夢で透視するサイキック・ドリーマー「クリス・ロビンソン」

伝説

イギリスに「サイキック・ドリーマー」というコードネームを持つ超能力者がいる。彼の名はクリス・ロビンソン

クリス・ロビンソン

クリス・ロビンソン。「TVのチカラ」(テレビ朝日、2006年4月3日放送)より

クリスの透視方法は少し変わっていて、彼が夢で見たことをノートに書きとめ、その情報をもとに解釈していくという変わった方法を使う。その驚異の的中率ゆえに、彼の夢はロンドン警視庁をはじめ、イギリス中の警察で犯罪捜査に利用されているという。

クリスの超能力を調査したアリゾナ大学心理学教授のゲイリー・E・シュワルツも次のように語っている。その実力は折り紙付きだ。

私が検証したすべての超能力者の能力をはるかに超えていました。彼ら全員の能力を足しても、クリス一人に、かなわないのです。

「TVのチカラ」(テレビ朝日、2006年4月3日放送)より

謎解き

クリス・ロビンソンは、日本ではテレビ朝日の「TVのチカラ」に出演して透視捜査を行うことが多かった超能力者である。

同番組で紹介されるときは、いかにもすごい超能力者であるかのように紹介されていたものの、実際に調べてみると、その実力は非常にトホホなものであることがわかる。クリスの超能力については、その真偽を確かめるべく、イギリスで複数の実験が行われている。

リチャード・ワイズマンの実験

イギリスの心理学者リチャード・ワイズマンは、同国のグラナダ・プロダクションの依頼を受けて、クリスを始めとする3人の有名な超能力者の実験を行った。

実験は大事件に関わった3つの品物を3人の超能力者に提示し、どのくらい正確に透視できるか確かめるというもの。比較のための対照群として一般の学生も実験に参加してもらった。

はたしてクリスを含めた超能力者たちの実力はどんなものだったのか?

気になるその結果は……残念なものだった。彼らは、一般の学生と比較しても目立った成績をあげられなかったのである。(一般の学生より的中率は下だった)

以下はワイズマンのコメントである。

超能力者は、自分たちが言ったことを正確に覚えておらず、正解に近いことを言ったはずだと思い込む傾向がありました。とてもうまくいったという印象を持っていたのかもしれません。

「アーサー・C・クラークのミステリーワールド」(ヒストリーチャンネル)

スーザン・ブラックモアの実験

続いては、イギリスの研究者スーザン・ブラックモアによる実験。

この実験は1994年12月から1995年1月にかけて行われた。 実験内容は、12個の密閉した箱の中に12個のターゲットを入れ、その中身をクリスが透視して、ターゲットの名前が書かれたリストの中からマッチングさせる、というもの。

実験に使われたターゲットは以下の12個。(※スマホなどで閲覧の場合、以下の表は画面を横にすると、あまりはみ出さず読みやすい)

日付け 透視するもの クリスの透視結果
 12月9日  鉢植え ワインボトル
 12月12日 テディベア 穀物を入れる袋
 12月16日 ワインボトル 電球
 12月19日 石炭用の火箸 石炭用の火箸
 12月23日 穀物を入れる袋 山高帽
 12月27日 じょうろ じょうろ
 1月3日 山高帽 骨相学用の頭蓋骨
 1月6日 ブーツ テディベア
 1月9日 トイレットペーパー ブーツ
 1月15日 骨相学用の頭蓋骨 鉢植え
 1月16日 電球 ブーツ
 1月21日 聖書 トイレットペーパー

気になる結果は、12個のうち、マッチングしたのはたったの2つだけ(ブーツはクリスが2回選んだ)。超能力を示す結果は全く得られなかった。

ちなみにこの実験の終わりには、クリスの手書きによる87ページ分もある夢で見たことを記録したコピーがブラックモアのもとへ送られてきたという。いかに超能力者が事前情報を多くし、当たる確率を増やそうとしているかがわかるエピソードである。

襲撃事件を予言した?

