもたらす。
× リオデジャネイロで交通戦争が勃発。多くの犠牲者を出す。
× パラグアイでは出血性デング熱が55%の増加となり、いたる所で多くの犠牲者を出す。
× 太陽の活動が活発化し天候に問題をもたらす。火事がいたる所に広がる。
6月
× 6日にパキスタンでM6.8の地震。
× 16日に台湾のプーリー市でM7.4の地震。死者は数千人。
× 大阪でM6.3の地震が発生。多くの問題が生じる。
× 台風が日本を直撃。大問題が生じる。
× インドネシアのジャカルタでM7.2の地震。
中国で台風による洪水が起き、数千人もの死者を出す。その台風はバングラデシュとフィリピンも襲い、被害が出る。
(6月25日に内モンゴル自治区で大雨によりダムが決壊。約1万6000人が被災した。しかし死者は一人も出なかった。フィリピンでは台風6号が20日に上陸。死者は約600人。バングラデシュには上陸せず、被害も出なかった。なおフィリピンは毎年20以上の台風に襲われる)
× カリブ海でハリケーンが大問題。メキシコ、ジャマイカで多くの死者。
× アメリカで三つの竜巻がテキサス州などを襲い、重大な問題をもたらす。
× インドでは洪水によって数十人もの人々が犠牲になり、千人以上のホームレスを生み出す。
× ブラジル北東部のサンパウロやリオデジャネイロの医療機関で、ひどい医療サービスや管理体制の問題が噴出するスキャンダルが起こる。多額の基金横領の問題も発覚。
× アフリカのエイズ感染者数が人口の40%以上に達し、あらゆる地域で死者が出る。
7月
× 07年か08年7月13日に日本は巨大地震の被害を受け大勢の命が奪われる。
× 18日にフィリピンでM8.1の地震。
× チリでM6.9の地震。その揺れはサンパウロでも感じられる。
× アマゾンでM3.1の地震。
× 強力な台風が日本を襲って大混乱を招き、多くの死者を出す。
フランス、ドイツ、モルドバを大洪水が襲い、数千人のホームレスと死者を出す。(26日から28日かけての豪雨により、モルドバでは29日に洪水が発生。全・半壊家屋は約1200棟だったものの死者は2名。フランス、ドイツでは洪水が起きなかった)
× オーストラリアを大型サイクロンが襲い、住宅破壊など多くの問題が出る。
× ブラジル南部でホームレス間の対立が起き、各地で侵略と抗議運動が勃発。
× トルコではイラクと隣接するクルド人との紛争がいたる所で増加。
× イラク北部で爆破テロが起こり、100人以上の死者が出る。
× アルジェリアで反乱と紛争が起き、国中を血に染める。M7.1の地震も発生。
× 日本で消費が4.2%増加し、経済成長が加速。
× 日本で7月16から9月15日の期間に気温が43~45度を記録。それは街角の電光掲示板に表示される。オフィスや家のエアコンは故障が相次ぎ、 熱中症で倒れる人が屋外だけでなく屋内でもいたる所で見られる。デング熱も流行。
8月
× 6日に東京でM6.5の地震。
アメリカ、メキシコ、ジャマイカに大きな台風が直撃。甚大な被害をもたらす。(8月末にカリブ海でハリケーン・グスタフが発生。死者はアメリカで16名、ジャマイカでは11名。物的被害はジャマイカであったものの、アメリカでは大きな被害はなかった。なお、グスタフによる被害が最も大きかったのはハイチ。メキシコには全く被害がなかった)
台風が日本と中国、韓国を直撃。何千もの家が倒壊。豪雨による洪水で多くの死者が出る。(6日に台風9号が中国の広東省に上陸。死者37名、行方不明者40名の被害が出る。ちなみにこの台風で最も大きな被害を受けたのはベトナム。日本と韓国には上陸せず全く被害がなかった)
× ブラジルのフォルタレーザでM4.2の地震。
× イスラエルの首都でM5.3の地震が起き、警戒態勢が敷かれる。
× リマでM7.8の地震が起き、何十人もの死者と何千人ものホームレスが出る。
× パキスタンのカシミール地方でM8.2の地震。何千人もの死者と家屋の倒壊を招く。
× ブラジルの首都ブラジリアの連邦区で黄熱病が増え、厚生省に警戒態勢が敷かれる。病原菌の突然変異があり、流行する。
× ブラジル南部で干ばつ。リオグランデ・ド・スール州ポルト・アレグレは大地震によって洪水が起こり大雨で孤立する。
レバノンでのテロ攻撃はいたる所で反乱と紛争へ発展。63人以上が亡くなる。(13日に爆弾テロが起き、死者18名を出した。しかしいたる所で反乱と紛争には発展していない)
9月
× 6日にモンゴルでM6.4の地震。
× 7日にエクアドルでM5.9の地震。
× 13日にM8.6の地震が日本の東海地方で起こる。3万人が被災し死者は600人以上。もしくは9月13日に中国でM9.1の地震が起き、30m以上の津波が海岸を直撃する。震源地は南寧と海南島。死者は100万人に上る。
インドネシアのスマトラ島でM6.4の地震。
(9日にスマトラ南部でM5.4の地震。なおスマトラ島の属するインドネシアは日本と同じく世界有数の地震大国)
× ブラジルの首都ブラジリアの連邦区で黄熱病が増え、厚生省に警戒態勢が敷かれる。病原菌の突然変異があり、流行する。
ブラジルのバイシャーダ・タンチスタでは海が荒れて最高6mの高波が襲い、人々がパニックに陥る。(真偽不明)
