ゲイル・セントジョーン


伝説2006年4月7日、茨城県稲敷市で女性の遺体が発見された。この女性(以下「Yさん」)は、数ヶ月前から行方がわからなくなっており、テレビ朝日の「TVのチカラ」でもたびたび取り上げられて行方を捜していたのだが、その遺体発見を見事に透視によって的中させたアメリカの超能力者がいた。

彼女の名前はゲイル・セントジョーン。過去30年間で、およそ1000件もの依頼を受け、透視の的中率は90%(※注)を誇る全米屈指の超能力者である。

【※注】 ちなみに日本で有名なジョー・マクモニーグルは80%、ナンシー・マイヤーは77%だとバラエティ番組内では「設定」されている。


ゲイルの透視の精度は恐るべきもので、アメリカでは「ラリー・キング・ライブ」(Larry King Live)や「サイキック・ディテクティブス」(Psychic Detectives)、『Psychic Witness』(サイキック・ウィットネス)などの人気番組でも取り上げられている。

今回の日本の事件の透視的中も、彼女の90%を誇る的中率を考えれば、当然の結果といえるだろう。

 


 

謎解き ゲイル・セントジョーンは、日本のテレビ番組には2006年の1月に、スイスの自称超能力者キム・アネ・ヤネスと共に初めて登場したアメリカの自称超能力者である。

残念ながらキムのほうは、お約束どおり紹介時の無駄に金のかかった実績自慢VTRとは違い、事件をまったく解決できずに消えていったが、ゲイルのほうは最初に担当した事件が、解決にゲイルの超能力はまったく役に立たなかったものの、結果として解決し、透視も見事に的中したとされたことから大々的に取り上げられることになった。

しかし、彼女の紹介時に「全米屈指の超能力者」「透視的中率90%」とも吹聴されるその透視能力は、本当にそんなに当たっていたのだろうか?

以下では、その謎を解くべく、今後も彼女が日本で事件を担当する際には必ず実績自慢VTRで紹介されるであろう、「透視が的中した」といわれる日本の事件について検証することにしたい。

 

事件の概要

まずは、ゲイルが担当した事件をご存知ない方のために、その概要をざっと紹介しておこう。

2005年12月14日、茨城県稲敷市で当時28歳だったYさんが家族と一緒に住んでいた自宅からいなくなった。この日の午前7時頃に母親が起こしに部屋に入ると、窓が開いた状態の中、財布、携帯、眼鏡、コンタクトレンズなどはそのままで、さらに靴下や、普段はいているスニーカーも残されたまま、姿を消していた。

驚いた母親は、息子(Yさんの兄)と共に周囲を捜しまわるが、失踪女性の部屋から5メートルほどのところにある畑に、Yさんのものと思われる裸足の足跡を発見した以外は痕跡を見つけられず、警察に連絡して捜索を依頼。失踪当日から、地元の消防団・住民など、のべ110人が付近を捜索したが、手がかりは得られなかった。

以上が、事件の概要である。

 

ゲイルの透視結果

Yさんの行方がわからなくなってから約一ヵ月後、家族は「TVのチカラ」へ捜索を依頼。番組では情報提供を呼びかけたところ、失踪当日の深夜(気温は−6度)、自宅近くの竹やぶの道で、パジャマ姿で立っているYさんを見かけたという目撃情報などは寄せられたが、居場所や生死に関する有力な情報は得られなかった。

そこで番組では、家族の依頼もあったことから超能力捜査を始動。担当の超能力者としてゲイル・セントジョーンが選ばれた。
ゲイルは2006年1月25日に来日すると、まず以下の透視を行った。

  • 「自宅から西のポイント、それが頭から離れない」
    「その方面に彼女が居るように感じる」
  • 「小川が見える。それに大きな岩も見える」
  • 「何度も何度も繰り返し、台地(斜面)という言葉が聞こえる」
  • 「上空から見ている感じなのだが、そこには道路が見える」
    「それは土の道路」
  • 「Yさんの生死については現時点で答えられない」