続いては、クリスの予言について。IRA(アイルランド共和国軍)が爆弾騒ぎを起こしていた1990年に、クリスは2匹の犬が登場するある夢を見たという。そしてその夢を解釈した結果、彼は首相官邸襲撃事件を予言することになり、結果、見事に的中したとされている。

しかもこの予言が的中したために、当時メージャー首相の私設補佐官だったグラハム・ブライト卿はクリスの能力を信じることになったという。

本当だろうか? 実は、この「予言」というのが、かなり怪しい。以下はブライト卿本人のコメントである。

「(クリスが)爆発の“あとに”電話してきて『朝4時頃に電話をしたのだが、誰もつかまえられなかった』と言っていた。もっとも、いつだって彼は『電話をしても誰もつかまえることができなかった』という調子だったがね」

『ボーダーランド』(1996年8月号)より

つまりクリスは事件について前もって予言していたのではなく、事件が起きたあとになって電話をし、事件の警告をしていたのである。このようなやり方でいいのなら、誰でもクリスと同じ予言をすることが可能である。

外したら引退宣言

続いては、クリスが出演した海外のテレビ番組の内容を紹介したい。ナショナルジオグラフィックチャンネルの「都市伝説~超常現象を解明せよ!」という番組である。

この番組で彼は、アメリカの同時多発テロを予知していたと主張。しかし事前にアメリカ大使館へ警告の手紙を送ったものの無視されたという。

この話は本当なのだろうか。番組が調べてみると話は違ったという。

ナレーション  「その手紙の存在を誰も認めていません」

それでもクリスの主張は続く。「“夢探偵”というあだ名は99年にロンドン警視庁に協力した際につけられた」「ロンドン警視庁をはじめ、イギリス中の警察が自分の夢を犯罪捜査に利用している」。

ナレーション  「ロンドン警視庁は否定しています」

これでも彼はめげない。この後は番組側が選んだある事件について透視を行うことになった。事件の詳細が書かれた新聞記事は封筒に入れられている。クリスはその封筒を透視。

「野生動物(悪事を働く人の象徴)が見える。テロリストが人を殺す」
「大きな家。錆びた鋼鉄とコンクリートの階段」
「たくさんのカップ(死者の象徴)」
「私は無灯火で車を走らせている」

さらに彼は、「大ハズレなら私のパワーが失せたという意味なので引退しなくては」と付け加える。そして事件について書かれた記事が入っている封筒を開ける。

すると……中を見たとたん、彼の顔から血の気が引く。

中から出てきたのは1992年2月に起きた「モノポリー殺人事件」の記事。これは2人の若者がモノポリー(ボードゲーム)でどのコマを選ぶかで口論になり、1人がもう1人の心臓をアーチェリーの矢で射抜いて射殺した、という事件である。

クリスはこの事件において非常に重要なキーワードだった「モノポリー」「アーチェリー」の2つのキーワードを当てられなかった。

さらに事件とは全く関係ない、「テロリスト」「コンクリートの階段」、「無灯火で走る車」などのキーワードを挙げていた。つまり透視は完全に失敗していた。

けれども、もちろん彼は引退しなかった。大外れがよくある彼にとっては、そのたびに引退していたのでは身が持たなかったのかもしれない。

クリスの超能力とは

最後にまとめておこう。クリスの“超能力”とは、夢に関して書き留めたという膨大な数のキーワードの中から、都合のいいものを選び出し、好き勝手に削ったり、分解したりしながら当たりをこじつける、というものである。

実際に「TVのチカラ」で行っていた例は次のとおり。高さ3~4m、幅は約2mの石造りのアーチ(橋) →「石造り」と「アーチ」は別々のキーワード → 石造りというのはコンクリートのことかもしれない → アーチ(橋)というのは虹のこと(最終的にこじつけたのは虹の絵) → 石造りというのは家の塀(最初に言っていた寸法は完全無視)

もう、こじつけられれば何でもありという感じだ。しかしこれが、ときにはイギリス最高の超能力者とも呼ばれる、クリス・ロビンソンの“超能力”なのである。

【参考資料】

  • 「TVのチカラ」 (テレビ朝日、2006年4月3日放送)
  • 「都市伝説~超常現象を解明せよ!~サイキック捜査」 (ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル)
  • 「アーサー・C・クラークのミステリーワールド」 (ヒストリーチャンネル)
  • 『ボーダーランド』 (1996年8月号)
  • Susan Blackmore「What’s in the box? An ESP test with Chris Robinson」
    (http://www.susanblackmore.co.uk/Articles/Robinson.htm)
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