透視的中率90%以上を誇る「ゲイル・セントジョーン」

伝説

2006年4月7日、茨城県稲敷市で女性の遺体が発見された。この女性(以下「Yさん」)は、数ヶ月前から行方がわからなくなっており、テレビ朝日の「TVのチカラ」でもたびたび取り上げられてその行方が探されていた。

ゲイル・セントジョーン

ゲイル・セントジョーン。「TVのチカラ」 (テレビ朝日、2006年2月13日放送分)より。

そうしたなか、Yさんの遺体発見を透視によって的中させた超能力者がゲイル・セントジョーン。過去30年間で1000件もの依頼を受け、透視の的中率は90%を誇る全米屈指の超能力者である。

なお日本で有名なジョー・マクモニーグルは80%、ナンシー・マイヤーは77%だとバラエティ番組内では設定されている。

ゲイルの透視の精度は恐るべきもので、アメリカでは数多くの人気番組でも取り上げられているほど。2006年に起きた事件の透視的中も、彼女の90%を誇る的中率を考えれば当然の結果だといわれている。

謎解き

ゲイルが担当した事件は結果的に迷宮入りすることなく、失踪者の遺体が発見されたことから番組でも大々的に取り上げられることになった。

そのため彼女の透視は驚くべき的中率を示しているかのように思われている。ところが最初から順を追って検証いくと、テレビで取り上げられていたほど、すごい透視ではなかったことがわかってくる。以下で見てみよう。

事件の概要

まずはゲイルが担当した事件をご存知ない方のために、その概要をざっと紹介しておきたい。

2005年12月14日、茨城県稲敷市で当時28歳だったYさんが家族と一緒に住んでいた自宅からいなくなった。この日の午前7時頃に母親がYさんを起こすために部屋へ入ると、窓が開いた状態の中、財布、携帯、眼鏡、コンタクトレンズなどはそのままで、靴下や普段はいているスニーカーも残されたまま姿を消していた。

驚いた母親は息子と共に周囲を探しまわるが、Yさんの部屋から5メートルほどのところにある畑に、彼女のものと思われる裸足の足跡を発見した以外は痕跡を見つけられなかった。

そこで警察に捜索を依頼。失踪当日から地元の消防団・住民も含め、のべ110人が付近を捜索したものの手がかりは得られなかった。

ゲイルの透視結果

Yさんの行方がわからなくなってから約1ヵ月後、家族は「TVのチカラ」へ捜索を依頼。番組で情報提供を呼びかけたところ、失踪当日の深夜(気温は-6度)、自宅近くの竹やぶの道でパジャマ姿で立っているYさんを見かけたという目撃情報などが寄せられた。

しかし残念ながら居場所や生死に関する有力な情報は得られなかった。

そこで番組では超能力捜査を始動。担当の超能力者としてゲイル・セントジョーンが選ばれた。さっそく彼女は2006年1月25日に来日すると、まず次の透視を行う。

自宅から西のポイント、それが頭から離れない。その方面に彼女がいるように感じる。
小川が見える。それに大きな岩も見える。
何度も何度も繰り返し、台地(斜面)という言葉が聞こえる。
上空から見ている感じなのだが、そこには道路が見える。それは土の道路。
Yさんの生死について現時点では答えられない。

この時点での透視結果に出てきたキーワードをまとめると、実際に番組内で示された下の画像のようになる。

ゲイルが最初に透視したキーワード

ゲイルが最初に透視したキーワード

番組では、これらのキーワードが全てそろっている場所にYさんがいるはずだとした。そしてさらに場所を特定するため、ゲイルを現場へ向かわせて以下の透視結果も引き出した。

数字の「3」が頭から離れない。
Yさんはすでに亡くなっている。

これでゲイルが最初に透視した内容は全部出揃うことになった。番組ではスタッフがゲイルと現場を歩いてまわり、次々とこれらのキーワードと一致する場所を見つけていく。

ここではこれらが的中例とされた

ここではこれらが的中例とされた

このあたりの、「超能力者の透視」→「透視通り全てが存在していた」という展開は、超能力捜査番組のお約束である。

ともあれ実際に現場を歩いて透視したゲイルは、自宅から西の方角にあるお墓から半径500メートル以内の森にYさんの遺体があると透視。

お墓から半径500メートル以内だと透視

お墓から半径500メートル以内だと透視

番組でも、すべてのキーワードがその場所に揃っていることから、番組史上最大規模の大捜索を行うことが決定された。

遺体の場所を断言したシーン

遺体の場所を断言したシーン

テロップでも強調

テロップでも強調

番組ではこのゲイルの透視を受けて総勢100人による大捜索を決行。彼女からは新たに「三角の形をした森」を捜索するべきだとの透視も得たため、お墓から半径500メートルの範囲内にある該当の森を捜索。さらに最終的にはもっと範囲を広げ、付近の森で「三角の形」に該当するすべての森を捜索した。