ゲイルが透視したキーワードこの時点での透視結果に出てきたキーワードをまとめると、実際に番組内で示された右の画像のとおりとなる。
番組では、これらのキーワードが全て揃っている場所にYさんがいるはずだとした。
そして、さらに場所を特定するため、ゲイルを現場へ向かわせて以下の透視結果も引き出した。

  • 「数字の『3』が頭から離れない」
  • 「Yさんは既に亡くなっている」


見当違いの場所でも全て存在していたさて、これでゲイルが最初に透視したキーワードは全部出揃うことになった。番組ではスタッフがゲイルと現場を歩いてまわり、次々とこれらのキーワードと一致する場所を見つけていく。
このあたりの、「自称超能力者の透視」→「透視通り全てが存在していた!」という展開は、超能力捜査番組のお約束である。

 

お墓から半径500メートル以内にいると透視そして、実際に現場を歩いて透視したゲイルは、自宅から西の方角にあるお墓から半径500メートル以内の森にYさんの遺体があると断言。
番組でも、すべての透視キーワードがその場所には揃っていることから、番組史上最大規模の大捜索を行うことを決定した。

 


なお、ゲイルが現場で透視を行い、「このエリアに間違いない」と断言したシーンはとても重要であるので、そのすぐあとのテロップでの強調シーンと合わせて紹介しておく。

遺体のある場所を断言した重要なシーン テロップでも強調


番組では、ゲイルの透視をうけて、総勢100人による大捜索を決行。ゲイルからは新たに、「三角の形をした森」を捜索するべきだとの透視も得ていたので、お墓から半径500メートルの範囲内にある該当の森を捜索。さらに最終的にはもっと範囲を広げ、付近の森で「三角の形」に該当する森をすべて捜索した。

しかし残念ながら、というか超能力捜査番組の鉄則どおり、手がかりは何一つ得られずに終わった。

 

【画像引用元】
「TVのチカラ」 テレビ朝日 (2006年2月6日放送分)
「TVのチカラ」 テレビ朝日 (2006年2月13日放送分)

 

言い訳と新たな透視

ここまで大規模な捜索を行っても該当エリアでは全く手がかりすら発見できなかったのだから、本来なら反省の弁と自らの透視能力に疑いの眼差しを向けるべきではないかと思うが、そこは自称超能力者、そんなことは全くしなかった。

ひとあし先に帰国していたゲイルは、スタッフから手がかりが得られなかったことを電話で伝えられると、次のように言った。

「Yさんは今でも心の苦しみを抱えたままでいるの」
「そして今は見つけて欲しくない、そう思っているのよ」


散々もっともらしい透視をしておいて、今さらこんな脱力の言い訳である。このような言い訳が通用するなら、この後でどんなに透視をしてハズそうが、「今は見つけてほしくないと思っている」の一言で済んでしまう 。無敵である。

しかし言い訳をして終わっただけなら、TVで「透視が的中した」と大々的に取り上げられたりはしない。実際には、今後の透視でハズしたときのための布石を用意したゲイルが、続けて新たな透視を行ったのだ。

「女性は家を中心に半径800メートル以内の所に必ずいる」
「今年の3月から5月の間にその場所を通った心の優しい人に発見される」


ここでは、なぜか、ちゃっかり300m範囲が広がっているところや、さりげなく中心地が変更になっている 点に注目しておいてほしい。

結果的に2006年の4月7日、自宅から約630メートル離れた場所でYさんの遺体(自殺だと考えられている)が発見され、ゲイルの透視では、「発見場所」、「発見時期」の他に、「小川」、「台地」、「数字の3」、「土の道路」、が当たりとされた。

 

現地での検証

番組では、Yさんの遺体発見をうけて、2006年4月17日に特番を放送。検証と称する こじつけで、上に挙げたいくつかのキーワードを的中したことにしていた。

ところが、である。確かに結果だけを見れば当たっているように思えるキーワードも、懐疑的に検証するとボロが出てくる。以下は、ゲイルと同じく、私も実際に現地に行って調べてきた検証結果である。

 