ブラジルの川の支流減少と雨の不足はサンパウロに給水活動をもたらす。(真偽不明)
アクレ、アマゾン、パラーで紛争による森林の伐採が違法に行われ、材木が運び出される。それは監査官の利益供与によるもの。(真偽不明)
× ウルグアイでの紛争は多くの犠牲者を出す結果に終わる。
× インドで列車事故が起こる。死者は数百人。
× キューバのカストロ議長の健康問題がぶり返し、生命の危険にさらされる。
× ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルでテロが発生。犯人集団はアリゾナから来る。
× 日本で鳥インフルエンザが発生し、9月26日までに他のすべての国に広がり、多くの日本人が死亡する。
10月
×  4日に台湾でM6.8の地震。
× 日本でM6.6の地震。柏崎刈羽原子力発電所内で放射性物質が漏れる。
× チリでM7.5の地震。何十人もの死者が出る。
× インドネシアのスマトラ島とジャカルタに隣接する地方でM7.3の地震。
× オランダは海面上昇によって損害を受ける。
× 経済発展に伴う問題で中国は水不足。干ばつによる経済崩壊を招く。
× エジプトでテロ攻撃。43人が死亡、多数の負傷者を出す。
× 南アフリカで政治体制と民族主義に対する暴力により大紛争が起きる。
× パキスタンのイスラマバードで急進的イスラム教徒による反乱時の暴動で113 人が死亡。
× アルゼンチンのクリスティーナ・キルチネル新大統領の新政策に対する反政府運動が起こる。
× ブラジル南部で大干ばつが始まる。
× ブッシュの次に大統領になるのはアル・ゴア。
11月
× 12日にインドでM6.5の地震。
× 5日にフィリピンでM7.8の地震が起き、津波も発生。死者は5000人以上、被災者は数千人。
× ブラジルのサンパウロ市の新市長にジェラルド・アルキミンが選出される。
× ブラジルの文部省、厚生省、その他の省で基金の横領が発覚する。
× ブラジル各地の刑務所で反乱が起きる。
× 日本でインフルエンザが増加。インドネシア、韓国、中国にサブタイプ9が出現。
狂犬病がブラジルのサンパウロ、ミナスジェライス、マット・グロッソ・ド・スール、ゴイアスなどの都市中心部に現れる。(真偽不明)
× デング熱がブラジルで流行、干ばつや嵐によってさらに酷くなる。流行の火の手はいたる所に見られる。
× M6.5の地震が東京から60kmの地域を襲う。
× HIVウィルスに対する最初の実験的ワクチンが「ルアナー」という植物からつくられ、この病気にかかっていない人に免疫措置がなされる。
12月
× コロンビアでM6.6の地震が起きて甚大な被害をもたらす。
× メキシコではM7.9の地震が起きて甚大な被害をもたらす。
× インドネシアのスマトラ島でもM7.4の地震が発生し、甚大な被害をもたらす。
× アメリカの大学が襲撃され、20名以上の死者と負傷者が出る。ノルウェーでも同じ問題が起きる。
× アメリカのカリフォルニア州で大火事が発生。熱波をもたらし、大きな被害。
メキシコ湾流と北大西洋海流の動きが崩れ、大きな季節変動が起きる。これにより、ヨーロッパでは局地的な氷河期の原因となる温暖化の異常な結果をもたらす。真偽不明)
× 2008年の冬は2007年よりも寒くなる。
気象庁では全国平均気温を出していないため、日本中にある1000ヶ所ほどの観測地点をすべて調べた。その結果は2007年冬(11月・12月)の全国平均気温は6.6度。2008年は6.8度。08年の方がわずかに暖かい)
月日不特定
× 北米、インド、中国、タイ王国、アフリカが猛暑になり、水不足により数千人が死亡。アフリカでは水争いによる暴動が多発。
× 突然変異によって新しいウィルスが日本に出現。

それでは最後に気になる的中率を計算してみよう。当たりがたったの2件、一部当たり、および真偽不明が10件(半分として計算)、外れは94件だった。

すると予言の的中率は約7%という結果になる。2008年の予言に限っているとはいえ、これで的中率が90%などとはデタラメもいいところである。

【主要参考資料】

  • マリオ・エンジオ『未来からの警告~ジュセリーノ予言集Ⅰ』(たま出版)
  • ジュセリーノ・ノーブレガ・ダ・ルース『ジュセリーノ未来予知ノート』(ソフトバンク・クリエイティブ)
  • ジュセリーノ/サンドラ・マイア『未来からの警告~ジュセリーノ予言集Ⅰ』(たま出版)
  • 「FBI超能力捜査官12」(日本テレビ、2007年9月25日放送)
  • 「モクスペ」(日本テレビ、2007年12月20日放送)
  • 「ジュセリーノ公式サイト」(http://www.jucelinodaluz.jp/)
  • 「外務省ホームページ」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/)
  • 「気象庁ホームページ」(http://www.jma.go.jp/jma/index.html)
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