はたしてYさんの遺体は発見されるのか。番組では大いにその発見が期待されたものの、残念なことに手がかりは何一つ得られずに終わってしまった。


Photo by 「TVのチカラ」 テレビ朝日 (2006年2月6日、13日放送分)

言い訳と新たな透視

ここまで大規模な捜索を行っても該当エリアではまったく手がかりすら発見できなかったゲイル。しかし彼女はひるまない。ひと足先に帰国していた彼女は、スタッフから手がかりが得られなかったことを電話で伝えられると、次のように述べた。

「Yさんは今でも心の苦しみを抱えたままでいるの。そして今は見つけて欲しくない、そう思っているのよ」

……そうだとすると、結局、あの大捜索は何だったのか、と思わずにはいられない。ところが彼女はここで新たな透視を発表する。

「女性は家を中心に半径800メートル以内の所に必ずいる」
「今年の3月から5月の間にその場所を通った心の優しい人に発見される」

ここではちゃっかり300mも範囲が広がっている点や、さりげなく中心地が変更されている点にご注目いただきたい。

その後、結果的に2006年の4月7日、自宅から約630メートル離れた場所でYさんの遺体(自殺だと考えられている)は発見され、ゲイルの透視では、「発見場所」「発見時期」の他に、「小川」、「台地」、「数字の3」、「土の道路」が当たりとされた。

現地での検証

番組ではYさんの遺体発見を受けて、2006年4月17日に特番を放送。上に挙げたいくつかのキーワードが的中とされた。

ところが結果だけを見れば当たっているように思えるキーワードも、詳しく検証するとおかしな点が明らかになってくる。ここから先は、ゲイルと同じく、私も実際に現地へ行って調べてきたので、その検証結果を示したい。

透視キーワードその1
「家を中心に半径800メートル以内のところにいる」

これは最初に透視で断言した場所と、実際に発見された場所を比較してみれば、その残念さがよくわかる。

最初は自宅から西の方角だと透視

最初は自宅から西の方角だと透視

実際の発見場所は南東で正反対

実際の発見場所は南東で正反対

左右では縮尺が違っているために説明しておくと、1番目の画像ではゲイルが最初に透視した場所は画面左側の範囲である。しかし実際の発見場所は2番目の画像の画面右下の×印で示された箇所だ。見比べればわかるように、正反対の場所だった

Yさんは失踪時、マイナス6度という寒さの中、裸足にパジャマ姿で、さらに視力が非常に悪いにもかかわらず眼鏡やコンタクトをつけず、財布などの所持品も持たずに家を出ていた。

ゲイルのように自殺説を採るなら、これらの条件の中、自宅からそう離れた場所まで移動することは難しいだろうと容易に想像がついた。


Photo by 「TVのチカラ」 テレビ朝日 (2006年2月6日、4月17日放送分)

透視キーワードその2
「3月から5月の間にその場所を通った心の優しい人に発見される」

これは、実際の発見日が2006年の4月7日だったことから当たっていたことになる。ただし大捜索を行って手がかりを得られなかった時期は、まだ現場に雪が残る2月だった。そのため雪解けの季節である春に遺体が発見されやすくなるとヤマをはっていた可能性は考えられる。

実際、遺体を発見したのは、雪解けした春に現場近くの山へ山菜取りに行った地元の住民だった。

透視キーワードその3「小川」

番組では遺体が発見された場所が農業用水路だったことから、これがゲイルの透視していた「小川」ではないかと指摘していた。

しかし現場に行って確認したところ、この用水路はすぐ近くまでいかなければ存在が確認できないほどわかりづらいものだった。また地元の住民や消防署などでも聞いてみたが、この用水路を「小川」だと認識している人は誰もいなかった。