・透視キーワードその1
「家を中心に半径800メートル以内のところにいる」

これは、最初に透視で断言した場所と、実際に発見された場所を比較してみれば、そのトホホぶりがよくわかる。

最初は自宅から西の方角だと透視 


左右では縮尺が違っているので説明しておくと、右の画像ではゲイルが最初に透視した場所は画面の左上の範囲である。しかし、実際の発見場所は画面右下の×印で示してある箇所だ。見比べればわかるように、正反対の場所である。

二度目の透視で、なんとか範囲内に収まったものの、最初の透視とは正反対の場所で見つかった事実を考えると、本当に透視能力があるのか非常に怪しい。

しかもYさんは失踪時、マイナス6度という寒さの中、裸足にパジャマ姿で、さらに視力が非常に悪いにもかかわらず眼鏡やコンタクトはつけず、財布などの所持品も持たずに家を出ているのである。

ゲイルのように自殺説を採るなら、これらの条件の中、自宅からそう離れた場所まで移動することは難しいだろうと容易に想像がつく。そのため、彼女が透視した「自宅から半径800メートル以内」という一度ハズしたあとの範囲設定は、実は極めて妥当であり、当たる可能性は高いと思われるキーワードなのである。

しかし上でも示したように、ゲイルが現場に直接行って透視した最初の場所とは違うということを忘れてはならない。
私も現場に行って確認してきたが、最初にゲイルが歩いてまわった場所を見てから遺体発見現場へ向かうと、場所が全然違い完全にノーマークだったことがよくわかった。最初に断言した透視ポイントからは直線で約1kmは離れているだろうか。この限られた範囲の中、よくここまで正反対の離れた場所を透視したものだと感心してしまうほどである。


【画像引用元】
「TVのチカラ」 テレビ朝日 (2006年2月6日放送分)
「TVのチカラ」 テレビ朝日 (2006年4月17日放送分)

 

・透視キーワードその2
「今年の3月から5月の間にその場所を通った心の優しい人に発見される」

これは、実際の発見時期が2006年の4月7日だったことを考えれば結果として当たっていたことになる。
ただし、大捜索を行って手がかりを得られなかった時期が、まだ現場に雪の残る2月だったことを考えると、雪解けの季節である春に遺体が発見されやすくなるとヤマをはっていただけのようにも思える。

実際、遺体を発見したのは、雪解けした春に現場近くの山へ山菜取りに行った地元の住民だった。

 

・透視キーワードその3
「小川」

番組では、遺体が発見された場所が農業用水路だったことから、この用水路がゲイルの透視していた「小川」ではないかと指摘していた。

現場の農業用水路しかし、私が現場に行って確認したところ、この用水路はすぐ近くまでいかなければ存在が確認できないほどわかりづらく、地元の住民や消防署などでも聞いてみたが、この用水路を「小川」だと認識している人はいなかった。

もちろん、ゲイルが透視した際に、この用水路を小川だと認識したのだと言われればそれまでだが、「超能力捜査」のページでも触れているとおり、自称超能力者が「水」にまつわるキーワードを透視結果に入れることは(探せば大抵どこにでもあるので)常套手段であることや、番組で使われていた地図に描かれている川(実際は近くまで寄らないと確認できない細い用水路)の絵は、ゲイルの透視結果と少しでも合わせるため、相当誇張されている点は指摘しておきたい。

 

・透視キーワードその4
「台地(斜面)」

このキーワードは、発見現場の近くにあった山の裏側の斜面を指して、「的中」としていた。確かに「台地(斜面)」には見える。しかし、断崖絶壁にでもなっていない限り、大抵の山は、このキーワードに当てはまってしまう。私が現地に行ったときも、同じような形をした山を(それぞれ離れた場所で)複数確認することができた。

しかも、ゲイルが最初に透視した際、発見現場から約1kmほど離れた森が高台になっていたのだが、それを指して彼女は、「こちらから見ると、台地になっているように見える。ここでいいのではないか」などと言っていた。

要するに、どこにでも当てはめることができるキーワードなのである。

 

・透視キーワードその5
「数字の3が頭から離れない」

発見現場近くの電柱このキーワードが的中したとされたのは、発見現場近くの電柱に取り付けられていたプレートに刻まれた数字だった。実際に現場に行って確認してみたところ、確かに「3」を含んだ数字が刻まれていた。(右写真)
結果だけ見れば、確かに透視は当たっているように見える。しかし、ここで冷静に考えてみよう。
ゲイルは、「数字の『3』が頭から離れない」と言っていたが、「電柱に取り付けられているプレートに数字の『3』が刻まれている」とは言っていただろうか? 答えはNOである。そんな具体的なことは言ってない。ゲイルは単に数字をひとつ挙げただけだった。


この三叉路が最初は的中とされたこういった曖昧なキーワードを挙げておき、あとから判明した事実に合わせて当たりをこじつけるテクニックのことを、専門用語で「レトロフィッティング」という。
超常現象調査の専門家で、アメリカの超能力捜査の実態にも詳しいジョー・ニッケルは、このテクニックの代表例として、「水」「数字の7が見えます」という例を挙げている。この2つを挙げたのは、どちらも曖昧すぎて、あとから無数のものにこじつけることが可能だからだ。(数でいえば、距離、人数、車のナンバー、電話番号、日付、などいろいろある)

実際、最後はプレートに刻まれていた数字が“的中”とされたが、最初は発見現場からずっと離れた場所にあった「三叉路」(三又にわかれた道)が“的中”とされていた。(上写真)
おそらく、遺体が発見された日付が「4月7日」ではなく、3月や3のつく日だったら、当たりとして、こじつけられたであろうことは想像に難くない。

 

・透視キーワードその6
「土の道」

実際は石が敷き詰められた道最後は、発見現場の脇にあったことから当たりとされた「土の道」である。番組では的中したことにしていたが、実際に私が現場に行って確認したところ、この道は表面が土ではなく、石が敷き詰められていた。(その隙間からは草が生えている)

またゲイルは、このキーワードを透視した際、
「上空から見ている感じなんだけど、そこには道路が見える」「それは土の道路なの」と言っていた。
しかし現場で私が確認したところ、この道のすぐ隣には民家があった。

もし本当にゲイルが上空からのビジョンでこの道を透視したのであれば、そのすぐ隣にある民家についても言及していなければおかしい。ところが彼女は、民家については何も言及していない。(もし触れていれば重要な手がかりになったにもかかわらず)

本当にゲイルは、この道を透視していたのだろうか? 大いに疑問である。

 

曖昧さが重要

さて、最後にゲイル・セントジョーンの透視についてまとめておこう。ずばり、彼女の透視の特徴をあげるとすれば、それは「曖昧」である。

ゲイルがあげたキーワードの数々は、その曖昧さ故に現場の複数の箇所で、こじつけることができていた。キーワードの中に、現場のような田舎なら大抵どこにでも当てはまりそうなものを含ませておいたのも幸いした。
実際のところ、「川、 岩、台地、土の道路」といったキーワードがまったく当てはまらない田舎を探すほうが難しい。

曖昧なキーワードをあげておけば、あとは番組のスタッフが勝手にこじつけてくれる。しかも「西」や、「岩」いつのまにか無かったことにされた「三角の森」などの明確にハズれた透視結果は、当たりを大々的に強調されると記憶に残りにくい。
番組での検証も大変に甘いので、大抵のキーワードが当たっていたかのように思えてしまう。

しかし最初に現場まで出向いて透視をし、断言までして大ハズレに終わった事実や、このページで検証したような諸々の疑問点、曖昧さによって当たりがこじつけやすくなっている仕組みなどを考えれば、「透視的中率90%以上」というのは、いくらなんでも誇張に過ぎると言えるのではないかと思う。

※ なお、ゲイル・セントジョーンが当ページで紹介した茨城の事件のあとに担当した、「群馬48歳主婦失踪事件」では、この茨城の事件と同じく、その透視能力は全く事件解決の役に立たずに終わっていることを付記しておく。


【参考資料】