ちなみに超能力者が「水」にまつわるキーワードを透視結果に入れることは(大抵どこにでもあるので)常套手段である。

また、もともと自宅周辺には別に川が流れており、よほど離れた場所でなければ関連づけることが可能だった。

透視キーワードその4「台地(斜面)」

このキーワードは発見現場の近くにあった山の裏側の斜面を指して「的中」としていた。確かに「台地(斜面)」には見える。しかし断崖絶壁にでもなっていない限り、大抵の山はこのキーワードに当てはまってしまう。私が現地に行ったときも、同じような形をした山を(それぞれ離れた場所で)いくつも確認することができた。

しかもゲイルが最初に透視した際、発見現場から約1キロ離れた森が高台になっていたことを指して彼女は、「こちらから見ると、台地になっているように見える。ここでいいのではないか」などと言っていた。

要するに、どこにでも当てはめることができるキーワードなのである。

透視キーワードその5「数字の3が頭から離れない」

このキーワードが的中とされたのは、発見現場近くの電柱のプレートに刻まれた数字だった。実際に現場に行って確認してところ、確かに「3」を含んだ数字が刻まれていた。(下写真)

現場近くの電柱

現場近くの電柱

結果だけ見れば、確かに透視は当たっているように見える。しかし、ここで冷静に考えてみよう。

ゲイルは、「数字の『3』が頭から離れない」と言っていたものの、「電柱に取り付けられているプレートに数字の『3』が刻まれている」と言っていただろうか?

もちろん、そんな具体的なことは言ってない。ゲイルは単に数字をひとつ挙げただけだった。

こういった曖昧なキーワードを挙げておき、あとから判明した事実に合わせて当たりをこじつけるテクニックのことを、専門用語で「レトロフィッティング」と呼ぶ。

レトロフィッティングで最もよく用いられる手法は数字をひとつあげておくことである。そうすることで、住所、距離、人数、車のナンバー、電話番号、日付など、あとからいくらでも候補を選ぶことができるようになる。

実際、最後はプレートに刻まれていた数字が“的中”とされたものの、最初は発見現場からずっと離れた場所にあった「三叉路」(三又に分かれた道)が「的中」とされていた(下写真)。

この三叉路が最初は的中とされた

この三叉路が最初は的中とされた

おそらく遺体が発見された日付が「4月7日」ではなく、3月や3のつく日であったなら、当たりとしてこじつけられたであろうことは想像に難くない。

透視キーワードその6「土の道」

最後は発見現場の脇にあったことから当たりとされた「土の道」である。番組では的中したことにしていたが、現場に行って確認したところ、この道は表面が土ではなく石と草からなっていることがわかった。

実際は石と草(右上に民家がある)

実際は石と草(右上に民家がある)

またゲイルは、このキーワードを透視した際、「上空から見ている感じなんだけど、そこには道路が見える」「それは土の道路なの」と言っていた。しかしこれも現場で確認してわかったが、この道のすぐ隣には民家があった。

もし本当にゲイルが上空からのビジョンでこの道を透視したのであれば、そのすぐ隣にあり、重要な手がかりになる民家についても言及していなければおかしいはずだ。ところが彼女は民家については何も言及していなかった。

曖昧さが重要

最後にゲイルの透視についてまとめておきたい。わかりやすく彼女の透視の特徴をあげるとすれば、それは「曖昧」である。

ゲイルがあげたキーワードの数々は、その曖昧さゆえに現場の複数の箇所で当てはめることができていた。キーワードの中に、現場のような地方なら大抵どこにでも当てはまりそうなものを含ませていたことも幸いした。

実際のところ「川、岩、台地、土の道路」といったキーワードがまったく当てはまらない地方を探すほうが難しい。

曖昧なキーワードをあげておけば、あとは番組のスタッフが勝手にこじつけてくれる。しかも「西」「岩」いつのまにか無かったことにされた「三角の森」など、明確に外れた透視結果は当たりを大々的に強調されると記憶に残りにくい。番組での検証も大変甘いため、大抵のキーワードが当たっていたかのように思えてしまう。

これが、ゲイルの「透視的中率90%」の正体ではないだろうか。正確だから当たるのではなく、曖昧だから当たっているように思えてしまうのである。

【参考資料】

  • 「TVのチカラ」(テレビ朝日、2006年2月6日放送分)
  • 「TVのチカラ」(テレビ朝日、2006年2月13日放送分)
  • 「TVのチカラ』(テレビ朝日、2006年4月17日放送分)
  • Joe Nickell『POLICE “PSYCHICS” Do they Really Help Solve Crimes?』
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